1945年、全世界規模で行われた人類間の戦争。
それは幻獣という名の人類の天敵の出現によって突如幕を
閉じた。
それから何回かの惨敗を経て、1999年時点で人類の居
住地域は南北アメリカの一部と日本を残すのみとなってい
た。
この物語は日本の防衛拠点、上陸を防ぐ最後の防衛線とし
てつくられた、学籍のまま戦うことを余儀なくされた者た
ち、その末席に名を連ねることになったぽややんな者の物
語である。

3月4日


僕、速水厚志。徴兵で熊本にやってきたんだ。
折角だからこの機会に日記でもつけてみようかなと思う。
今日はオリエンテーリングがあった。本田先生にお前達は
侍だっていわれる。侍かあ。
芝村舞さんに会う。なんかすごい人だいろんな意味で。な
んか芝村って姓だけの意味じゃないみたいだけど一体何な
んだろう。みんなは知ってるみたいなんだけど?
そういえば猫がいた。でっけー猫。かわいいけど。
でもでっけー。
そういえば芝村さんは猫が好きみたいだ。触れないみたい
だけどがんばって触ろうとしてみたけどやっぱり触れない。
ちょっといばりんぼ(?)の彼女だけど、その時はなんか
かわいかった。


3月6日


今日は初めての先頭訓練だ。きんちょーした。
おっかなびっくり操縦してたらミサイルが大外れ。的用の
バルーンに1体にしかあたらなかった。本田先生にいくら
予算が少なくてバルーンを買うカネがないとはいえ、こん
なヒヨッコどもに心配されるとは心外だ、と言われたりす
る。イヤミなんだろうか。そうなんだろうなー。
うーん。次、頑張ろう。


3月7日


今日は滝川と一緒に市内めぐりだ。彼女がいたら男同士で
日曜にふらふら、なんてしないだろうなあ、ってなことを
話しながら楽しく散策した。
滝川の計画ってなんだろう?


3月8日


今日は戦闘訓練2日目。今度は僕のミサイルがたくさんあ
たった。舞さんにコツを聞いたのがよかったのか、ブータ
にサンドイッチをあげたのがよかったのか、とてもうまく
いった。よっしゃー


3月9日


・・・なんか舞さんはみんなに嫌われてるみたいだ。なん
でだろう?僕が舞さんに話し掛けているのをみて注意して
くれたりする。かかわるな、って。
やっぱりあの話し方が原因何だろうなあ。


3月11日


今日、舞さんにもう少しまわりを注意したほうがいい、と
いってみたら、逆に諭されてしまった。きちんと「自分」を
もっているんだなあ、と思った。その中でいわれた言葉に
「相手を信じることは少し無理をさせること」というのが
あった。そのとおりだと思った。


3月12日


壬生屋さんに「邪悪な目をしている」とかいわれた。
世界を敵にまわそうとしている目だと。
えー??舞さんの影響なんだろうか。確かに彼女は本気で
世界を敵に回して戦うことも(必要なら)やりそうだけど。
そして今日は操縦テストの日。
もちろん全員で合格!やったあ!そして僕は十翼長になった。
先生達は複雑な顔をしていた。


3月13日


今日はショックな日だった。
元々6ヶ月の予定の訓練期間が1ヶ月になってしまった。
その後は即実戦だそうだ。それほど選局は逼迫しているのか。
まあ僕なんかがパイロットになろうってんだから、そうだよ
な。それと、今日は滝川にヒトとの付き合い方について教え
てもらった。なんでも僕をみているとなんかほっとけないら
しい。いいヤツだ。
これ以上滝川に心配させちゃいけない、と思っていろんな人
としゃべってみたりした。


3月14日


今日は日曜日。
校門の前でばったり壬生屋さんとあって、一緒に訓練した。
こわいひとかとおもってたけど、ちょっとカワイイと思った。
朝まで訓練していたら、朝日に向かうたくさんの猫達をみた。
なんとなく、涙が出た。


3月15日


善行司令と若宮さんが着任。どっちもカタそうなひとだ。
3日ですべてA評価にしろ、とか言っていた。と、いうわけ
で今日から特訓だ。うげえ。とてもつかれた。


3月16日


なんか頑張ったら一日でクリアしてしまった。僕ってすごい
のかなあ?
今日は加藤さんとののみちゃんと瀬戸口が入ってきた。ここ
もずいぶんにぎやかになってきた。ところでののみちゃんは
いったいいくつなんだろう?ちょっと高校生には見えないん
だけどなあ。でも多分本人にいうと怒るとおもうのでいわな
いでおこう。瀬戸口師匠は彼女こそ希望、とかいってたけど
なんなのかなあ。もしかして師匠ってロ(以下検閲)
そうそう、同志キタガワスキーと一緒に彼女をつくろう作戦
を決行することになった。瀬戸口師匠に教えを乞うことにな
るだろう。
そうだ!今日はびっくりしたことがもうひとつ。坂上先生って
双子だったんだ。でもなんで坂上先生はこんなことを僕に話
すのだろう。
そして突然の演習。今日はいろいろなことがたくさんあった。


3月17日


最近仲のいい壬生屋さんにさそわれて図書館で勉強。
なれない恋愛話を自分でもちかけて自爆する壬生屋さん。
そんな彼女をかわいいと思った。けど告白はやめておいた。
今のままでいい気がした。


3月18日


え?え〜??本田先生と壬生屋さんが突然どっちが好きなのか?
と迫ってきた。びっくり。恋愛関係にはなってなかったとおも
っていたのは僕だけだったのか・・・?朴念仁というのはこう
いうことをいうのかなあ。とりあえず逃げてしまった。
そしたらののみちゃんに「めー」といわれてしまった。
そしていつも明るいののみちゃんは、とてもあかるく自分の生
い立ちを話してくれた。それがどういうことか彼女はわかって
いるのだろうか・・・。


3月19日


今日は午後の授業をさぼって訓練。ちょっと成果がでていなかっ
たから・・・
午後10時すぎ、味のれんで食事をおえてあとひと頑張り、と
いう感じで学校に戻ってみると、それから整備部隊の搬入手伝
いをすることになった。こんな時間から〜とも思ったが、シミュ
レータでない、これから自分の載ることになる機体が運びこま
れていくのを見ているとどきどきした。


3月21日


今日は日曜日。朝から整備の勉強。やっぱ自分で修理したいし
ね。その後、舞さんと話しをした。芝村という存在はなにかに
ついて。舞さんは、それは種族保存の本能による一時的進化形
態だという。それは役割が終われば・・・ということなのだろ
うか。それはさびしいと思った。
そういえば後々好きかってするため、という理由で猛訓練する
約束をさせられた。どうしよう。


3月22日


今日は朝、委員長から2、3日後には出撃になるとの連絡があっ
た。ついに実戦か。ちょっとこわいけど腕が鳴る。そのため今
日は一日自由時間となった。機体の修理とかを行った。
出撃までにきっちり調整を行っておかないと。


3月23日


ついに出撃。戦果はミノ助一体とザコ2匹。
今回随分味方戦力が多かったので楽だった(なまいきー)
ともあれ初陣大勝利!!


3月24日


ののみちゃんに告白されてしまった。でも・・・断ってしまった。
ごめんよ。


3月25日


作戦会議(?)をひらいてもらった。
それでみんなで校舎の修理。つかれたーあ。


3月26日


2回目の戦い。バリバリに調整していったはずだったのに結構
やられてしまった。次はそんなことないようにするぞ!


3月27日


昨日の今日でまた出撃。どこまで機体がなおっているかなあ。
またハデにやられてしまった。修理まにあうかなあ。


3月30日


今日は阿蘇山で戦闘。すごい数の敵だったが、結構修理が間に
合ってなんとかなった。けどこんどはまたハデにぶっこわれた
感じ。ヤバイ。


3月31日


・・・やっぱし廃棄処分になってしまった。
折角いろいろパワーアップしていたのにぃ。
くぅ。
と、思ったらテスト&出撃。おいおいおいおい。
阿蘇山の2戦め。けどなんかへんに敵がよわっちい。
おかしくないか?


4月1日


滝川スキーがいつのまにやら千翼長に。
なんか僕はここのところ機体の修理しかしていない気がする。
最近来須が向こうから話し掛けてくれるようになった。お前
は友達だともいってくれた。なんかうれしい。
でも元が無口なのであまり会話にはならないなあ。でもおっ
かないヤツだと思っていたから、実はネコとか子供とか好き
なイイやつだと分かってよかった。


4月3日


今日、みんなからの手作り勲章をもらった。
とてもうれしかった。
戦闘からかえったら整備班の女の子達に取り囲まれてしまった。
は、原さんまで。なんでも僕が勲章をもらえたことを喜んで
くれているらしい。
え?手作り勲章のことなのかなあ。これって整備班の人たち
からなのかな?


4月4日


今日は日曜日
だけど今日も戦闘なのであった。
初めてスキュラとであう。なんて巨大なんだ。
なんとか撃退するも、友軍の数機が犠牲となった。
今回、前の戦闘でつかってしまっていた交換用弾装を装備し忘
れていたのがくやまれる。あれでもたつかなければ一人くらい
救えたかもしれない。そんなことを考えたりした。


4月5日


こないだ直したばっかだってのに、また校舎が雨漏りしてるら
しい。あー、もうやめやめ。そのうちまとめて直せばいいよね。
今日は給料がはいったので、前々からねらっていたエアミニマ
ムを買いにいった。虎の子のお金だったのに・・・どうして税
金が15%もつくんだあ!!というわけで買えませんでした。
明日誰かにお金を借りて買いに行こう。


4月6日


もう何回目かわからない戦闘。
なんか段々敵が強力になってきている気がする。スキュラの大
軍とか来たらどうすればいいんだろう。
今日、原さんが士魂号の制御部分というのを見せてくれた。
・・・うすうすわかってはいたけれど、改めてみせられると
ショッキングだった。


4月7日


来須がしゃべった!


4月8日


生徒会連合特別徽章とかいうのをもらった。なんだろ?
今日は久しぶりに体力作りをした。


4月11日


タキガワスキー、いつのまに万翼長に・・・君は遠いところに
いってしまったのだね。
幻獣がものすごい数を前線に投入してきたらしい。こないだま
で少し押し気味だって聞いていたのに、今では選局表示板が真
っ赤。
今日が、最後の日曜日だったかもしれない。


4月12日


黄金剣突撃勲章とかいうのを獲得した。
なんでも通産で75体以上倒したものに送られるらしい。
けど、スキュラでもヒトウバンでも1体ってのは無理あるよな
あ。舞さんにそう話すと、彼らは事前に決められた慣例により
それを発行することが仕事であるし、我々も貰うことが仕事の
一つである、別に害にならないのだから貰っておけばよい、と
言っていた。まあそうなんだけどね。
でも僕が任官してからまだ一月もたってないよ。それで取れる
んだからみんなもってるんだよね、多分。


4月13日


舞さんが戦死した。
舞さんが戦死した。
舞さんが、戦死した。
僕の、せいだ。
ぼくが機体を捨てて逃げるときに舞さんは直ぐ後に行く、って
言っていた。後から考えるとあれは今すぐには出られないとい
うことだったのではなかったのか。それはすこしでも脱出が遅
れるとぼくまで巻き込んでしまうとわかったからではないのか。
システムに繋がったままのヘッドセットから聞こえた舞さんの
声がかすれていたのは、おんぼろの通信機のせいなのか、
それとも。


4月14日


森さんと刈谷が3号機パイロットに異動になった。つまり僕は
突然、無職に。まあともあれすぐに戦場に立てるほど僕は人間
ができていない。
ブータにお前と同じになっちゃったな、と話し掛けてみたりす
る。するとブータはにゃーとないたりする。
思いのほか舞さんの戦死が応えているみたいだ。こんなことで
は舞さんに笑われてしまう、いや説教されてしまう、かな。
そこでこれまで貯めこんだ発言力を使って、1号機パイロット
への異動と、士翼号の配備を依頼した。ほぼ限界まで整備した
複座型での戦闘による敗北で、機体の性能限界を感じていたか
らだ。
これで、かたきをうつ。


4月15日


早速実戦だ。まだ調整が十分でないので
動きがぎこちない。とりあえず勝った。


4月17日


刈谷と・・・来須が死んだ。
来須は、僕のすぐそばで死んだ。僕は・・・
今日の葬儀には来須の遺体はなかった。
そのかわりに傷ついた獅子章とかいう勲章をもらった。こんな
もの!と思ったが、唯一の遺品になるはずのそれを話しで聞い
たことしかないはずの僕に持っていてくれ、という親御さん達
の心を踏みにじることもできなかった。


4月18日


本田先生がぽつりといった。空席が目立ちはじめたな、と。
また、刈谷は今日は休みか、とも。
誰も「刈谷は死にました」とは言わなかった。
その後先生は言っていた。ウジウジしていてもしかたない、
一体でも多くの幻獣を倒すのが弔いだ。そうしようと思った。
せめて(慣れたくないけれども)この悲しみに慣れるまで。


4月20日


なんだったか2つ勲章をもらった。
あと廊下で映(あきら)とかいう子からクッキーをもらった。
?なんだったのだろう。
今日は生活環境があまりにも劣悪になってしまったのでみんな
の調子が悪い。萌ちゃんを手伝おう!って言ったらみんな了解
してくれたのに手伝ってくれない。やっぱり自分から進んでや
らないとだめか。というわけで今日は掃除に終始した。
こんなことやってていいのか?


4月22日


今日、2組に遊びに行ったら、小杉さんと壬生屋さんが走って
きて「どっちが好きなの!?」といわれた。僕は小杉さん、と
言うこともできなかったので逃げたら小杉さんにかなり嫌われ
たらしい。ショックだ。


4月23日


ここのところ毎日出撃だ。戦況はどうなっているんだ。


4月24日


授業をサボって機体の調整。この間隔だと授業に出ていられな
いよ。整備棟に入ると、武士魂号達のうなりごえが聞こえた。
うなり声?絶望?悲しみ?なぜ?
滝川におまえは恐い、といわれた。戦闘中にうすわらいを浮か
べているように見える、というのだ。・・・僕は、そうなのか?


4月26日


廊下で女子校の子に声をかけられた。映ちゃんが死んだらしい。
僕等は知り合うべきではなかったのだろうか。ブータと小杉さ
んがあいさつしていた。なんだろう、不思議な感じがした。


4月28日


森さん〜やめてくれー。ヒトウバン倒すのにバズーカ使ってし
かも捨てていくのやめてくれー。なんで2戦闘で4本バズーカ
がへっちゃうの??というわけで壬生屋さんに3号機のパイロ
ットになってもらえるように陳情しました。


4月30日


ついに!ついにN.E.Pを陳情できた。秘密兵器らしく、な
かなか了解をとりつけられなかったんだ。いったいどんな兵器
なんだろうわくわくする・・・はっ!滝川に恐いっていわれた
のってこういうことなんだろうか。・・・ちょっと落ち込む。

今日のテスト、そんなにできが悪かったつもりないのに下から
4番目。なぜだ・・・
今日、善行委員長がテスト後皆さんがんばりましょう!って言
ったんだけど、なんかみんなやる気がないのか反応が悪い。そ
したらすかさずもう一回、めずらしく悲しそうにちょっと怒っ
た感じでがんばりましょう!って。なんかおかしかったけど、
場は暗い雰囲気になってしまった。あんまり人気無いみたいね。
委員長。
そうそう。さっきまわってきた日報によると、人類側が押して
いるらしい。ウチの部隊の期待度もずいぶん上がってきている
みたい。やるぞー!


5月1日


N.E.Pが届いた!早い!授業前に早速マウントしてみる。
すっげー!つよそー!はやくつかいてぇー!!
・・・はっ!・・・やばいやばい。
ということで今日もあった戦闘で使ってみた。何だこの威力!?
でも・・・バズーカとあんましかわんないかなと、思ったら攻
撃メニューの中にnepをつかう、というコマンドが増えてい
る。なにか特殊なことが?
そうそう、人類側圧倒的優勢だって。


5月8日


N.E.Pを「使って」みた。
これがあれば負けることは無い、と思った。いままでなぜ実線
に投入されていなかったのか不思議なくらいだ。ちょっと使う
のに、かなり疲れたけど。・・・なぜ疲れるんだ?
滝川にファンだっていわれた。僕にどうしろと?
たのむから赤くならないでくれ。


そしてこんな感じでその年の自然休戦期に入った。
ここ数ヶ月で当初の予想を裏切り、日本は奇跡的な戦線の押し
返しを達成した。九州からの撤退を決めていた大本営は、熊本
を足掛かりに体制を立て直す決定をし、そして人類の反撃は始
まることとなった。
自然休戦期の終わる9月。再び彼らは今度は救国の戦士として、
精鋭として前線に送られることになる。そこが日本ではないこ
とは、彼らにとって喜ぶべきことであろう。