HMX-2x型基本フレームのHMX-1x型との最大の相違点は、アクチェータが電磁モーター型から光ファイバ型に変更された事である(編注:元来、単に『アクチェータ』と呼ばれるものは、通電によって動作を行うものをさして言う。光ファイバ型アクチェータは『光アクチェータ』と呼ばれるものの一種である)。 光ファイバー型アクチェータは、以下のような特徴を有している。
これだけの利点を有しながら、HMX-2x型基本フレームはHMシリーズには採用されず、製品化される事はなかった。これは完全な新規技術である光ファイバ型アクチェータを基本フレームに採用した場合、競合他社製品に対してコスト面で不利になるという点と、各小売りチャネルからの整備面、部品供給面での不安が多く寄せられたためである。 後に発表されたHM-2x/HM-3x型基本フレームもHM-1x基本フレームとの構造的な相違点は少なく、アクチェータ部品の性能向上などを行っただけのブラッシュアップに留まっている。 同様の新規技術であり、小売チャネル等から同じ様な不安がよせられたにも関わらず、上層部が最後までHMXへの搭載にこだわり続けたトカマク型超伝導バッテリとは対極的な扱いがなされたのは、来栖川重工内での開発部門の力関係が如実にあらわれている。 光ファイバ型アクチェータを開発したのは「開発八係」(現在の来栖川HMテック)である。開発八係は、クラッシュプログラムであったHMX計画に於ける各部門間の連絡や意思の疎通を計ることを目的として、特に設けられた係で、各部門からの出向者によって構成されていた。だが、開発八係にはHMX計画の当初から、各部門の技術者たちが集まり、次第に、お互いの専門知識と経験を共有する場として利用されるようになっていった。当初の設置目的とは、大きく異なった方向で、開発八係は大きく発展しはじめたのである。 設置から一年もしない間に、開発八係は、独自にMX-10用の新素材部品の設計と試作を開始するなど、活発な活動を行いはじめている。こうした事から、計画関係者から一目置かれる存在となった開発八係だが、その後、HMX用のパーツや素材の開発の一部を担うなど、事実上の独立開発セクションとしての地位を確立した。 来栖川グループ内のHM開発専門の子会社『来栖川HMテック』として改編されるまで、正式な部署としては認められることの無かった開発八係だが、HMX-1xpの発案や、実際の設計と開発を担当し、またHD-CNSの初期能動学習を受け持つなど、HMX開発計画に少なからぬ貢献をし、後の延長HMX計画では、HMX-26開発で中心的な役割を果たすまでに至っている。 一方のトカマク型超伝導バッテリの開発を行ったのが、来栖川重工の発足当初からの主力製品であった大型発電機/電動発動機の研究と開発を担ってきた発動部である。 来栖川重工内にある会社組織とも言える発動部は、開発部とは別に独自の開発部門を持ち、社内で強い発言力を持っている。発動部は、HMX開発計画の、その当初からトカマク型超伝導バッテリの使用を提唱し、超伝導バッテリの研究・開発に相当の予算と時間、人材を費やした。これらで費やされた金額は、当時の電動部の年間純利益に匹敵しているとも言われている。しかし、来栖川重工社内にあって独立採算制をとっている発動部内で、どのような動きがあったのかを知ることは難しい。 数多の失敗と無数の試行錯誤から誕生したトカマク型超伝導バッテリは、一般民生用HMシリーズでの採用こそならなかったが、ライバルと目されてきたECSキャパシタとの住み分けに成功し、現在は中規模以上の貯電施設などに採用されている。 HMX-25:リーラ「間違って、彼女に書類渡しちゃったんですよ。まさか、あれが試作体だなんて思いもしませんでした。」
それまで搭載されていた固体半導体型HD-CNSを抜本的に改良した回折光シャッター型光回路CNS(R&Dではこれを光ホロダイナミックCNSと呼称している)を搭載。完成時期はHMX-12/13のロールアウト直後だが、研究所施設内での基本能力試験が行われ、その後、社内で非公式な形での各種テストが行われた。 |