05/30

お題目:コミケ当落とか…
 ここ二週間ほど、怒涛のアクセスが連なった後、突如元に戻ったようで………一体何があったんだろ(汗)。もしかして、またプロバイダの問題?


 さて、まずはコミケの当落でありますが、無事当選いたしました。
 配置は、一日目、東2ホールのP−07aであります。今回は島角&出入口近辺でちょっとドキドキもんです。何がドキドキかと言ったら、こんな配置で新刊出せなかったらどうしましょ、とか(笑)。
 新刊は、色々画策するところがあるのですが、何になるかは未定です。材料だけは山積みなんですけどね〜。どんな本になるかは未定ですが、『ゲーム系のごった煮本』になることは間違いないと思います。亜生命戦争異聞とかを、これに一緒に収録してしまうかは、夏コミまでにどれだけの量を書けるかに関わってきてますので、今んところ未定です。あとは気合いと時間と金銭的余裕だけ(材料以外全部?)!。
 あとは、gShotも持って行く予定です。ただ、ゲーム系同人誌のブースで、Macintosh用の、しかも18禁でないゲームを出すのは正気の沙汰でない〜?(笑)。委託先募集中(^^;。残り少ないBRAVO!とPOLTERNも持って行きまする。


 んでもって、gShotの話題なのですが、先日、トップページでも少し書いたようにGeneric Media社のCEO、元AppleのQuickTimeプロダクトチーム(Newtonもこの人絡みなのかな?)、Peter Hoddie氏にgShotを手渡しました。実際に手渡したのは、私ではなく、世界征服.comの首領、MARo殿(ほぼ同名のエロ漫画家さんとは無関係)なのですが…詳しい顛末は、ここにあります。
 リンク先の記事にもありますが、恐ろしいことに、氏の無料配布していたCD-ROMに入っていたソフトの名前が『gMovie Maker&Player』(汗)偶然とはいえ、恐ろしい(笑)
 しかし、gShot、英語版作って、あっちで展開してみようかなぁー………(とか言いつつ、現在次回作を制作中。)


 「えためろ」の四回目。パーティー内容は綾波・病弱・姉御(分かるでしょ(^^;)。病弱狙いで行くも、帰還失敗&全滅(笑)。えーい、やり直すにもこのゲーム長すぎるわい。
 前回の反省を踏まえ、狙い目以外はメインシナリオ×2を成功させ、サブシナリオは三つ目を失敗させる作戦を取るも、爆沈(業泣)。こうなってくると撃墜条件が分から〜ん!。メインシナリオを成功させてしまうと、いくらサブで失敗しても撃墜条件のコンフリクトが起こるのだろうか……セーブしたところからやり直すかなぁ?(でも長い)(追記事項:ゲーム終了後、何故か病弱の二つ目のメインシナリオが失敗扱いになっているのを発見。バグか?)
 こう言うところから考えると、ToHeartに代表されるようなビジュアルノベルが受けるようになった原因も分からないでもないなぁ。ある意味のお手軽感があるし、読みたけりゃ読める。飛ばしたければ飛ばせるという選択もできるわけで………むぬう。ここのところに『複数回楽しめるゲーム』のひとつのキーポイントがあるような気がする。


 そんなわけで、まずはコミケに当選しました。今回も新刊(もしくは新作ゲーム)用意してお待ちする予定であります。三ヶ月近く先の事ではありますが、乞うご期待。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/28

お題目:亜生命戦争異聞#6
 委員会が、開拓団の五年後の出発を公にしたのは、古池らがダンツにその事を聞いてから二ヵ月後の事だった。
 その発表は定期会見の中でごく控え目に、スポークスマンが委員会の議決として発表しただけだったにも関わらず、それは世界に大きな反響を呼んだ。
 特に若年層からの反応は委員会の予想を大きく越え、開拓団への参加を希望する人々からの電話・電子メール、委員会事務所への直接の来訪などによって、委員会の機能は数週間に渡って停滞した程である。
 しかし、古池はと言えば、楊(ヤン)の厳重な監視のもと、惑星アヴァロンのデータの検証と、アヴァロンで使用されるマイクロマシンの概念設計に没頭『させられていた』。
 もちろん、既に四件の報告書の提出を遅らせている古池には、楊(ヤン)に反論する余地などない。
 日がな一日、研究室に篭り、周囲に書類と光磁気ディスクの山を築きながら、ノロノロと設計を煮詰めていく。
 無論、概念段階とは言え、設計や仕様が日程通りに仕上がるわけがない。日一日とつり上がっていく楊(ヤン)の目尻。
 楊の雷を恐れつつも、古池の報告書は着実に仕上がっていった。

 朝の出勤ラッシュより少し後、研究室の扉がゆっくりと開く。
「おはようございます……あら、先生?」
 いつもより早めに研究室に出勤していた古池を見て、楊(ヤン)は驚いた。
 古池の研究室は、アヴァロン委員会の技術研究担当の一人である古池と、楊をはじめとした助手数人だけ。独立した研究室としては、委員会の中でも、最も小さいもののひとつである。
 その研究室の中でも、毎日の出勤が最も早いのは楊、逆に最も遅いのは古池となっていたのだから、楊が驚くのも無理はなかった。
 目の下にくまをつくった古池は、白衣もその下のワイシャツもよれよれ。徹夜で作業をしていたらしい。
「どうしたんですか?昨日、私が戸締まりした後に……」
 古池は眠い目をこすりつつ答える。
「ああ、明日提出する中間報告書で使ってた資料にミスがあってね。アヴァロンの地殻を、古いデータのままで演算してしまったんだよ。うちに帰ってから、見直してみたら気がついたんだ。で、慌てて戻ってきて書き直してる訳なんだが。」
 あきれたような顔をしてため息をついた楊は、古池の作業を邪魔しないように脇からコーヒーカップを取る。
「いつもこんな風に仕事熱心でしたら、私も嬉しいんですけど。」
 研究室の隅にある洗面台で、コーヒーカップと夜食に使った食器を片づけながら、楊が言う。語尾が微妙に上がっている。
「あー、すまんね。」
 仮眠抜きの徹夜明けで、何にどう答えているのか分かっているのかは別にして、作業だけは続けている古池。
 しばらくすると、楊は新しいコーヒーを古池に出してくれた。
「あー、すまんね。」
「もーすこし、気の利いた感謝の言葉は出てこないんですか!」
 怒鳴られたことは理解できても、何故怒鳴られたのかよく分からない古池は、肩をすくめたままでコーヒーをすする。
 端末を通じて、委員会の大型電脳に幾つかの検索と精度の粗いシミュレーションを同時に実行するよう指示した。これが終了すれば、一応提出できる資料が揃う。
 モニタの画面中央に表示されている作業進捗状況(プログレス・モニタ)に合わせる様に、大脳にカフェインが染み渡ってきた。
 さっき怒鳴られた理由がようやく分かってきた古池は、楊の後ろ姿を見て声を掛けるのをやめた。
 自分の端末で昔の論文か何かを呼び出しているらしいが、背中からは名状し難い危険な炎が燃え盛っている。
 今取り繕おうとしてもロクな目に合わないのは間違いない。
 端末に目を戻す。ノロノロと演算が進んで行く。浮かんでくる欠伸を必死に噛み殺した。
 研究室のドアが数回ノックされた。
「何のご用ですか!」楊は自分の机から動こうともせずに怒鳴った。
 少し間を置いて、もう一度ノック。
 楊は肩をいからせて扉に向かうと、開くやいなや突っ立っていた男を怒鳴り付けた。
「ローレクト博士(せんせい)!、古池博士(せんせ)は今報告書の仕上げやって………るん…です。」
 声は変な尻すぼみになった。
 古池は何事かと楊の後ろから覗き込むと、ドアの向うでディスクケースとプリント書類を撒き散らした青年が尻餅をついていた。
 顔が青い。まあ、楊の雷の直撃を受けたのだから無理はあるまい。
 青年は、楊の後ろに立っている古池を見つけると、慌てて書類やディスクを拾い集めはじめた。
「あ、の、古池博士(せんせい)、資料、きました。集めて。」
 楊も自らのミスに気づき、青年の手伝いをはじめた。
「す、すみません。その、私、ローレクト博士(せんせい)だと思ってて…」
「…ご迷惑をお掛けしているようで、父が…ごめんなさい。」青年は、申し訳なさそうに俯いた。
「え?」
 古池もようやくこの青年が誰で、何を頼んだか思い出す。
「フレッド・ローレクト君だ、ロブの息子だよ。昨日君を呼び出すのも悪くてね、ちょうど手の空いていたフレッド君に資料集めと要約を頼んだんだ。」
「たまたま、この階に用があったので来たんです。昨日は。で、夜遅くだったんですが、研究室に顔を出したら古池博士(せんせい)に頼まれたって訳なんです。」
 拾い物を手伝うためにしゃがんだままの楊は、驚いたように古池を見上げ、それからフレッドの顔を見た。
「あらやだ、私ったら。」
 トマトだったら、そのまま市場に出荷できる程に赤面した楊に、フレッドもしゃがんだまま手を差し出した。
「分子生物学応用研究班で助手をやっています。フレッド・ローレクトです。よろしく。」
 握手を見届けた後、古池は二人を研究室に入れた。
 研究室に入ったフレッドは、挨拶もそこそこに持ってきたディスクを古池に手渡してきた。
「えーと、色々あるんですが、これに要約が入ってます。文書要約ソフトのバージョンが古かったので、ちょっと舌っ足らずな部分があるんですが、大丈夫だとおもいます。」
 古池はディスクを受け取ると、端末の画面を見た。
 大型電脳上でのシミュレーションは終わっていなかったが、ディスクの内容を確認するのに問題はない。
 端末にディスクを入れると、要約を確認する。フレッドの言うとおり文章要約ソフト特有の奇妙な文脈で書かれてはいたが、このままで、報告書と一緒に提出する資料として充分通用するだろう。
「ありがとう、フレッド君。これで間に合いそうだよ。」
「困ったときは、お互い様です。古池博士(せんせい)。」フレッドは、はにかんで笑った。「あと『フレッド君』なんて、やめてくださいよ。前みたいに『フレディ』で、構いませんから。」
 古池はフレッドから残りの書類とディスクを受け取ると、付箋をつけて書類の山に積む。
「コーヒーでも飲んで行かないか?」
「えーと、その、父の研究室も覗いていこうかと思ってるので。」
 楊に挨拶すると、フレッドは研究室を出た。
 しかし、ものの一分もしないうちに戻ってきた。
「あの、古池博士(せんせい)、忘れてました、これを。」
 研究室の扉から上半身だけ出したフレッドは、ワイシャツの胸ポケットから一枚のディスクを取り出すと、古池に渡す。
「なんでも、量子電池とかの話題みたいです。古池博士(せんせい)のマイクロマシンに何か役立つんじゃないかと思って。」
「量子電池?」
「詳しいことは、俺にはさっぱり、ですよ。」そう言って、フレッドは改めて退室していった。
 古池は、フレッドの残したディスクを見つめる。
「量子電池、ねえ?」
 ディスクをさっき付箋をつけた書類の山の上に乗せる。
 量子電池。興味深い名前ではあるが、今は報告書の提出の方が先だ。机に戻って、報告書を校正ソフトにかける。
 数秒の後、百数十箇所のミス、またはその可能性の高い部分を指摘される。
 古池は白衣を脱ぐと、一つ一つ書き直していく作業に入った。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/26

お題目:えためろ(その2)
 某ここからリンクしているサイトの方の助言を得て、遂に楊雲撃墜に成功しました。ついでに帰還成功。

 ………納得行かーん!!。
 ゲームシステム云々は、こーいうゲームであるからして、という事で飲み込んで、オチが納得行かん。特に主人公、あれだけ騒いで自分だけ帰ってきて、チャンチャンで済ますな(笑)。ランドオーヴァー王のように、骨を埋める位の気合いを入れんか………!えーい、市中引き回しの上、ビーム発射じゃ!!
 とか言いつつ、それが必須条件だからとはいえ、同じパーティーの他の面々をある意味放置して特定のキャラだけを重視しなければならないのは、なんとも割りきれないモノがありまする………あ、ウィロウ(≠コットン)って、楊雲に似てるな(笑)。

 現在、病弱を攻略中。でも、もしかしたら、途中で飽きるかも(汗)。
(残された謎:兎娘のあれは『靴』なのか『足』なのか?、若葉の兄はウィザースハーモニーのあれなのか?、他)

 で、今さら言うのもアレなのですが、これって、5年も前のゲームだったのですね(爆)。こんなの掘り出して今さら文句つける拙者って一体(笑)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/24

お題目:gShotデモ版公開
 んなわけで、遂にgShotデモ版を公開しました。
 対応OSは、Mac OS 8.0以降、動作CPUはPowerPC603/180Mhz以上(G3/333Mhz以上推奨)です(PowerMacintosh8100あたりでも動作しますが、えらく遅いです(^^;)。デモ版とはいえ、スコアアタックの熱さはそのまま。Mac OS XのClassic環境での動作も確認しておりますので、どうぞ御楽しみください(MacOS X 10.0.2以降のClassic環境をお勧めしまする)。
 現在、同人ソフトを取り扱っているお店で、店頭販売してもらえるように画策中です。こちらも、何か動きがありましたら、順次公開していきますので、御待ちくださいませ〜。

 それでは次回の……え?、亜生命戦争異聞の続き?もう少し待ってくだされ〜………え?(名称未設定)の続き?………ゲフガフ(吐血)。あー、リクエスト募集中(意味不明)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/21

お題目:亜生命戦争異聞#5
 ダンツ委員の部屋を辞した古池とローレクトだったが、そのまま研究室に帰る気にはなれず、自販機でコーヒーを買うと研究棟の外に出た。
 秋も終わりに近い。研究棟の広い敷地に植えられた木々は既に葉を落とし、長く辛い冬に耐える準備を終えていた。
 枝だけになった樹木と茶色い芝、誰も居ない敷地、そして彼方の雪化粧した山々という風景の中で、水を吹き上げ続ける噴水が寂しい。
 そんな中、背後にある自家発電用の風車の影が、ぽつりぽつりと回り続けている。
 二人してベンチに腰掛けると、コーヒーを飲んだ。
「寒いな。」ローレクトは、白衣の衿を引っ張って首筋に飛び込んでくる北風を避けようとしている。
「ああ。」
 熱いコーヒーをすすりながら、古池が答えた。
 ローレクトもコーヒーをすする。
 晩秋の陽光と熱いコーヒーが、二人に僅かな暖を与えてくれていた。
「今朝のニュース見たか?」コーヒーを飲み干したローレクトが切り出した。
「見た。」
 珍しく紙コップを握りつぶしたローレクトは、二杯目のコーヒーを買いに行くと言った。
 古池のコーヒーはまだ半分以上残っていたが、ついでにもう一杯を頼む。
 ローレクトはそのまま研究棟に入っていった。
 今朝のニュース。
 幾つかの事件、幾つかの紛争、幾つかの訴訟。胃の痛くなるような、そういった日常のニュースの中で、ローレクトがあえて古池に『見たか?』と聞いてくるような話題はひとつしかない。
 北海油田の閉鎖だ。
 今世紀中盤から始まった基幹エネルギーの石油から水素への大転換(一部の科学者や社会学者たちは、産業革命に準(なぞら)えてこれを『水素革命』と呼んでいたが、これが広く通用するためには、この大転換そのものが歴史と化す必要があった)は、社会全体に大きな衝撃を与えた。
 前世紀末から緩やかに進行していた基幹エネルギーの転換が爆発的な勢いで進み始めたのは、皮肉にも地域紛争で用いられた細菌兵器が原因だった。
 この細菌兵器、オイルイーターは、沿岸でのタンカーの石油流出事故などで用いられた食油細菌が元となっているが、兵器として改良が加えられた彼らは、旺盛な繁殖力と鉱物油分解能力を与えられ、しかも有酸素でも無酸素でも生存でき、鉱物油を分解し増殖を行うことができる。
 何らかの原因で変異を起こしたのか、あるいは制御に失敗したのか、紛争地帯で実践に供されたオイルイーターは、最初の数カ月でまず当事者の間で用いられていたガソリンや軽油を燃料とするエンジンをガス欠にし、次に潤滑油として鉱物油を用いる様々な兵器・機械を使用不能に陥れた。
 皮肉なことに、この地域の紛争はこれ以降ピタリと収まった。爆発的に増殖した細菌によって、油田の原油生産能力が大きくそぎ落とされ、その地域の利権が消滅してしまったのだ。
 その後、オイルイーターは変異を繰り返しつつ各地の原油貯蔵施設や精製施設に広がり、蓄えられた石油はたちまちのうちにメタンやプロパンに分解された。世界は基幹エネルギーを石油から水素に転換せざるを得なくなったが、既に利権の原因となる石油そのものが失われていたため、転換は大した混乱もなく進行していった。
 ジェット機や大型建機など、一部の大出力を必要とする内燃機関の燃料や潤滑油は植物性か、あるいは化学合成されたものが用いられるようになり、今や原油は、プラスチックや合成樹脂の原料とするために、限られた地域で生産されるだけになってしまった。
 しかも、その油田も合成樹脂類が水素及び二酸化炭素から工業的に合成できるようになってきた現在では、過去の石炭の如く、単にコストパフォーマンスの悪いエネルギー源と見なされる様になりつつある。
 そして、今掘削を続けている数少ない油田である北海油田が、今朝、三年後をメドに閉鎖されることが決定したというニュースが報じられた…
 古池はカップの中に残るコーヒーを見た。
 百数十年の歴史を誇る北海油田が閉鎖されるのは、エネルギーの転換が進んでいる象徴ではある。そういう観点から見れば、このニュースはここ数年で最も明るいものだと言っても良い。ローレクトの言いたかったこともそれだろう。
 が、古池はいまは別のことを考えていた。
 十年を待たず、世界から化石燃料の内燃機関が消滅し、二酸化炭素を大量に吐き出すガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、あるいは石油を燃やす火力発電所、工場なども命運を共にした。
 今世紀末、つまり現在までに五度は上昇するだろうと言われた地球温暖化は、基幹エネルギーの転換が進むに連れてその速度を鈍化させ、今では寒冷化が進みダンツ委員の言うとおり『氷河期』という言葉すらちらつき始めている。
 兵器として使われた細菌が、結果的にとはいえ人類の危機を救い、そして今は別の危機の原因になろうとしている訳だ。
 その皮肉に古池は笑った。
 アヴァロンのテラフォーミングが成功したとして、果たしてそれが人類を救うことになり得るのか。
 単に、この地球で無数に行われている、見当違いの間抜けな紛争を引き起こせる場所を提供するだけになってしまうのではないか。
 そう言った疑念が沸き上がる。
 古池は工学者であって、社会学者ではない。
 しかし、人類がそういう事を続けかねない程度に愚かである可能性があることは知っていた。
 更にもうひとつの疑念、あるいは危機感のようなものがあった。
 古池はまた、分子生化学者であるローレクトが研究を進めている環境改良細菌などの事も、厳密に理解できている訳ではない。
 しかし、何かが心の隅に引っかかっていた…遺伝子工学とは、生命工学とは、果たして今の人類に扱いきれるものなのだろうか。
 蒸気機関の昔から、新しい技術が世に放たれる度に、その技術に対する様々な議論が沸き起こった。
 あるものは石油化学のように、新たな主役にその座を譲り、あるものは核分裂ベースの原子力のように、様々な致命的事故を引き起こし、危険性を指摘されながら未だに使い続けられている。
 遺伝子工学、生命工学は、はたしてどちらに属するものなのだろう。
 古池は元来悲観論者ではないが、今日ダンツに見せられた『遺伝子爆弾(ジーンボム)』の被害者の写真は、相当に堪(こた)えた。
『君は人類が救えると思っているのか?もし、救えるとしても、人類にそれだけの価値があるとでも言うのか?』
 昔読んだSF小説の悪役が、主人公に向かって言い放った台詞が思い起こされる…
「おーい、古池ぃ」
 後ろからローレクトの声が聞こえた。ヤケに間が抜けている。
 振り向いた古池の目に、両手に紙コップを持ったローレクトと…楊(ヤン)だ。
 鬼気とも言うべき気迫が、楊(ヤン)の背中から陽炎のように立ち上っている。
「古池博士(せんせい)!」
 慌てて立ち上がった古池は、小走りに二人の方に向かった。
「いやいや、わざわざ済まないな。楊(ヤン)。」
 楊(ヤン)はローレクトから古池の分の紙コップをひったくるように受け取ると、書類の束と一緒に古池に突きつける。
「ダンツ委員の所から帰ってこないと思ったら、こんな所で油売っていたんですか!」
「あー。」安全装置の外れた助手から書類と紙コップを受け取った古池は、ローレクトの方に視線を使ったレーザー通信を試みる。
『ごまかせなかったのか?!』。
 生化学者は一個の生命の個体内部の判断に基づいて視線を逸らし、全身からホルモンを分泌して応えた。
『すまーん。楊(ヤン)ちゃん、怖いんだよー。』
 楊(ヤン)は二人の間に割って入った。
「ローレクト博士(せんせい)のせいにしようとしてもダメです!だいたい博士(せんせい)は…」
 たまらず古池は走って逃げる。
「わかった、わかった!すまん、戻ります、読みます!」
「ごまかそうとしても、そうはいきませんよ、今日は色々言いたい事があります!博士(せんせい)ッ!待ってください!」
 二人が走り去った後に残されたローレクトは、肩をすくめてため息をつく。
「…うーちの助手に爪の垢でも飲ませたいよ。」そう言って、コーヒーをすすった。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/17

お題目:ミイラ職人がミイラになる。
 自分で作ったゲームのスコアアタックに、身内一同がハマりまくって、サポートページの作成が大幅に遅滞中(笑)
 ミイラ職人がミイラになってどうする〜>一同。
 んなわけで、gShotは近日中に通販や同人誌取扱店での販売が開始される予定です。また、フリーウェアデモ版も完成し、近日中に公開の予定でありまする。
 乞うご期待!

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/16

お題目:時間がないです。
jpg画像 うーむ、時間がありませぬ。
 毎度のごとく、プログラムしたり、その為の勉強したり、html組んだり、文章(同人関係含む(^^;)書いたり、ときどき通販事務したりしているのですが、最近になってこれに渉外という項目が加わって、何となく絵を描く時間が圧迫されております。他にも、大量のサターンソフト(百本くらい(笑))とか、近日中にやってくる予定の追加のサターンソフトとか、膨大なメガドラソフトとか、色々あるのですが……これらが、絵を描くための机を占領していたりして、これがまた時間と一緒に絵を描く気力を微妙に削いでいたりします。
 何も作ってないわけじゃいし、色々動いているのですが、やっぱり絵というのは拙者の創作の上でのひとつの重要なキーワードらしく、ここから類推すると、絵だけじゃダメ、文章だけじゃダメ、もちろん、プログラムやデザインだけでもダメ、とかいうわがままな仕様になっているのでしょう(笑)。

 端っこの絵は、今年の年賀画像だったりします(今さら!!)。一部の方には、1月に既に公開済みだったのですが、そのまま放置していたため、存在を忘れてしまいました(汗)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/15

お題目:亜生命戦争異聞#4
 もうそろそろ、夏の新刊とか考えなきゃいけない季節になりつつありますが、如何なもんでしょう(汗)
 銀河帝国書院でもいろいろと企画だけは出ておりますが、まともに完成するのは一体どれになるのやら………gShotの方も、どこで扱ってもらうか、色々検討中です〜。正しくは連絡待ち………うーむ、どうなるのでしょう(大汗)。

 んな訳で、亜生命戦争異聞の第四回目です。タイトルはとりあえず仮題です。多分『(なんとかかんとか)〜亜生命戦争異聞』という形になるのでは〜?とか思いつつ、行ってみましょう。どりゃ!

「ムチャクチャだ。惑星改造を五年で終わらせてしまえって言うんですか?」
 食い下がるローレクトの目の前に巨大な大陸が現れた。VRが部屋を埋めるように惑星を表示したのだ。
 ロブは驚いて数歩下がる。
 青く広がる海。薄い岩石質の黄土色だけで塗りつぶされた大地。その大気には雲が広がり、今ちょうど暁を迎えようとしている雲の下に、雷光が閃いているらしい。
 わずかに解像度(レゾ)の低い部分が残り、そこは方形のモザイクによって形作られている。
 それは、アヴァロン。
 幾つもの準光速無人観測機が、一瞬の会合の瞬間に捕らえた映像を組み合わせたものだ。
「惑星改造そのものを五年で完了させようと言うわけではない。」
 ダンツはVRのコンソールに手を伸ばした。
 アヴァロンは一瞬にしてソフトボール大となり、代わりにローレクトの身長ほどもある地球が現れる。
 低軌道上には大型航宙艦を示すと思われる立方体が表示されていた。
 一拍おいて、その立方体は巨大化し、同時に細部が露になった。一目でただの航宙艦ではないことが分かる。
 特に目立つのは、巨大な白い流線型の艦首と、艦尾の、全長の三分の一はある巨大なエンジンブロック。星系間航宙艦だと考えても、この大きさは異様だ。
 逆に、オールトの雲など、太陽系辺遠への観測等に使われる大型艦には付き物の、巨大な遠心重力区画がない。ただの立方体の塊だ。
 よく見ると、この設計はまだ本格的なものではないらしく、各ブロックは現在就航している航宙艦のVRモデルを継ぎはぎして作ってある。
 委員会の下で働く、実務担当者たちの悪戦苦闘ぶりが想像できる。
「この航宙艦に、惑星改造に必要な全ての機材・人材・資材を積み、アヴァロンへ送り込む。」
「全てを、ですか。」古池が訪ねた。
「そう。全てだ…おそらく、君等は、単一艦ではなく船団を組んだ方が、事故が起こった際の問題が発生しにくいのではないかと考えているだろう。」
 航宙艦のVRモデルはゆっくりと回転している。スケールは明らかではないが、規模からして全長十数キロにはなるだろう。文句無しに世界最大級の航宙艦だ。
「一隻とする事には、理由がある。一つは予算的問題だ。現段階で既に複数艦を建造するだけの金銭的余裕は、全く無い。もう一つは、これが重要なのだが、亜光速で複数艦が航行する危険性を考慮してのことだ。光速の数十%で航行し、静止した星系間空間ガスの壁を切り裂きながら突き進む艦同士が接触事故を起こすなど、考えたくもない。」
 確かにそうだ。古池は納得した。
 星系間空間ではあっても、数立方メートルに水素原子一個程度が存在する。宇宙はどこも全くの真空というわけではない。
 相対的な速度が低ければ問題はないが、光速の数十%で航行する航宙艦にとっては、星系間空間ガスは地球上の大気以上に手ごわい相手となるだろう。
 部屋の空間の半分を占有していた航宙艦は、再びマッチ箱程度の立方体となり、地球軌道から矢のように飛び出した。
 VRはズームアウトし、航宙艦がオールトの雲を突抜け、星系間空間を越え、アヴァロンの待つAR星系へと向かう経路を映し出す。
 白い艦首の正体はオールト雲に集積された彗星核から作られた巨大な氷の塊を整形したものだ。
 星系間空間の冷気によって凍らされた水は、鋼鉄より堅く、ほとんどの物質と余計な反応を引き起こすことも無く、しかも安価な理想的な防御壁となる。
 亜光速で衝突する衝突する星系間ガスや微惑星群には、流線型の氷の防御壁で突破しようというのだ。
「艦がアヴァロンに到着するだけでも十年は掛かるはずです。」
 ロブが口を出す。言わずもがな、といった口調だ。
 ダンツ委員はそれには答えず、背にしていた机と書類でてきたトーチカの後ろにまわると、その後ろの巨大な本棚の前に立った。
 分厚い百科事典の一冊を手にとると、中から小瓶と小さなコップを取り出す。それから、二人の方を見て、いたずらっぽく笑ってみせた。
「どうやら我々には、コンセンサスが必要なようだな。」
 戻って、二人にコップを渡したダンツは、小瓶の中の黄金色の液体を少し注ぐ。
 古池はその匂いに覚えがあった。銘柄は憶えていないが、昔、まだ学会(アカデミー)に所属していた頃の事。お偉いさんに連れていかれた、さも高そうなクラブで呑んだウィスキーだ。
 自分の分のコップに注ぎ終えたダンツは、二人にコップを掲げる。
「アヴァロンのために」
 そう言って、カップの中のウィスキーを飲み干した。
 古池とロブは、顔を見合わせたが、やはりダンツと同じようにウィスキーを飲み干した。
 酒は久しぶりだったせいか、古池はその熱い液体にむせてしまった。
 ダンツ委員は、その姿をみて少し笑うと、説明を続けた。
「たしかに、ローレクト君の言うとおり、わずか五年では惑星改造を完了させることはできない。SFで言われるような超光速航行の手段を未だ論理でしか持ち得ぬ我々は、アヴァロンにたどり着くだけでも十数年の年月を必要とする。しかし…」
 舌を濡らす様に、ダンツはもう一口ウィスキーを呑む。
「しかし、五年あれば、一個の完結した惑星開拓能力を持つ航宙艦をアヴァロンへと出発させることはできる。地球からの補給無しでアヴァロンのテラフォーミングを行い、新たな都市を建設する為に必要な、全ての機材・人材・資材を積んだ航宙艦を出発させることは。」
 ロブは顔をしかめた。
「それでは…それでは、たった一隻の航宙艦だけで全てを行わなければならないと?、地球からの補給無しに」
「その通りだ。」
 ウィスキーをあおったロブは不満を撒き散らす。「航宙艦には、魔法の粉は何トンくらい入るんです?載せる妖精の人数は?」
「そうさな、そのあたりの試算は君に任せよう。」
 ダンツは、ロブの皮肉にもならない冗談に苦笑した。
「アヴァロンの惑星としての諸条件は、恵まれすぎている、と言って良いほど恵まれている。これは、君等もよく知っているはずだ。だからこそ、航宙艦一隻でテラフォーミングが可能だと委員会は判断したのだ。もし、アヴァロンが火星のような環境だったとしたら、テラフォーミングには少なくとも数世紀は必要になっただろう。今正に行われている通りに。」
 そこまで聞いた古池は、慎重に言葉を選び…少なくとも、自分自身はそう考えて訪ねた。
「出発した後は、どうなります?」
「航宙艦が出発する時点では、人員のほぼ全員は人工冬眠状態で待機する事になる。この艦が小規模な遠心人工重力区画しか持っていないのも、その為だ。地球との連絡は、初期加速ステージの段階では無理だろう。物質・反物質反応駆動機関(MAMRE)の光熱の中から信号を取り出すのは、溶鉱炉の中の一本のロウソクの光を探し出すようなものだからな。次亜光速航行ステージに入れば回復するだろうが、数年は通信遮断状態のままだ。」
 言葉の意味を取り違えられたか、はぐらかされたか、いずれにせよダンツは古池が答えて欲しかった質問には、触れようともしない。
 古池は改めて聞くべきか考え、ダンツにもう一杯ウィスキーを貰うことで自分を納得させた。
 新天地を切り拓くべく派遣される航宙艦が、地球という沈みかけた船から脱出する救命艇になると考えたくはなかった。

 さて、亜生命戦争異聞も、4回目となるわけですが、いかがなもんでしょうか(汗)。
 正直なところ、どれだけ続くかさっぱり見通しがつかないのですが………お楽しみ頂ければ幸いです(いつもこればっかし)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:11777+14500くらい


05/11

お題目:亜生命戦争異聞#3
 古池とロバートの二人は、早足でダンツ委員の執務室へ向かった。
 ダンツは国家間問題調停国際会議との連絡役も務める委員会の重鎮で、七十を越える今でも各国からアヴァロン計画への協力を取り付けるために精力的な活動を続けている。
 しかし、その物腰は柔らかく、理詰めの議論の中でも朴訥な口調を失わない。
 これをディスカッションの為の強かさと見る者も多かったが、その朴訥さと誠実さこそダンツの心髄ではないかと古池は見ていた。
 二人の行く研究棟の空気は、いつにもまして張り詰めている。単にこの冬の訪れが早いという理由だけではあるまい。
 廊下の窓から外を見る。
 街路樹は既に冬支度を終え、澄んだ空気の向うには、白く雪を被った山脈が見えた。
 今年の冬も長く寒いものになりそうだ。
 古池が子供の頃は、今ごろの季節は……十月はまだ夏だった。
 暗くなるまで走り回っても、まだ暑い季節が続き、冬に霜柱が立ったり、雪が降ったりする事を知ったのは学校に入ってからのことだ。
 そして今は………
 研究棟の端、特長のない扉の横にいかにも研究室らしい表札が掲げられている。
 ダンツの名は白塗りされた再生プラスティック片に黒く書かれている。裏返して、赤地に白く名前が書かれた状態にすれば、不在を表す事になる。
 何も、こんな古臭いものにしなくてもいいだろうに。
 古池が扉をノックしようと歩調を緩めると、ロバートは前に出てノックと同時に扉を開けた。
「ダンツ委員?」
 ロバートの声に顔を上げたダンツ委員は、その人のよさそうな顔に疲労と緊張を滲ませていた。
 古ぼけた机に載せられた封筒や書類が山をなし、戦場にそびえるトーチカのような様相を呈している。
 しかし今は、その姿を笑えない。ダンツは正に戦場から舞い戻ってきたのだ。
 ダンツは立ち上がると、二人に椅子を勧めた。
「いや、よく来てくれた。まずは楽にしてくれ。」
 椅子はオーク材の凝った彫刻のあるもので、どうみてもダンツの机より高そうだ。
 椅子に座るなり、ロバートは口を開いた。
「一体なんなんですか?こんな呼び出しは初めてです。」
 ダンツは手許の書類の山から何束か取り出す。
「ローレクト君、物事には順序というものがある。結論を急いてはいかんよ。」
 取り出した書類の束から、幾つか選んだダンツは、それを古池に渡した。
「昨夜の事だが、委員会から緊急の呼び出しがあってね。」
 古池がよく見る前に、ロバートが横から顔を出して書類を見る。
「ダンツ委員、これは?」
「まだ話は始まったばかりだ、ローレクト君。」ダンツは静かに諭す。
 渡された書類の束には、国家間問題調停会議のものを示すマークが型押しされている。そしてその書類は『アヴァロン計画への各国支援体制のあり方について』と表題されていた。
「まあ、来るべきものが来たといった感じだがな。調停会議の方から、現行の規模での支援体制を五年後をメドに見直したいと打診してきた。事実上の支援打ち切りと言って良いだろう。」
「馬鹿な!」ロバートは立ち上がって怒りを露にした。「この計画が擱座したら、ただでは済まないことはどこの政府だって分かっているはずだ!」
 委員は腰を下ろすようロバートに手で示し、自分は立って資料をめくる。
「その事は各国とも十分理解している。私が保証しよう。しかし、実際問題として、アジア連邦をはじめとして、各国は既に破産状態だ。『アヴァロン計画に対する支援は、乾いた雑巾から一滴の水を絞り出すのと同じ』、この報告書に書かれている通りなのは、君等も認めざるを得まい。」
 古池が口を開いた。
「しかし、逆に言えば今後五年間は、現行規模での支援を受けられるという事ですね?」
「もう少し待ちたまえ、古池君。事は単に支援の問題だけではない。」
 書類のトーチカから抜け出したダンツは、VRモニタを起動した。
 三人の目の前に、地球の姿とグラフが現れる。
「見ての通り、ここ二十年で地球の平均気温は1.5度低下。太陽定数も、ここ十年で2%も低下している……今世紀初頭の『温暖化危機』の数倍のスピードで、地球は寒冷化の道をたどっているのだ。このままで行けば、約一世紀後には、十度を下回る。」
 VRの地球は、北半球がユーラシア大陸と北米大陸の大半が氷河に覆われ、一方南半球はオーストラリア、南米大陸が南極大陸と白い陸続きとなった。
「氷河期だ。」
 ダンツは、ここで言葉を切った。一層の苦悩が額に深い皺を形作る。
 VRの表示が切り替わり、今度は地球上の様々な方向に矢印が浮かび上がってきた。
「難民問題も深刻だ。南米からの難民が二千万人、ユーラシアからは五億人、ヨーロッパ東部が八千万人、アフリカが十二億人。この難民の全てが北を、西を目指して大移動をおこなっている。しかも、これら難民に対して、遺伝子爆弾が使用された形跡が、ある。」
 各地の難民センターから送られてきたらしいVRフォトが表示される。
 形跡も何もない。あからさまな遺伝子爆弾の爪痕だ。
 再生医療の発達した現在、如何なる傷跡も、今はその痕跡も残さず消し去ることができる。失った四肢も体も、そのほとんどは再び取り戻すことができる。
 科学が、人が人らしく生き続ける可能性を与えてくれたのだ。
 だが、遺伝子爆弾は………科学の逆の面を露にしていた。
 科学は、人が人である事を根幹から破壊するのだ。
 特定の人種のみに作用する様に特に慎重に調整された、ベクターと呼ばれる『運び屋』ウィルス。
 このウィルスに組み込まれるのは、人が人であることを否定する遺伝子………
 ロバートは目を背けた。
 しかし、古池はその姿から目を離すことはできなかった。
 VRが消える。
 三人は、何かの呪縛から解き放たれたように、大きく深呼吸をした。
 古池は言うべき言葉を見つけられなかった。ロバートも、いつもの軽口を開くこともなく押し黙っている。
 ダンツが沈黙を破った。
「今や人類は、その存亡の瀬戸際まで追い詰められている。これは調停会議の一致した見解だ。人類は、自然の猛威と自らの所行によって、滅亡の危機に曝されているのだ。そんな中で、このアヴァロン計画を中断させる訳にはいかない。五年という年限は、単に経済的な問題だけではなく、世界人類全体の…
 世界人類全体の、絶望の予感に耐え得る限界でもある。」
 ロバートは、ダンツの言葉に身を乗り出した。
「まさか。しかし、そんな、無茶な。」
「やってみなければ、分かるまい。何にせよ、我々に残された手段は、これしかないのだ。」ダンツは息を継ぎ、ため息のように言った。「来年からの五年間で、アヴァロン計画を完遂させる。」
 二人に向き直った老委員は、持っていた書類の束を机の上の山に戻すと、手を後ろに組み、断固とした口調で言い放った。
「万難を排し、如何なる手段を使っても5年後までにアヴァロン計画を完遂する。これが、委員会の決定だ。」

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/10

お題目:(名称未設定)#3
 武雄は料理を作るのは嫌いではない。
 しかし食事が終わった後、台所にたまった食器を見ることほど嫌なことはなかった。
 特に気力を奮い立たせることもできないような日は、スパゲッティとかの麺類や、リゾットやグラタン、とにかく洗い物が少なくなるようなメニューばかりになる。
 そうなると黙っていないのは晶子だ。
 自分が作れる料理のバリエーションは少ないくせに、兄の料理の味やら調理法やら盛りつけに、事細かにケチをつけてくる。
 だが今日は、武雄はそんな事を承知の上で山盛りの味噌スパゲッティを作った。
 味つけはネギと味噌と醤油だけ。手抜き料理の典型だ。
 下校時のどさくさに、いつのまにか食事当番を押しつけられた事に対する意趣返しでもあってし、これにケチを付けてくれれば、逆手に取って入学以来の奇妙な行動の理由を訪ねるつもりだった。
 だが晶子は、そんな兄の思惑を知っての上でか、料理に使った鍋やフライパンを片づける間に大皿に盛られた二人分のスパゲティを事も無げに平らげると、さっさと自分の部屋に引っ込んでしまった。
 後に残されたのは、二人分の食器と、自分の分の夕食まで平らげられた武雄だけ。
 もう一度自分の分を作らなければならないとなれば、台所の食器はいつにもまして手を付けにくい。
 仕方なく棚の乾物入れからカップラーメンを取り出す。
 食事を作る余裕がない様な時の為に買いだめしておいた物だ。
 両親が海外に出張した最初の頃、自炊の手間が嫌で兄妹してこればかり食べていた。
 おかげで体調を崩してしまい、それ以来できる限り食べないようにしている。だが、こういう場合は別だ。
 準備はお湯を沸かすだけで済むし、食べたらカップを捨てるだけで済む。
「おお、人類の英知よ。栄光よ。」
 訳の分からない事を呟きつつ、武雄はカップにお湯を注ぐ。
 あとは五分ほど待つだけだ。
 つけっぱなしのテレビからは、芸人がお互いの日常を暴露しあう叫び声が聞こえてくる。晶子が見ていたナントカとかいうマンガ番組は終わったらしい。
 せっかくビデオがあるんだから、録画しておいて後で見ればいいじゃないか。そう晶子に言ったこともあったが、きちんと見なければならない何だかよく分からない理由があるらしい。
 妹の去ったテーブルからリモコンを取ると、チャンネルを変えた。
 変えたところで、見たい番組があるわけではない。
 ただ、唯一の話し相手が去ってしまった隙間を埋めるために、音と動く絵を流しておきたいだけだ。
 なるべく当たり障りのない番組を選び(そうなるといつも同じチャンネルになってしまうのだが)、聞こえるか聞こえないかのぎりぎりのボリュームにする。
 いざ、カップの蓋を取って…
 改めて考えてみれば、何とも寂しい夕食だ。
 冷蔵庫にもう一品くらい、作りおきの料理か食べ残しでも入っていないかと探してみたが、やはり何もない。
 自分が作った覚えがないんだから、当たり前である。
 あきらめてカップ麺をすする。
 ともかく、今日は妹に振り舞わされっぱなしの日だった。
 デートの約束は結局すっぽかしてしまった事になり、女の子には嫌われ、食事当番まで押しつけられた。
 なんであんな事してくるのやら。
「やっぱ、あれが原因なのか…?」
 武雄にとっては、思い出したくない、忘れたい出来事だ。
 気分を変えようと、チャンネルを変える。
 売り出し中の若手芸人が小麦粉にまみれて箱の中から飛び出してきた。
 番組の中のハイテンションが、かえって虚ろに聞こえて、今一つ笑う気になれない。
 次々にチャンネルを変えても見たいと思える番組を見つけることができず、結局電源を切る。
 残ったカップ麺を腹の中に流し込んで、食器の後かたづけをはじめた。
 扉が開く音がしたのでふと目をやると、晶子が洗濯物を抱えて出てきた。シャワーを浴びるつもりなのか。
 数秒の間。
 我が目を疑って、晶子の姿を見直す。晶子は何も着ていない。裸だ。
「う、わ!」
 あからさまにワンテンポ遅れて驚いた武雄は、手を滑らせ洗っている皿を落とした。
 落ちた皿は、割れはしなかったが、シンクの中でがらんと音を立てて転がる。
「あ、あ、晶子!」うわずった声。
「何?お兄ちゃん?」
 晶子は脱衣所への扉から頭だけ出して答えた。
 その顔にはありありと不満が浮かんでいる。
「お前なぁ、まがりなりにも女だろ!小学生じゃないんだから、素っ裸で部屋ン歩くな!」
 兄の言葉に、まるで意味もなく怒鳴り付けられているかの様に言い返す。
「失ッ礼ね。ちゃんと着てるわよ、お兄ちゃんだって、お父さんみたいに下着だけで歩くでしょ!」
 証拠とばかりにブラの肩紐を引っ張って見せる。
 晶子の言い分は実に道理だ。が、今日一日の行き場のない怒りが武雄を別の話題に駆り立てた。
 対面式になっている台所を出て晶子につかつかと歩み寄る。
「お前最近変だぞ、そんな風に部屋ン中裸で歩いたり、学校で俺にまとわりついたり、男子用の学生服着て来たり。一体何だってんだ?」
 言い放ってから、晶子を睨(にら)んでいた視線がふと逸れた。
 下着姿の妹が目の前にいることに気がついたのだ。
 結果的に武雄は晶子の全身を見ることになった。
 悲しい男の本能か、武雄はついまじまじと見つめてしまった。
 そーいや、あん時はまともに見てなかったけど。よくもまあこんなに育ったもんだなぁ。
 妹の顔が見る間に赤く染まる。
 それを見て、武雄は我に返った。
『しまった!ついうっかり…』
 しかし、次の瞬間には、晶子の手が洗濯機の上の洗い桶に伸び、それはそのまま武雄の顔に振り降ろされた。
「ッえっちーっ!」
 虚を突かれた状態で、思いっ切り洗い桶でひっぱたかれた武雄はもんどり打ってひっくり返る。
「バカ兄貴!変態!すけべ!女ったらし!」
 兄が倒れた横を晶子が自分の部屋に走り戻る途中で、罵声を浴びせかけ、ついでに頭に洗い桶を投げつける。
「死んじゃえー!」
 武雄は痛みにのた打ち回りながら、心の中で叫んでいた。
『なんでこうなるんだーッ!』

 さて、今回の判定ものでありまするが、掲示板ぶるぅすちぃる殿から教えていただいた、次回予告自動生成システム(?)いきなり次回予告!でありまする。ただし!!ページ内に半角カタカナが含まれているので、UNIXやらLinuxやらで巡回されている方は要注意でありまする。しかし、何故にページ内に半角カタカナを………うーむ、深い(笑)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/09

お題目:iWeekよりの帰還
 帰着後二日も経って、ようやっと復活の兆しが見えてまいりました。
 まずはiWeekに御来訪頂いた皆様、関係各位に感謝いたしまする。

 んなわけで、色々あった訳ですが、今回は主に帰還ルートが豪快でした。大阪、梅田地下街近辺から神奈川小田原近隣まで、豪快に国道一号線を突っ走ってきたりした訳です(一部、渋滞を避けるために150号線など、平行して走る国道などを走ったり、豪快に迷ったりしましたが……)。
 大阪発は、だいたい7時頃。関東圏と異なるドライバーの運転の癖に戸惑いながら、京都を通過。既に真っ暗だったのですが、幾つかの寺社仏閣は、下からのライトアップで明るい時とは違った魅力がありました。もしかしたら、京都は夜見てまわるのがいいのかも知れませぬ。
 京都を抜けると、あっと言う間に大津。いつもは名神のサービスエリアから見下ろすのですが、今回は国道を走っていたために、琵琶湖は見えず、駅だけを見ながら通過。このちょっと手前のえらい細い道が、実は名神高速と平行して走っているとか、その側の線路が東海道線のものでなく、京阪鉄道のものだと気がついたりして驚いたりしてました。その後はこともなく甲賀〜亀山。四日市市に入ったら、工業地帯に迷い込んだらしく、変な匂いで苦悶。さらに1号線と23号線の分岐でモロに迷い、名古屋の渋滞を避けるためもあって、ここで一度桑名ICから東名阪自動車道へ。
 名古屋ICまで進んだのはいいけど、ここで問題が発生。ほとんど地図を見ていなかったために、名古屋ICから国道一号まで随分と距離があるのを見落とし、さらに県道6号を東に進んだため、更に状況が悪化(笑)。さんざん迷った末に、県道215号、国道155号を通って豊田市、さらに国道248を南下してようやっと国道1号に再合流。ここからは、ひたすら東進。連休明けでやけくそに速度を上げるトラックの群れに追い立てられ、曲がりくねり、轍が深く路面状況の悪い国道にドキドキしながら午前2時頃県境を通過。ヤケに時間の掛かった愛知を抜けて静岡へはいりました。
 静岡に入ってからは、もうそろそろ寝たいということで、東名との合流点を探す事に主眼をうつしたのですが、これがまた大変。浜名バイパスは22時から6時まで無料だということもあって(料金所を猛スピードで走り抜ける『毒』マーク入りのタンクローリーなど、恐ろしいものが見れました(笑))、運送用車両ばかり。眠い目をこすりつつ、浜名ICから東名へ合流。午前三時頃、遠州豊田PAに到着、そのまま車内泊となりました。
 翌日はだいたい八時に起床。岩田ICで東名を抜け、そのまま南下。国道一号が混雑している事と、海沿いを走りたかったことから、国道150号へ。
 10時半頃、御前崎着。ちょっと写真を取ったりしながら、さらに150号を東進。途中で県道31号〜県道355号と切り替えて更に東進(ディスカバリーパーク焼津って、何だったんだろう………)。で、海岸沿いの道を走れるものと考えていたら、ほとんどの道路が松の防砂林などに阻まれて、海なんかほとんど見えない状態。焼津はただの漁港だったのと、ここで生物(刺身など)を買っても意味がないので通過。国道150号に再合流……バイパスは使わずに現道を使用。石部海上橋の姿にびっくりしつつ、『いちご海岸通り』を通過(GW直後ということもあってか、ほとんど全てのいちご狩りハウスが休業してました)、三保の松原へ。ここでも、写真をとったりして、その後昼食。ここの蕎麦屋で出た桜エビのかき揚げがおいしかったり。
 国道150号が、国道149号に切り替わったあたりで、国道1号に移動。『道の駅・富士』でちょっと休んだ後、『道の駅・箱根峠』まで一気に進む。ここでは、やはり山である為か、いきなり天気が変わったりして驚いたり。
 その後は、芦ノ湖で国道一号を見失ったりした程度で無事、現道をつかって小田原に到着、小田原厚木道路を経由して国道246号。無事帰着と相成りました。ちなみに到着時間は五時半でした。

 総じて、国道一号及びその近辺は、市街地を通過するものが多く、運転する分には楽ですが、景色を楽しんだりする為に走るには、楽しいとは言い難い道です(拓けすぎていたり、妙に商売がかっていたり…)。この様な反省を元にして、次回はやっぱし中央自動車道沿いか、別のルート開拓を楽しむべきだという結論に達したりしたのでした。

 で、肝心のiWeekに関してなのですが、これは関連各紙のHPや、他のサイトさんの記事の方が面白いということで(笑)。そちらを参照して頂ければ幸いでありまする。管理屋もいろんな所の写真に写っていたりしてびっくりです(汗)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/07

お題目:帰還しました
 き、帰還しました………つ、疲れた………
 すんません、次回更新します………(バタリ)

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/02

お題目:えためろ(Eternal Merody)
 ………ダメだ………また全員に振られた………
 更にまた帰還失敗……
 関係するサイトを検索して色々読んでみたら、全滅+帰還失敗になるのはかなり珍しいらしい。拙者二回連続だぞ………しかし、悠久幻想曲ではランバ・ラルに言い寄られ(汗)、えためろでは全員に肘打ちを喰らうばかり。全員の相性は最高で、筋力及び体力は全開のパーティー。綾波(楊雲)や寝たきり(ティナ)すら、数発で熱血間族(カイル。間抜けなので、魔族改め間族)を粉砕するだけの体力を会得させたというのに、何故にここまで振られますか拙者は〜。
 ウィザーズハーモニーでは、犬をお供に冒険に出っぱなしだった拙者をしり目に、生徒会長をメロメロにするわ、吸血鬼をだまくらかすわ、あげくの果てにイチゴ男をモロッコにて強制改造(やめろ〜ショッカ〜)、露店風呂でひん剥くといった悪逆非道の限りを尽くした銀河皇帝によれば…

『無用の人材は切り捨てるに越したことは無いにゃ。ターゲットさえ落とせれば、パーティー内がどんな状況になろうと関係ないし、ボクのせいじゃないにゃ。』

 おいおい(汗)
 ………確かにそりゃ集団育成の究極の攻略方法かも知れんが、それじゃ、放置したキャラがあまりに不憫(泣)。
 で、どうしても納得行かないので、テレビの接続をPSに切り替えて、久々にレイ・クライシス………うーむ、没入(ダイヴ)しっぱなしで、瞬きの回数が極端に減ったらしく、気がついたら目がえらいことになってたのでした(^^;

 んなわけで、いよいよiWeekでありまする。いよいよgShot発進です。どうぞお楽しみに。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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