97/10/26 Ver0.01試験公開。
 この短評集は、太田出版の以下の書籍に関するものです。

 「スキゾ・エヴァンゲリオン」,ISBN4-87233-315-2
 「パラノ・エヴァンゲリオン」,ISBN4-87233-316-0

 尚、文中に気に障る表現があるかも知れませんが、あくまで
学術的探求心からなる表現ですので、御容赦いただければ幸い
です。尚、先にエヴァを全話見て、上記の書籍を読まないと何
を言ってるのか意味不明になります。


SE 0016「テレビって原則的にタダじゃないですか?」

 そういった意識が製作者をスポンサー寄りの番組作りに偏向
させ、結果として視聴者はザッピングするようになってしまっ
た。この悪循環に気付かないのだろうか。
 日本でも近年急速にケーブルTVのインフラが整いつつある
ので、体質改善しない限り地上波のTV局は滅亡するだろう。
現在既に「TVCMのフィルムの内容を向上させないと宣伝が
逆効果になる」という現象が見られる以上、無意味な連呼型C
Mに耐えられる程、視聴者の神経が太くなってしまうか、ある
いは本当に見たい番組はわざわざヴィデオ録画してCMを飛ば
すようになってしまうだろう。


SE 0018「どんどん作品が一人歩きしていて」

 そんな事を嫌がっているようでは、まだまだ”大人”では無
い。アニメの「作品」というのは本当は、放映された映像と視
聴者の”間”にあるものだと思う。十人十色の「エヴァ」が存
在し、其々「SFロボットアニメ」「カラバ密教物語」「ギャ
ルアニメ」「ホモの話」と解釈してもそれはそれで仕方ないの
だ。そんな事に責任を感じなくても生きて行ける。いや、責任
取る必要なんて無い。何かあったら責任転嫁してくる奴は必ず
いるのだから、正々堂々と「エヴァンゲリオン」であれば良い。
(TV放送である以上、放送コード等は守る必要はあるだろう
が、それはそれ)




SE 0019「自分自身に、何もない」

 確かにそうですね。
 ワールドカップサッカー、アメリカ大会の予選で負けたのも、
国民が即席で一つになろうとして失敗したイベントですが、J
リーグですら虚構の人気なのに一体どうしようというのだろう。
 逆に、国民が一体になったとしても、本当はせせこましい所
で内輪もめになるのがオチでしょう。TVしか無いからこそ「
エヴァ」が生まれた、で問題無いかと思う。


SE 0032「血を流さない人間は深いところまでわかってくれない」

 どんな仕事でもそうだろうが、スケジュールを敵にまわした
ら、勝利するのは難しい。
 それこそ、”血を流さない人間”はそういった時に「仕様変
更宜しく」とか言う訳ですね。それは「品質を落とせ」と言う
のと同義なのですが、仕事に占める芸術性が高いほど品質低下
はメンバーの志気を下げる事になる。
 メンタルな部分で言えば、同じ仕事に関っているメンバーが
同じ様に血を流していればお互いの事は比較的良く分かるよう
になっていくものだが、当然外部メンバーとの溝が生じてしま
う。


SE 0066「子供を殺さないでくれ」

 大月氏、庵野氏両名ともすっかり忘れているようだが、綾波
レイは第23話で死んでいる。
 士郎正宗氏言うところの「ゴースト」論を展開すると長いの
で割愛するが、要は、クローンに記憶の移植をしたらそれは同
一の人間なのだろうか。やはり、定量化出来ない「魂」か何か
があってこそその人間の唯一性があるのではないかと思う。
 尤も、実際に私の記憶を私のクローンに移植できたら他人か
らは見分けが付かないだろうが。


SE 0069「なぜロボットに少年が乗るのか」

 貞本版では満身創痍のレイがシンジ達の車を助けるというシ
ーンを以ってして動機付けの説明をしている。この方がスマー
トである事は言うまでも無い。
 TVでやるなら、1話ではシンジが乗らず、2話でレイが使
徒に勝てず、3話くらいで乗れば視聴者がじれて良いだろう。
ガンダムと同じに1話から乗せようとするから無理が生じたと
しか思えない。


SE 0083「僕はエヴァンゲリオンのパイロット、碇シンジです」

 私が「エヴァ」で嫌いなシーンの一つ。この話の冒頭での親
子対決を見事なまでに台無しにしたと思っている。レイや、ア
スカが使徒に倒された程度で何をやっとるかね、君は。男らし
くエヴァを強奪しろよ。この後サルベージされたらすっかり丸
くなってるし、君には失望した。
 こういった雰囲気には庵野氏の”戦争世代への憧れ”が如実
に出ているのかも知れないが、私が視聴者として期待していた
アムロ=レイ的な行動とは一線を画しているのは事実である。
そして、私はあの世代に対する憧れが無い。


SE 0088「それはイリュージョンなんだけど、幸せなんですね」

 幸福と幸福感の違いについての私の意見を参照。
 幻影でもいいから幸福感が無いと、精神的な安らぎ、安定が
得られないというタイプの人間は実在する。


SE 0093「死海文書」

 エヴァの設定では勿体を付ける道具として使われていた、世
界最古の聖書断片。
 余談だが、グーテンベルグ以降の聖書は中世教会が自分の都
合の良いように改竄してあると思われる為、当初の物とは相当
異なる可能性が高い。よって「ファティマ第3の預言」とは、
「聖書が偽物である事がばれて、ローマ法王が焚書の炎で焼か
れる」という内容であるかも知れないのだ。


SE 0095「二五話では大規模な戦闘シーンを予定していた」

 映画「THE END OF EVANGELION」の「Air」の事と取って良
いらしい。確かに、スケジュールが厳しければこの戦闘シーン
の製作は無理だろう。
 さておき、戦闘シーンが本当に必要だったか、本当にバンク
では駄目なのか、これについては意見が別れるところだろう。
しかしながら、実験的に行った最終2話バンク化計画に於いて
は新作カットを止め絵のみで構成してもストーリーが破綻しな
い事を確認できた。ただしこの場合、話の展開に制約が生じて
しまうのは否定できない。
 しかし、あの戦闘シーンを必要と考える事こそが庵野氏のア
ニメーターらしい所である。アニメーターであるからこそ、重
要なシーンには多くのセルを使った派手で緻密な「絵」が必要
と思う訳だ。(あるいは、自分より下手な動画マンが描いたセ
ルと止め絵で見せる事に耐えられなかったのかも知れないが、
それは考えすぎだろう)
 私などは「タイムボカン」に感化されて育ったので、シナリ
オさえ良ければバンクに対して全く抵抗感が無い。いくら何で
も「ドラゴンボール」の手法はやりすぎだとは思うが。


SE 0107「オイオイ一人で泣いて寝たんです」

 あのー、エヴァ終わったら「蒼きウル」やれるんじゃないん
ですか? それこそ旧ソ連の芸術家アニメーターみたいに全部
一人でやれば予算の心配もいらないし。お金が入ってくる目処
も立ったんだからガイナックスとは別個に自分の仕事、ライフ
ワークとしてやればいいんだし。
 逆に言えば、アニメーターとしていくら名を為そうが、孤独
感からは逃れられなかった、その事に対して泣いているのだろ
うか。


SE 0110「薬で見せれば地獄のあることを納得する」

 余談だが、仏教画で一般に知られている”地獄”のイメージ
は麻薬のバッドトリップ以外の何だと言えようか。
 仏教国インドが阿片の産地であることを忘れてはならない。


SE 0144「作画は誰がやるかわからないから」

 良い監督ならどのシーンをどのアニメーターに作画させるか
は自分で決めるべきだろう。やはり巧い人にメインキャラや重
要なシーンを、そうで無い人にはそれなりのシーンを。
 仕事をプロデュースするという事は他人を動かすという事で
あって、それは誰に、何の作業を、何時までに、どれだけの予
算で、仕上げさせるかという判断の積み重ねから成り立ってい
る。ガイナの方式では作業に対して大まかな割り振りしか為さ
れていないようだ。これは、柔軟性が有ることを示すと同時に、
個人の技量、志気に頼る傾向が有る事をさらけ出している。
 最近、コンピュータのプログラムでは多人数がブロック毎に
分担するという技法が一般的だが、この方式では”予算通りに
製作されたプログラム”は作れても”素晴らしいプログラム”
を完成させるのは難しい。


SE 0151「話は全然考えてません」

 いかにガイナックスが良いシンパを飼っていないか、を端的
に現わしている。シナリオライターという者は、設定と方向性
さえ与えればどんな細い骨に対しても肉付けしてくる。
 こういった連続物の場合、シナリオは捨てるほど作って、取
捨選択する方式こそが望ましい。頭から順にシナリオを作って
おきながら「時間が足りない」というのは愚かである。
 確かに、その人の感覚が「作品に入れるか」どうかで出来が
違ってくるの事は否定しない。しかし、全然考えてないよりは
遥かに進展することは明白であろう。


SE 0161「昨日、初めて見ました」

 プロデューサーという職業がいかに多忙であるかを如実に示
している。つまり、制作する為の下地作りや、局やスポンサー
との会議が仕事であって、作品そのものに立ち入る機会は意外
にも少ないのだろう。


SE 0172「歌はいいねえ」

 良し悪しは別にして、「キャラが立った」事は疑いようが無
い。あのルックスだけでは早々に忘れ去られたキャラであろう。
 歌と言えば「マクロス」「マクロス7」等の、希薄な根拠で
歌が重要な役割を果たすアニメをつい連想してしまい、つい、
「何かとんでもない(馬鹿な)シナリオが待ち受けているに違
いない」と期待してしまう。(余談:「歌が歌える」とは「役
に立たない」事を暗喩する言葉)



PE 0006「ファンの批評に対して攻撃的」

 別にファンに対して何を言おうが勝手だが、「蒼きウル」を
製作するための資金は彼等の財布から捻出されているという事
実だけは忘れないで欲しい。
 更に、ファンの中には製作者個人のプライベートにまで立ち
入って批判した者がいるそうだが(伝聞)、それはやり過ぎか
も知れない。尤も、特定の声優に入れ揚げてしまう製作者とい
うのも見苦しい上に問題なので、喧嘩両成敗(?)。そういう
所だけ”日本人”でどうするのだろうか?


PE 0096「ああこれでイケるって」

 そうですか? 私はそうは思いませんでした。
 ただ、「チャーンス!」では「ああ、CV下手でもキャラが
立ったからいいかもね」程度には思いました。(あのドイツ語、
全然駄目だと思ったのが大きい。演技よりも似非ドイツ語によ
って評価損しているかも。アニメだからって、そういったディ
テールで手を抜くよりは、一度もドイツ語を話さない方が良い)


PE 0096「レイが笑顔を見せると」

 リアルタイムで見ていた私の個人的感想だが、このシーンは
”感動的”どころか「決戦第3新東京市」全体を台無しにしか
ねない程の失敗だと思った。
 このシーンでは「笑えばいいと思うよ」と言われてもまだ笑
えないレイを演出するのが、流れとしては妥当だろう。貞本版
では笑ったとも笑っていないともとれる微妙な絵になっており、
その後の余韻のシーンに繋がる重要なポイントであり、名シー
ンである。
 レイが笑ったのを見て「なんだよ、こいつ本当はそっけない
振りだけで来週から普通のキャラに成り果てるのか?」と思っ
た人間があの当時どれくらい居たかは不明だが、ともかく、あ
の話でレイのキャラが立っていたのは出撃直前の「私には何も
ない〜絆だから」のシーンと、シンジに食事を持ってくる時の
素っ気無さのギャップでは無いだろうか。


PE 0099「僕自身はミサトにこだわってましたね」

 そうですか。「サービス、サービス」とか言う割にはキャラ
クターに魅力が無いので、庵野流の洒落かと思っていました。
魅力が無ければどんなにサービスシーンがあっても無意味なの
を逆手にとって遊んでいるのだとばかり……。(余談だが、機
動戦艦ナデシコのヒロイン、ミスマル=ユリカに対する私の評
価も似たようなものである)
 同じ年増なら赤木親子の方がよほどキャラが立っている。


PE 0111「ガイナは成金だ、金をバラまいている」

 逆よりは絶対に良いので、気にせずにバラまいて下さい。金
も出さない、仕事は厳しい、では業界が崩壊してしまいます。
金さえあればCG機材を実験的に導入したり、色々仕事上でも
遊べるじゃないですか。


PE 0122「片想いのまま、パーになるパターンばっかりです」

 昔、噂で「庵野監督が、声優のH嬢に振られて落ち込んでい
る」と聞きました。悪いマニアはプライベートに口を突っ込ん
で色々言うかも知れませんが、私は別にそういうつもりはあり
ません。仕事で知り合った人に惚れてしまうという事のどこが
どういけないのでしょうね?
 私が嫌うのは、例えば、露骨に「今度の主役がやりたかった
ら今夜俺の部屋に来るんだな」などと言う事かな。(アニメ業
界に限りませんが)
 実際、ド新人ならそうしてまで仕事が欲しいだろう。言うま
でもなく、これは業界を腐らせる原因になるので万一チャンス
があってもやらないで欲しい。


PE 0131「僕と一緒に墓の中ですね」

 これを世間では「言わない」と解釈しているらしいが、可能
性として「恥ずかしくて言えない」「イメージ的なものなので、
言葉になっていない」「その思想を自分でも説明しきれない」
とも解釈できる。
 どちらにせよ、シナリオ先渡し方式ならOKが出なかった事
は間違い無い。多くのファンは、作中に無意味なまでに大量に
散りばめられた謎を解明してみせる事を望んでいたのだろう。
個人的には「エヴァの謎だけ解明して、人類補完計画云々は第
2シリーズに持ち越すのでは?」と予想していた。無理矢理あ
のような終わり方をしてしまっては「次」が作れないので営業
戦略としては良く無い。


PE 0142「男にとって都合の良い女性が母性的に接してくれる」

 成程、そういった面でヒットしていたのかも知れない。
 ただ、個人的には「セーラームーン」は東映の戦隊もののパ
ロディとしての面白さを気に入っていたし、「ああっ女神さま
っ」は絵の緻密さとストーリーの意外性が面白かったのですが。
 確かに、水野亜美、ベルダンディともに「我が侭を聞いてく
れそう」なキャラクターである事は否定しません。いや、正に
その通りです。


PE 0167「みんな彼を神格化してるから」

 アニメーターとしては神格化しても良いでしょうね。人物と
して神格化して良いかどうかは全くの別問題だという事を理解
した上でやるなら構わないでしょう。
 もっとも、ハロー効果により「神格化された人は偉い人」と
大人のくせに思ってしまう未熟児が多い現状では、それを問題
であるとしておいた方が良いのは言うまでもありません。


PE 0180「次の話しかしないもんね」

 何故か次回作は実写の「ラブ&ポップ」であるという事なの
だが、映画「Air/まごころを君に」の実写シーンを見る限
りでは昔より下手になったとしか思えない。しっかりリハビリ
して、本領を発揮して欲しいものだ。


 取り敢えず、今日はここまで。文章の校正途中なので妙な誤字脱字、記述ミスがあるやも知れないが、ま、勘弁してくれ。