一口に「ゲーム業界」と言っても守備範囲が広すぎるので、取り敢えずアタリショックと、市場崩壊の何たるかを中心に進めます。

1.アタリショックとは何かを簡単に

 昔、ファミコン誕生よりも前の話ですが、アタリという会社がTVゲームで儲けていました。しかし、ある年のクリスマス商戦に商品(ソフト)を投入しすぎて大量の在庫が出来てしまい、TVゲーム市場は崩壊してしまいました。めでたしめでたし。

2.よく、問題点を考える

 実は、この後の状況までを冷静に振り返ると、これはゲーム業界に限った事では無く、旬を過ぎた商品の供給過剰による結果だという事が分かる。正月前にカズノコを買い占めて例年の倍の値段を付けても、正月過ぎたら例年の半値でも売れ残るのが実状だ。当時のゲーム機器の性能では機能的に限界になっていたにも拘わらず、売り上げグラフのみを信じて商品にしたのが問題だ。これは、その数年後に任天堂とセガがアメリカ市場でTVゲーム機器を成功させた事からも明らかである。

3.日本の状況を分析するなら

 崩壊の要因としては日本市場そのものの落ち込みがあるので、予断を許さない状況ではある。しかし、現在シェアトップのPS、2位のSSともにハード性能限界による崩壊はまだ先と言える。N64やFXに至っては、ソフト数が少ない為崩壊よりももっと深刻な問題がある。予想としては、どちらかというと開発技術の進歩から遅れた一部のソフトメーカーが潰れるのが先である。(現に、FC、MD、SFC時代に名が通っていたが既に廃業したソフトメーカーがある)そして、供給過剰による崩壊だが、これは有り得る。パイが大きくなっても大勢で分ければ取り分は減ってしまう。更に、ラインナップが充実する事により、暇潰しのハズレ覚悟でクソゲーを買う必要が無くなるので、質の低いソフトは初回から全然出ないという事態が起こり得る。もっとも、これは崩壊というよりは淘汰と言うべきか。

4.淘汰されそうなあれこれ

 市場が発展しようが衰退しようが淘汰は起きる。これからその渦に呑み込まれそうなのは誰だろうか。
・企画モノ
 芸能人や、その年のブームを当て込んだソフトは売れなくなるだろう。景気が落ち込んだ時に真っ先に切られる部類だからだ。また、あまりゲームをしない人は、有名なゲームと企画モノを選ぶので、その層による可処分所得が減少すれば影響を受けるのは必至である。
・キャラゲー
 昔なら、内容が駄目でもキャラクターの御威光で売れた感のあるキャラゲーだが、ユーザーの目が肥えてきている現在では、内容が駄目ならすぐに中古屋送りになってしまう。また、最近のブームの特徴として、ユーザー層毎にそのキャラクターへ求めているものが違う傾向があるので、万人に受けるゲームにアレンジする事が難しくなった。
・製作期間が短いもの
 ゲームというのは事務用プログラムと違い、単に早ければ良いとは限らない。この感覚を言葉で説明するのは難しいが、ともかく、遊んでいて楽しいという製品にするにはテストプレイが不可欠である。しかし、往々にして開発費を節約しようとしてテストプレイをお座成りにしてしまう場合が見受けられる。これではゲームとしてのバランスが取れない事になる。特に、仕様段階での見落としを是正するにはどうしても期間がかかってしまう。営業サイドも発売日変更に対しては難色を示すだろう。

5.ビッグバンかというと

 実はコンシューマ市場では1995年の次世代ハード覇権闘争開始がビッグバンであり、今はその流れにのっているに過ぎない。それでも、それまでのぬるま湯から激流に放り出されて溺死した者もいる。しかし現在の状況は、全体としては安定期にあると言える。
 次にビッグバンが起きるとすれば、それは次の次世代ハードの覇権争いが表面化した時であろう。勿論、現行機種が勝利してしまう場合はビッグバンとは言わないだろうが。
 時は流れ、パソコンの価格は下がり、景気は先行き不安定で、一寸先は闇である。ゲーム業界のビッグバンよりも大変な事が新聞記事になる日が多い中、自ら矢面に立って大博打を打つだけの度胸が無ければ意図的にはビッグバンは起こせない。しかし、座して死を待つ身にある誰かがそれをしないとは限らない。明日は明日の風が吹くのだ。
<了>