趣味として同人活動している人には面倒な話でしょうが、少し聞いてくださいな。
論文リストに戻ります。

1.大前提

 ここでは、あくまでも現行の日本の法律を遵守する方向の話をしています。「法律そのものが間違ってる!」とか言われても、私一人でどうにかなる話ではありませんし、論点が違います。

2.納税の義務

 等しく日本国国民は納税の義務を負っています。(納税額について条件分けされているので、等しくという言葉には若干語弊を感じるが、それはさておきます)
 よって、あなたが何らかの活動で得た金銭等の利益については、その全てを税務署に報告し(申告と言うようだが)税金を納めないといけません。これを怠ることを「脱税」と言います。
 自分の学生時代を振り返ってみますと、納税の義務について教わった覚えはありますが、脱税するとどれくらいの罪になるかは授業で習った記憶がありません。アマチュア無線の「法規」のように重要なものについては罰則の内容を教えておくべきでは ないでしょうか。
 さて、ここで問題です。納税というのはその利益を得た経緯について倫理を問うものではありません。よって、悪徳商法や、麻薬を売った代金であろうとも、額に汗して稼いだお金であろうとも、どちらも申告しなくてはなりません。ところが、実際に悪徳商人や麻薬の売人が正直に申告するとは思えません。ここに不公平感が出てしまいます。
 ともあれ、脱税は犯罪ですので、同人誌の売り上げが年間通して10万円を超えたのではなかろうか、と思うようになったら、必ず売り上げと経費を記録して税務署に相談に行きましょう。これはあなたの年齢に関係ありません。学生でも同じです。

3.実際の方法

 いきなり「記録をしろ」と言われても困惑してしまう人もいるかと思うので、方法について簡単に説明しておきます。要は、家計簿と一緒です。(市販の家計簿専用ノートで記録しても良い)
・収入の記録:即売会、通販、書店卸し、原稿料等の収入に関して日付、金額、誰から支払を受けたかを記録します。即売会の場合は相手は複数ですのでその日の売り上げ冊数で良いでしょう。また、領収書を要求された場合に応じられるように市販の定型領収書を用意しておきましょう。
・支出の記録:即売会の参加費、本の印刷代、宅配や郵便等の輸送経費、ゲストへの謝礼、画材等、同人活動にかかった経費を記録します。これは、出来るだけ領収書を貰いましょう。証明が簡単になります。
 あとは、これらを揃えて相談に行くだけです。自分の住んでいる地区の税務署に相談窓口がある筈ですので、そちらで説明を受けましょう。

4.まとめ

 税務署の方も皆がこんな申告したら処理できないので、売り上げの多いサークルでなければ納税は免除されます。(控除と言うようだ)
 つまり、年間売り上げ1万円のサークルの相手をすると、手間と経費で赤字になってしまうという訳ですね。一部で「大手サークルが狙われている」という妙な噂があるようですが、それはそうです。狙うも何も、収入が多いからこそ申告させる訳です。まぁ、経費の多少により納税額は当然変わってきますから、売り上げの順位と税金の順位は一致しない場合もあるでしょうけれど。
 大手サークルの皆さん。計算が面倒で嫌になるくらいの量になったら、パソコンと表計算ソフトを購入しましょう。明らかに日常的に必要とされる場合、経費として認められるようです。

5.論説

 さて、説明的な部分が終わりましたので、個人的な意見主張をさせていただきます。
「著作権等との兼ね合い」
 同人誌の場合、商業誌より法的な面で色々楽が出来ます。例えば、同人誌の中で特定の個人を誹謗中傷したからといっても、名誉毀損で訴えられて裁判で負ける可能性は商業誌の場合よりも低くなっています。そう、あくまでも公共性が薄い媒体だから です。また、モロ出しエロエロな絵を描いたところで、即売会や書店で売れないだけで、いきなり逮捕という事はありません。TVなら、そんな番組を作って放送準備をしただけで放送免許が停止されるかもしれません。
 また、著作権についてもファン活動の一環である場合、版権元が大目に見てくれる場合があります。雑誌で勝手に写真を使って、しかも名称を間違えたりしたら大変な事になります。(表沙汰にならないように工夫されているようですが)同人誌ならどんなに馬鹿な間違いをしても徹夜のせいだと思って貰えます。
 それだけ甘い条件でやっているのだからこそ、超えてはならないラインというのもあります。言葉で伝えるのは難しいのですが、このボーダーラインは是非ともしっかりと認識して頂きたい。それさえ守っていれば「同人誌」としての範疇に居る事が出来るでしょう。
「金銭的な問題」
 同人誌を頒布するのに、どうしても元手が必要です。次回作の為の回転資金も必要でしょう。しかし、同人誌である以上、利益を追求するという姿勢では、妙な事になってきます。売り上げも収益も良い場合、商業誌と何が違うのか分からなくなってしまうのです。
 同人誌はあくまで趣味的な意味合いが強いからこそ「フリーマーケット」に近い分類をされています。収益優先の場合それはベンチャー企業と区別出来ません。企業であるなら、守るべきラインも変わってきます。
 道楽で、収益性を無視するなら話は違いますが、須らく、利益を追求するという事は、その行為に重い責任を伴います。税金はあくまでその責任の一つでしかありません。
(以下、次回アップロード) ver0.10 1997.12.10 kj−