公開メール  どうやらお話を聞いてくれそうなので、返事を書いてみましょう。

 最初に断っておきますが、
喧嘩をするつもりはありません。
 討論をするという前提で書いています。喧嘩だと結末が不毛なんですよ、私にとって。 

1.お願い

 カタログ掲載の漫画ですが、C52の回は字が小さいので困ります。ポケモン事件じゃないですが、目がチカチカしてきて頭痛がするので、読むのを諦めました。「拡大コピーして読め」とかいう事でしたらお断りです。読まれることを拒否した掲載物に意味を感じるほどお人好しでは無いので。
 という事で、発端となったC51程度のサイズかつ丁寧な表現でお願いします。 (C53くらいなら、まぁなんとかという程度ですね)

2.認識論

 1日に10万人も来るイベントですから、誰もがもうその全体を細かく見渡すのは不可能になっています。その様な中で、お互いが見た範囲での認識が異なった場合、それだけで相手を理解できない危険があります。例え同じ物を目の網膜に映したとしても、脳においてどの部分を優先情報であるかを判断するのは各個です。あなたが体験した「コミケット」は、あなたの中にしかありません。他の10万人にも似たような「コミケット」があるでしょうが、決して同じではありません。
 細かい説明をすると長くなるので簡単にまとめます。「認識が大きく異なった場合、それは共通の土俵では無いので、議論が噛み合わない」よって、その先に進むのは無理です。

3.個別検証

 ともかく、認識を共通化し、情報を整理することから始めましょう。
・「スタッフにまかせておけばいいんだ云々」(C53)
 誰が言ったのか知りませんが、これは私は全く認識していませんでした。そもそも大分前から私の知る範囲では「サークルの列は極力サークルに任せる。人手が足りないサークルは列整理によって売り子が減ってしまうようなら手伝う。開場直後のダッシュ等の突発的事態への対処を優先させること」という指示が為されています。確かに、こんな事を言われておいてアレではサークル側も困ってしまいますね。
・「カタログに意見を出せばいいのに云々」(C53)
 いや、載せてくれるのなら出しますけどね、そもそもカタログ編集長の謝罪が載らないから駄目でしょう。(C51カタログに一方的な意見を掲載した件について、スタッフ側の意見を載せる事を要求、かつ、あれだけ刺激的な内容を何の通告も無く掲載した責任を追求したがなしのつぶてである。同人誌「コミケットの歩き方」に意見を掲載したのはそういった経緯です)
・「良いスタッフもいれば悪いスタッフも云々」(C53)
 その通りですね。全員がいいひとだったら、カルト宗教団体よりも不気味に見えるかも知れません。ともかく、あの事件をきっかけに勤勉なスタッフであった私は影をひそめ、平均点な(あるいはそれ以下?)スタッフになってしまいました。これは全面的に新田氏の所為という訳では無く、事件に対する扱いに因るところが大きいです。この現状が健全であるとは流石に言えませんので、なるべく早期に解決を計りたいですね。

4.方向性

 C53の抽選倍率をご存知でしょうか。単純倍率で約2倍です。(諸々の事情があるので、実質3倍ではないかと推測しますが)米沢代表は「全部のサークルを参加させたい」旨をよく発言されている訳ですが、そうすると冬コミを4日やらなければならない計算になります。(夏コミは申し込みが増える傾向にあるので5日か?)この方向性を正しい、あるいは目指すとすると、当然ながら色々な問題が出てきます。
・有明ビッグサイトを4日(準備を入れると5日)借りられるのか?
 単純に考えれば予約を入れればいいだけの話です。しかし、コミケットは学校や職場の休みに開催するという不文律を守るとすると、難しくなってきます。現に、準備の日に他の企業が先に入っていて設営が遅れる館があります。
・人手は足りるのか?
 殆どのスタッフは(有)コミケットの社員ではありません。よって、参加は各自の職場等の休みでないと厳しい状況にあります。参加費を値上げして社員を雇い、スタッフとして養成しておけば別ですが、それを望んでいるのでしょうか。あるいは、コスプレを全面禁止にすればその分の手間は無くなり、多少なりとも楽になるでしょう。問題解決にはそういった「犠牲」を強いなければならない状況にあります。一つの問題を解決するには他の様々な要素を検討する必要があるのです。
・サークル参加者、一般参加者は何を願っているのか。
 C52(夏)は3日開催でした。果たして状況はと言うと、1日目が普段と大きく異なりました。一部は大混雑したものの、かなり閑散とした状態だったのです。こういった状況を見てしまうと、例え4日開催しようとも、土日(あるいは人出の期待出来る日)に申し込みが集中するでしょう。それでいいのでしょうか。
 勿論、良いのかも知れません。ただし、悪いかも知れない事をお忘れなく。
・ダミー対策が先ではないのか。
 ダミー対策は大切ですね。ダミーの所為で、本当に活動しているサークルの発表の舞台を奪う事もあるわけで、私の責任では無いのに心苦しいです。まぁ、コミックマーケットだけが同人誌即売会では無いにしても、参加したい人の気持ちは良く分かります。
 さておき、ダミー対策ですが、意外とこれは難しい問題です。単純に考えれば「二重の申し込みを排除する」だけで良いのですが、実際には「早く入場したいだけで売り物は嘘」や「全く他人の名前を騙って申し込む人」等も排除しなければ意味がありません。しかし、本当の病気欠席や、兄弟や双子の参加者(同一住所で別名)もいます。偽名対策は、いっそ申込書にパスポートの番号でも入れてもらうのが確実かもしれませんが「売るつもりは無い」場合は、当日チェックするまではどうにもなりません。新規サークルに関しては、申し込み段階から見本誌を提出させるべきでしょうが、これは事務処理の増大を招きます。(個人的には良い方法だとは思うが、双方に費用負担増加となる)
 ダミー対策は根気良く継続するのが一番の対策でしょう。

5.教育と社会

 スタッフだけでなく、一般参加者もサークル参加者も、同じ日本の社会の一員です。(極希に海外の参加者もいらっしゃいますが)よって、社会の秩序やルールは最低限理解し、遵守可能という前提でないと人間が集合して何かを一緒にするのは困難です。しかし、実際には参加者には小学生や中学生、はたまたお年寄りの人までいるのです。例え自分がルールを守っているつもりでも、ジェネレーションギャップは確実にあります。また、全国から集まってくるが故に、地域差も無視できません。
 日本の義務教育制度により、読み書きは皆教わりますが、公衆道徳や常識というのは画一化されていません。厳しく統制された社会は、なんだかSFの近未来物のようで恐怖ではありますが、現実の社会というのは非常に雑多に出来ています。確かに画一的な層も存在しますが、コミックマーケットのような場にそういった人たち全てが来ているのではありません。1日に10万人以上が来るとは言え、それは日本の人口の1%にも満たないのです。全体の一部は全体を縮小したものとは限りません。
 ともかく、自分が「常識」と思うことであっても、ある区切られた「村」(小さい社会)では通用しない事があります。そして、通用しない=正しくない、ではありません。

6.コミケット改造計画

 さて、ある不満を解消するには、原因を改善するか、憂さ晴らしをして諦めるか、が一般的ですね。今、消極的態度は討論する意味が無いので、積極的態度について考察してみましょう。
 一般的に言えば、金さえあれば問題の殆どは解決します。
 拝金主義みたいで厭なのですが、事実でもあるので続けましょう。莫大な資金さえあれば、地域住民の迷惑にならない場所に巨大な会場を造り、印刷所をその近所に誘致し、社員に十分な給料を払って年中無休でコミックマーケットを開催するのも可能です。まぁ、これは夢物語ですが、現実には資金があればあるほど理想に近付ける事は可能です。
 資金以外の問題としては、対外的なもの(警察、消防、PTA等)と、参加者のもの(モラル、人数等)と運営側のもの(準備会等)に分けられます。
 このうち対外的なものについては平和協調路線が現実的です。対立してしまったら抗争は避けられません。得な事が殆どありません。ただし、一歩進めて「法律や社会自体をこちらの都合の良いように変えてしまう」という政治路線も無視はできません。現にゼネコン等がこの方針で莫大な利益を上げた実績は疑いようの無い事実です。
 次に、参加者のものですが、これは、参加者が現在の規模、またはそれ以上になる限りは学校教育をしっかりとして貰うのが一番でしょう。今来ている人達だけが減りながら来るのであればコミケットカタログ等でのアピールもそれなりに効果をあげるかも知れませんが、実際には若い人が次々に参加し、何かのきっかかで引退するというのが多いと思われます。その何回かの参加をする人の面倒まで見れたものではありません。
 そして、運営側のものですが、これは銀行の様に外部監査機構を機能させるので無ければ、運営者の資質に頼るしかありません。また、ボアンティアでは責任を負う訳にはいかないので、会社組織でやるべき事というのもあるのです。
 どれを見ても一朝一夕には片付かない問題ばかりです。しかし、これは日本全体の問題では無いので、コミケット参加者という狭い枠の中の大勢がやる気になれば実現可能ではないでしょうか。

7.アマチュアリズム論

 さて、税金問題に関連して再燃しているアマチュアリズム問題に関してです。
 同人活動というのは本当に完全に趣味なのでしょうか、それが問題です。実は即売会において本などを頒布するという行為自体がアマチュアリズムからするとかなり怪しい事になってきます。この段階でアマチュアリズムを貫き通そうとすると原価以上の値段を付ける事は許されません。しかし、原価とは何でしょうか。税務署の判断がどうであれ、実際の原価は文房具、資料、取材、スペース代、印刷、運搬等の費用を指しますが、実際に計算をしてみるとそう単純にはいきません。運搬に自家用車を使った場合、その減価償却費はどの程度と見るべきかに始まり、境界線が曖昧な物が多数あります。
 あなたが同人誌を買う側だとしても同じです。中には無料配布本もありますが、多くは市販の本のからすると高額なものです。買う側は製作側の原価問題に拘わらず安くて良いものを選択する権利が有ります。あなたが買った同人誌は本当に市販の本より高品質低価格と言えるでしょうか。また、あなたが無料配布で貰った本が先着数名限定だったとします。それをある金持ちが「100万円出すから譲ってくれ」と申し出てきました。あなたが本当にアマチュアリズムを貫き通すのであれば、最小限の手数料以上を取ってはいけません。しかし、誘惑に勝てるでしょうか。
 こうした問題を解決する可能性が有る物がインターネットです。設備投資費用がかかるのと、日本では通信費用が高いのがネックになっていますが、インターネットは同人メディアに向いていると言える点が多くあります。
(脱線が長くなったので、この部分は後日別途掲載)
 ともかく、アマチュアリズムは一般参加者にとっても見つめるべき問題なのです。

8.襲い来る魔の手

 コミックマーケットがアマチュアリズムを貫こうとしても、そうはさせじと悪魔(のようなもの、か)が誰かの心の隙間に入り込んで邪魔をします。
(詳細説明は後日別途掲載)
・海賊版同人誌
 近年、有名サークルの本を勝手に印刷して販売する行為が見受けられます。これは、有名サークルの同人誌にそれだけの価値がある証拠ではありますが、海賊版を作って儲けようという欲望に駆られたに違い有りません。
・ブローカー
 最初から投機目的で同人誌を買う人を指します。手数料程度ならまだしも、いきなり数倍の値を付けて投資の回収を計っているようです。買う側にも問題が有ります。
・編集プロダクションもどき
 最初から儲けのみを追求して同人誌を製作する奴がいます。原稿料で人気作家を集め、連絡先はダミー、売り逃げて税金は払いません。単に商業誌の脱税工作ですね。これは買う側からはなかなか分からないでしょう。
・レアアイテム売買
 同人誌を売っているように見せ掛けて、レアアイテム(希少テレカ等)を販売する輩がいます。古物売買には免許が必要ですし、同人誌即売会は実はフリーマーケットとは異なりますし、大抵は利益目的の高額取り引きになっているようです。

 なんだか厭になってきましたが、ともかくちょっとした欲望から様々な問題が発生しているのです。特に、上記の中には犯罪行為もあります。自分が普通に同人活動していたとしても、いつ巻き込まれないとも限りません。

9.まとめ

 長くなりすぎた感がありますので、一旦まとめます。
 要は、奇麗事だけ並べても、もっと腐った病巣から手を付けない限りは同人誌業界そのものが良くなる事は無いという事を分かって欲しいのです。細かい事はその先、しっかりとした土台が出来てから直せばいいじゃないですか。土台が駄目ならどんなに足掻こうが結果は崩壊しか無いと思うのですが。
 1998/02/27

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