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人は何故マルチに萌えるのか

1.パソコンに措ける幼女キャラの歴史

 今でこそ「ヘアヌード全盛」などという呑気な事を言っていられるが、そもそも宮沢りえが写真集「サンタフェ」で脱ぐまではヘアは御法度だった。猥褻かどうかの基準は「陰毛」の有無であったのだ。つまり、逆に言えば単なる割れ目は全くのフリーであった。当時出版されていた写真集の一部にその片鱗を窺がう事が出来るが、つまりは幼女ポルノだったり、剃毛だったりした訳だ。
 一方、パソコンは大昔には存在しない。1980年頃ようやくカラー画面でそれなりの「絵」として見れるレベルの商品が出てきた。(現在のパソコンに比べれば数段落ちるのだが)こうして、パソコンを利用したポルノグラフィーも産声を上げた。勿論、ヘアは御法度であるが、パソコンの機能向上に伴ってその技術的品質は向上していった。本来Windowsから利用するはずのビデオアクセラレータをDOSゲームで使ったエピソードからも、その向上心は手に取るように分かる。そして今、そこそこの投資で大画面ディスプレイに24bit(1600万)もの色数で表示する事も可能になった。
 ともあれ、「ヘアが御法度なのだから」という名目もあるが、少ない色数で絵を綺麗に見せるにはアニメ調かトーンを落とすしか無い。こうした流れの中で幼女キャラは存在し続けた。よって、PTAに叩かれたり、国際的に実写に規制がかかったりと、様々な事件が起きた。たかが画面の中のファンタジー、しかし、人の欲望が強いものは多くの問題を抱え込む事になる。

2.Leafキャラの歴史

  • 「DR2〜ナイト雀鬼」
     デビュー作。良く知らない。雑誌のレビューからも脱衣麻雀だという事くらいしか分からない。
  • 「FILSNOWN」
     第2作のRPG。
     キャラクター年齢的には高校生から30歳程度だろうか(設定年齢では無い)。魔族系キャラに少々獣が入っている他は別段妙なポイントは無い。
  • 「雫」
     ビジュアルノベル第1弾。
     キャラクター年齢は中学生から大学生程度(設定は全員高校生)。舞台が高校であるので年齢的に無茶はしていない。従来のステレオタイプ「巨乳」「眼鏡娘」の他に 「電波系美少女」という新ジャンルを確立した。
  • 「痕」
     ビジュアルノベル第2弾。
     設定年齢は高校生から20代前半だが、キャラクター年齢は小学校高学年から30歳迄。肉体的に小学生であっても設定が高校生なら社会的倫理上は問題無いという理屈を確立した。エヴァンゲリオンの綾波レイ同様「無口」キャラも受け入れられる事を証明した。自分に甘えてくる「妹」キャラを成功させた事も重要なポイントである。
  • 「To Heart」
     ビジュアルノベル第3弾。
     設定年齢は全員高校生だが、キャラクター年齢は小学校低学年から30歳と幅が広い。ロボットなら年齢は何歳でも倫理規定に関係無いという理屈を確立した。「無口」キャラは全く喋らなくなり、「幼馴染」キャラの描写に成功している為、物語の時間的深度が増し、うそ臭さがかなり抜ける効果が出ている。

    3.HMX-12マルチの分析

  • 型式番号
     量産型マルチが型式番号HM-12である事からも分かるように、HandMaidの12号機である……というのは建前で、12という数字に注目しよう。これは年齢を暗示(意味)している(セリオに付いている番号は16)。
  • 身長対比
     雑誌に掲載された設定資料の段階では身長が他のキャラとさして変わり無いかのように見えるが、実際のゲームでは"小さい"事が強調されている。葵程度以下と思われる。
  • 服装
     一応、高校の制服を着ているが、重要なポイントが2個所ある。一つは"余った袖"であり、もう一つは腿まであるハイソックスである。前者は高校の制服を幼稚園のスモックにする効果があり、後者は背が低い事の強調だけでなく、ガーターベルトで留めるような高級ストッキングをイメージさせる効果がある。
  • 清掃機能
     大抵の学生は掃除が嫌いだろう。この固定概念により、人の嫌がる事を進んで行うという献身的な性格を表現している。
  • なでなで
     現実世界の女性がやれアレが欲しいだのコレが欲しいだの言うのに対して、マルチは撫でるだけで良い。こうしたリーズナブルな要求は安心感を与える。

  •  古来、日本人は「物にも魂が宿る」と考える民族だった。よって、例えマルチの感情や反応が全てプログラムされたものだとしても、そこには魂が宿る筈と考えるのは自然である。魂が宿ってしまえば人間と同じである。
  • 試作品
     量産された物は複数存在するが、手作りの試作品は唯一無二である。つまり得難く、貴重で、独自な物である。芸術品同様、究極のレアアイテムである。
  • 耳あて
     正しくはセンサーなのだが、耳あてにも見える。これはロボットである事の記号のようなもので、ハイテク感をよく表わしている。また、ウサギっぽいイメージも出している。
  • 夜のお相手
     流石に他が低機能な分、ここには心血が注がれて開発されたようだ。量産型が露骨にソレなのを見ればよく分かる。

    4.ロボット萌え萌えSF

     実は、マルチ以前にもメカなのに萌え萌えな話はあった。いや、マルチはそれらの良い所を結晶させた作品とも言える。以下、元ネタと思える作品を紹介する。
  • 「すもも」天沼俊(漫画)
     少年ジャンプで1985年頃だかに10週だけ連載された漫画。孤独な美少女の家にやってきたイタズラなお掃除ロボットが巻き起こす騒動を描いている。ネタバレで申し訳ないが、話のラスト、不良品としてロボットがスクラップにされてしまい、なんとか復元するのだが…というエピソードで終わる。(くりそつ)
  • 「お紺昇天」筒井康隆(小説)
     筒井氏がまだSF作家だった頃の作品。未来、車には人格のある自動運転装置が付いていた。その車が寿命でスクラップになる日の、持ち主との心の交流を描いた作品(「ナイトライダー」よりもはるかに先)。"お紺"とは車のニックネーム。"お紺"の性格が世話女房的服従型なのが萌え萌え。
  • 「ナイトライダー」(TV番組)
     人格を持ったコンピューターを搭載したドリームカー「ナイト2000」(愛称KITT)と主人公の犯罪捜査ドラマ。特殊なターボによりある程度の距離をジャンプ出来るのだが、主人公が無茶をすると「(加速の)距離が足りなくて危険です!」などと気遣ってくれる。
  • 「FUJIYAMA・MAMA」池田恵(漫画)
     少年キャプテン連載だったかな。死んだ母親の替わりに家政婦ロボットがやってきて女の子と喧喧諤諤を繰り返すコメディ。
  • 「究極超人あ〜る」ゆうきまさみ(漫画)
     少年サンデー連載でした。高校に間抜けなアンドロイドが突然やってきてドタバタを繰り広げるコメディ。
  • 「万能文化猫娘」高田裕三(アニメ他)
     猫をベースにした女子高生アンドロイドがドタバタを繰り広げる物語。
  • 「KEY THE METAL IDOL」(アニメ)
     ロボット兵器を開発する悪の巨大企業「蛙杖重工」と運命的に対決する少女キイの物語。謎の生体部品"ゲル"の設定が面白い。
  • 「攻殻機動隊」士郎正宗(漫画他)
     近未来、生身の人間を補助する為の機能としてのアンドロイドパーツが格段に進歩した世界、特殊警察(政府直属の特別組織)として犯罪者と闘う草薙素子とチームの物語。人工知能等に関する綿密な設定が素晴らしい。

     その他にも元ネタらしき作品を見つけたら是非ともメールして欲しい。また、これらの作品はそれぞれに良い所があるので、是非とも知って欲しい。

    5.シナリオ検証

  • 3月迄
     マルチは出てきません。同様に、1年生の葵と琴音も出て来ません。ここがかえって「一期一会」を強調し、シナリオ全体を引き締める設定になっています。
  • 4月第1週
     春休みと始業式程度しかありません。他のキャラも攻略が進んでいないと会えません。
  • 4月第2週
     ついにマルチが登場します。「荷物運び」「充電中」などキャラクター紹介的なイベントですね。
  • 4月第3週
     「犬とクッキー」「仰げば尊し」などの心の交流と、「もう帰っちまうのか」なメインイベントが待っています。
  • 4月第4週
     攻略しなかった場合、日付は進行しますがマルチは登場しません。マルチを先にクリアして他のキャラを攻略していると寂しさひとしおですね。
  • 数年後
     フラグが立った場合、ここへ進みます。大学生になった主人公がついに量産になったマルチと、彼女の遺言通り対面するのですが…。

     1番人気のマルチですが、絵だけでそうなったのでは無いのは明らかです。シナリオでも大分ポイントを稼いでいます。
    「別れ以外に辛いイベントが無い」
     他のキャラのシナリオでは、いじめ、犬の死、強○など、厭なイベントが結構あります。「別れ」というのも辛い事は確かですが、他に比べてソフトになっています。
    「長瀬さんが出ている」
     リーフファンならお馴染みの「長瀬」が出てくるのはこのシナリオだけです。サブキャラが生きているとメインも引き立ちます。(セバスチャンまで含めると来栖川シナリオにも出てきます)
    「比較論」
     他のシナリオには欠点が有り、それと比較すると良く感じるという消極的な方法ですが取り敢えず。
     神岸あかり:攻略前の「失敗」が厭。
     松原 葵 :練習の日々が単調。対決シーンが長すぎる。
     宮内レミィ:蛇足が酷い。
     長岡 志保:萌えるイベントが無い。
     保科 智子:前半、主人公が嫌われ過ぎ。
     姫川 琴音:主人公がストーカーみたい。Hも強引すぎ。
     来栖川芹香:ラストが弱い。
     雛山 理緒:論外。話が短すぎる。

    6.暴走する若者達

     さて、巷の若者が「To Heart」によってどれだけ暴走したかを記録しておきましょう。
  • 同人誌
     とても実売20万本とは思えない程、沢山出ました。人気はやはり雅史…じゃなくてマルチです。ロボットなのでやりたい放題のヤバい物もあります。
  • グッズ
     本家リーフから「ぬいぐるみ」「下敷き」等が出ていますが、この他にも探せば「抱き枕」「マルチの耳あて」「フィギュア」「ピンズ」等が出ています。
  • 「初音のないしょ!」
     リーフが出したミニゲーム集ですが、本来はこの手のものはコアなファンの一部が買う程度でした。しかし、これはかなりの人がゲットしたようです。
  • カラオケ
     "Prologue21"に、主題歌の「Brand New Heart」が入りました。エロゲーの主題歌が配信されるのは前代未聞でしょう。(主題歌があるエロゲー自体、稀ですけど)
  • 雑誌メディア
     残念ながら親爺系メディアには無視されているようです。しかし、コアな雑誌での扱いは非常に頻繁で、比較的真面目なパソコン誌にも時々顔を出します。尚、「コンプティーク」の表紙をマルチが飾りました。
  • 映像化
     '98年2月現在、していません。ちなみにアニメ化した場合、ラスト前のHシーンさえ削ればなんとかTV放映できそうです。

    7.総論

     とにかく、「To Heart」をプレイした事が無いのであればあなたのWindows95マシンはその役割を半分しか果たしていないと言っても過言では無い。自分のペースでしっかりと文章を読みながら、音楽を聞きながら味わって欲しい。
     マルチはあなたのドジな妹であり、一生懸命なメイドであり、包容力を持った母であり、征服欲を満たしてくれるお姉さんであり、心温まる恋人である。あなたのハートにマルチの「想い」が届きますように。