ポケモンとは何か

ポケモン論

1.まえがき

 「ポケットモンスター」通称「ポケモン」について論じます。ポケモンが好きな人にはかなり厭な内容ではないかと思うので、読まない方がいいです。

2.携帯用ゲームの歴史

 さて、人類に限らず猿やイルカも追っかけっこなどをして遊ぶらしいですが、道具を使ってまで遊ぶのは人間だけかと思います。ともかく、手に持っていける程度の軽い物で複数の人が遊ぶというと、トランプでしょうか。さて、「紙」という媒体のおかげで軽くて情報の多く詰まった物を利用できるのですが、それをさらに進めたものがマイクロコンピュータの技術です。半導体技術の進歩により、ある決められた複雑な計算を機械に委ねる事が出来るようになったのです。こうして携帯用LEDゲーム機が誕生しました。それは見た事の無い人に説明するのは難しいのですが、それは盤面に配置された複数のLED点灯によって状態を表示するゲームでした。さて、やがてこの表示装置に液晶ディスプレイが使われるようになりました。当時、電卓の表示装置にも使われるようになっていた液晶ですが、これはLEDよりもコントラストが低い替わりに、表示する画素の形状にかなりの自由がありました。こうして人間などをあらかじめ液晶画素に用意しておく事でゲームの表現力は飛躍的に高まり、この分野で勝負を掛けた任天堂は「ゲームウォッチ」シリーズで大ヒットを続けます。しかし、このブームも一巡するとその後、家庭用ゲーム機などに圧されて衰退してしまいました。再び携帯用ゲームが脚光を浴びるのは家庭用ゲーム機が一巡した後です。ゲーム機メーカーの数社が携帯用ゲーム機を発売し、「テトリス」の版権を得ている「ゲームボーイ」が他の「LYNX」「ゲームギア」等を制して覇権を握ります。その後コンテンツの役不足もあり見放された感のする時期もあったのですが、超小型ゲーム機「テトリン」の発売により再び注目を集めます。後追いでこのブームを食い取った「たまごっち」が大ヒットし、様々な海賊版や亜流品を産み出す事になりました。一方、衰退期に入ったかに見えた「ゲームボーイ」にビッグウェーブが待っていました。それが「ポケットモンスター」です。ゲームボーイの通信機能を時々使うという消極的利用法がかえって功を奏し、子供のコミュニケーションツール(トイ)としての地位を確立し、メディアミックス展開も当たった為、この分野にしてはかなり息の長いヒットとなります。現在(1998.04)、派生商品の万歩計「ポケットピカチュウ」も人気商品になっています。

3.ポケモン分析

 ゲームを企画した田尻氏は「昆虫採集をテーマにした」という発言をしています。しかし、製作者の意図なぞ分析には屁の役にも立ちません。実際にプレーヤーが何をどう感じているかが重要です。
・集める
 ゲームでは、モンスターを集めます。味方が次々増えていく桃太郎方式ですので、プレーヤーにまるで人徳が有るかのような錯覚を起こさせ、いい気分にさせています。収集は動物にも見られるので、本能なのでしょう。
・育てる
 味方になったモンスターを育てます。パソコンでも人気の育成シュミレータの要素です。何かを飼育するというのは子供に様々な事を教えてくれます。また、自分が愛情を持ったものを可愛がる=育てる、と解釈すればこれも本能が作用していると言えます。
・交換する
 育てたモンスターを交換します。流通経済を意味しているのと、交渉術の練習になります。
 さて、これらを慎重に見直しましょう。すると何かに似ている事に気が付きませんか? そう、植民地支配です。
・集める
 奴隷を集めます。多少の抵抗はあるでしょうが支配者達は相手(原住民)を人間と思っていませんので武力で制圧しても何の疑問も抱きません。なんて酷い思い上がりでしょうか。
・育てる
 支配地の奴隷を使役して植民地を育てます。農作物を作るのとか、鉱山を掘るのが単純労働力を有効活用するには向いています。
・交換する
 支配して搾取するだけでは飽き足らず、今度は戦争までします。戦争は、流通消費を効率よく実施した方に勝利の目があるのは周知の通り。

 こうして振り替えるといかに「ポケモン」が人間側の身勝手さで成り立っているかが良く分かりますね。こうした行為を重ねると深層心理に身勝手が刷り込まれてしまうのかも知れません。

4.点滅事件の顛末

 どこにでも書いてあるので今更という思いですが、ポケモンと言えば光過敏癲癇の代名詞のように言われてしまっていますので、仕方無しに少しだけまとめておきます。
・リミテッドアニメの基礎知識。
 映画というのはスライド写真を非常に早い速度で少しずつ絵を変更して映すから動いて見えます。テレビも同じ原理です。(ブラウン管の仕組みに付いて説明すると余りにも長くなるので割愛)兎に角、1秒間に24枚の絵を切り替えします。つまり、24枚の絵を描いて1秒間アニメが動くわけです。しかし、本当に24枚も絵を描いていたら大変なので、実際には時々絵が止まっていたりしますね。更に、撮影も手間なので、3コマ毎にしか絵を変えないという手法があります。1秒間に8回しか絵が変更されませんがまぁ我慢できるレベルです。これがリミテッドアニメです。
・透過光の基礎知識。
 絵で真っ暗闇を表現するには紙を黒で塗り潰せば良いのですが、ギラギラ照り付ける太陽を表現するには白い紙に色を塗るのでは出来ません。白い紙よりも更に明るい物を表現したいのですから、明かりそのものを撮影するしかありません。アニメのセルが透明であるのを利用し、背景側から光を透かして撮影すれば白い紙よりも明るい物が撮影できます。これが透過光です。
・家庭用テレビの表面の基礎知識。
 普通の家庭用テレビの電源を切って、その表面を良く見てみましょう。そこには赤、青、緑の細かいパターンがある筈です。(液晶テレビやプロジェクターだと観察できないですね。電源を入れて拡大鏡で画面の白い所を見てください)つまり、テレビとは3つの色の強弱によって様々な色を表現しているのです。
 ここまでいいですか。
 さて、では光過敏事件に付いてに戻ります。そこで問題になったのは「赤と青透過光のの点滅を高速で繰り返す」ですね。つまり、リミテッドアニメにあるまじき速度で、非常に明るく、テレビが発色しやすい色を点滅させたのです。これでは通常のアニメより強い刺激があって当然です。つまり、子供が倒れたのも全員が癲癇とは限りません。
 日本でどの程度出廻っているか分かりませんが、ビデオドラッグと呼ばれている映像があります。これは、万華鏡のような画像を次々と切り替える等の手法によって製作されており、光に過敏で無い人であっても強い刺激を受けるような映像です。これを好んで観る人はその名の通り麻薬的効果を求めているわけでして、当然、頭がクラクラするのを楽しんでいるのです。つまり、映像によって子供の気分を悪くさせる手法は既に開発済みという事です。
 子供にビデオドラッグは早すぎる、という極めて常識的な結論を出しただけのつまらない事件ですが、人気番組だったという事も有りここまで騒ぎが大きくなっています。

5.マーケットリサーチ

 世間ではまるで田尻氏が「今まで誰もが考え付かなかった事」を成し遂げたかのように言われていますが、それはちょっと違います。本当に誰もが考え付かなかった事を実現しても誰も付いてきません。「誰もが考えた事」を寄せ集めて最適化して提供した手腕が優れているのであって、そこにオリジナリティ云々を言うのは根本が間違っています。(著作権関係とは別の話)
 つまり、現代日本では市場に受け入れられたかどうかが作品の価値を決めてしまう為、完全にぶっ飛んだ芸術は芸術とは見なされません。著名人の手による下手な作品の方が人気があるから価値が高いという理屈が罷り通っているので、まず宣伝ありき、という悪しき風潮が見られます。
 それよりも、彼のマーケットリサーチ手法に付いて推測してみましょう。彼は任天堂との共同プロジェクトを持ち掛けられ、数年後「ポケモン」を産み出すのですが、その過程は実際にはこのような感じだったのではないでしょうか。 ・ハードウェアの選択
 当然、任天堂からの依頼ですから任天堂のハードウェアを使うに決まっていますが、当時の最大普及ハードウェアであるスーパーファミコンを選択しなかった点が勝利の鍵でしょう。スーパーファミコンはソフトが豊富であるのに対し、このプロジェクトで選択したゲームボーイは一時期「テトリス」等のヒットを飛ばしたものの、その後のラインナップに魅力が乏しく、「ポケモン」発売前には所有者に対する現役遊戯率が十分低下していたという幸運が舞い込みます。
・対象年齢の選択
 対象年齢は低ければ低いほど任天堂にとって新規顧客取り込みのチャンスになる為、幼稚園児でもゲームに興味のある子供なら理解できる程度に設定したと思われます。この年齢層は財力がゼロでありながら、プレゼントを貰えるチャンスが多いので、実際に購入する大人が嫌悪しないようなデザインであれば問題無いのです。
・メディアミックス展開
 経済社会において、宣伝経費は馬鹿になりません。そこで産まれた鬼子がメディアミックス展開です。漫画、アニメ、ゲームで同じ企画を並行させる事によりその相乗効果を狙うだけでなく、互いが互いの宣伝をするという素晴らしい作戦です。
・湾岸戦争効果
 あの悪夢のような無意味無駄遣い戦争をきっかけにバブルが崩壊したので懐かしいですね。ともかく、当時アメリカ軍が兵士の娯楽の為にゲームボーイを大量に発注したという噂がありました。まぁ下手に現地で問題を起こされた場合の後始末を考えると、安い保険です。これによりアメリカへの浸透を果たしたゲームボーイはかなり製造原価が下がったと予想されます。(例えば国民の1%しか持っていなくても、世界各国ともそうなら全人類の1%になるので沢山売れている。分母の人数は大きければ大きいほどビジネスチャンスがある)

6.まとめ

 ちょっと疲れたので一旦まとめて、ここまでで掲載しようと思う。
 N64やバーチャボーイやサテラビューは失敗したが、京都の花札屋はこの様に部分的には成功を続けている。流石と言えよう。