「InsideSiliconValley」を振り返る

Mr. Robert X. Cringely に捧げます。

 コンピュータ雑誌ASCIIに連載されていた「InsideSiliconValley」というコラムを振り返ってコメントを付けてみました。文体がちょっと妙なのは、翻訳に影響されているからです。

Sec.21 Windows95の断面('95/04)

 Windows95発売前の、その予測。インターネットブームにより、Win95が日本市場で大きく成功を納める事は予測できていないが、アメリカ市場でWin3.1ユーザーがWin95に乗り換える率が低いことを言い当てている。OSR2の出荷もきっちりと予測している。すばらしい的中率ですね。

Sec.22 スーパープログラマーの生まれる国

 「日本には故人の業績を認めまいとする文化的な障壁がある」など、耳の痛い突っ込みが載っている。また、ベンチャー企業への融資の無さもスーパープログラマー誕生の障壁になるとしている。ただし、今回の記事でF-Design社の"MADO"が素晴らしいと褒め称えているが、実際の"MADO"が大失敗したのは紛れも無い事実である。

Sec.24 パソコンを買うということは

 コストパフォーマンスならPentium90よりDX4-100という主張。確かに正しい。その後PentiumならODPが出たにせよ、その価格は思ったよりは安くなかった。結果的には同じSoket7のマザーでも、AMDに対応した物に買い換えなければ意味が無かった。つまり、そこまでするならAMDのK5を買ってDX4に差し替えたほうが安く付くのは秋葉原なら高校生でも分かっただろう。だから当時DX4マシンを買った人はなかなか良い買い物をしたわけだ。

Sec.25 Coplandの舞台裏

 MacOS8の発売前の記事で、そのFUD戦略(消費者がライバル製品を買わないように、完成してもいない新製品を大袈裟にプレゼンする手法)などを紹介している。

Sec.26 IBMのお買い物

 IBMがLotusを買収した件の分析。クリンジーの予想通り、IBMはビジネス市場のNotes販売には力を入れ、それこそ競合製品を追いやってしまった。かのMicrosoftも、Notesには、してやられたわけだ。しかし一方、Lotusの他の製品はどうだろうか。表計算の1-2-3など、優秀な製品はどうなっただろうか。答えは悲惨だ。Microsoftのプリインストール作戦にしてやられ、Lotusのセットをわざわざ購入する新規ユーザーは、数の暴力の前に%を落としてしまった。
 それでもNotesは会社(法人)相手に売れている。それでIBMは十分満足なのだろう。

Sec.28 エミュレータに関する興味深い疑問

 結局は頓挫したようだが、一時期Microsoftが本気でWindows95forPowerPCを作ろうとしていた事が分かる貴重な記事。確かにあそこまでWindows95が売れなければ司法局に睨まれる事も無かったので、BillGatesとしてはターゲットをPC−AT以外のプラットフォームにも広げるという選択肢を思い付くのにそう時間は掛からなかっただろう。

Sec.29 1チップ上のフロンティア

 超低価格PCを作る為の条件検証。CyrixのMediaGXのようにCPU以外の周辺回路をこれに統合して1chip化したものこそがそのキーを握っているのではないか、という話。これは当然である。私が最初に入手したPC-AT互換機では、IDEどころか、FDD、シリアル&パラレルまで完全にマザーとは別になっていた。今では周辺I/Oが載っていないマザーの方が珍しいだろう。また、近い将来Modemか、Ethernetのどちらかはマザーに組み込んであるのが当たり前になるだろう。

Sec.35 いつでもどこかが少しおかしい

 インターネットが成長過程に在り、その途中であるがゆえに生じるトラブルを報告。まぁ、昔の電話は人間が手で回線を切り替えていたと言っても今の子供は下手な冗談としか思ってくれないだろう。それが事実であるにも関わらず。
 今回は、PentiumProの失敗と、PowerPC普及のチャンスを示唆しているが、実際にはPentiumProは失敗したが、PentiumIIがそこそこ成功している為、PC-ATのハイエンド市場はPowePCに乗っ取られてはいない。結局PowerPCはAppleと歩む道を選び、そこでは歩調も合っているように思える 。

 1998/10/26 ver0.1