07/26

お題目:16000ヒット突破ですよ〜。
 打ち合わせとか、締め切りとかたて込んで来てまふ。


 コミケまであと二週間ほどです。いよいよ更新が遅れてきそうですが、何とか勘弁してやってくださいませ〜。
 んでもって、本ページも16000ヒット!、閲覧者の皆様には感謝、感謝であります。以前からの累積で見ると30000ヒットは越えたと思うのですが………カウンタがね〜。

 そんなこんなの状況なのですが、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:16005+14500くらい


07/20

お題目:すんません。更新遅れます。
 全然更新していないんですが、本職・コミケ他で少し更新が遅れ気味です。コミケまではこの調子だと思うのですが………


 まずは告知から………。汎用掲示板の方で、ちょこちょこ話が出ているので、御気づきの方も多いと思うのですが、元アルシスソフトウェア(スタークルーザーの、と言った方が良いかも)、サイバーヘッドの手になる新作、GalaxyKnightsが遂に今月23日より公開となります(な、長かった〜…)。
 銀河帝国書院のメンバーも関わっておりますので、興味が沸きましたら、是非見てやってくださいませませ〜。ちなみに、最初はfeel H”版とWindows版(これは、oh!Xの方で公開中)です。


 夏コミの新刊に関しては、前回の更新記録の下の方に書いてありますが……亜生命戦争異聞………今回は前回更新分までをベースに追記したり改定したりしたものになると思うのですが………『亜生命戦争』とか言っておきならが、まだ亜生命も出ていない体たらく(笑)。冬にはもう少し進んでますので、気長に待っててくださいね(汗)。


 んでもって、例によって夏コミ期間である上に、本職も色々正念場だったりしますので更新が大きく遅れたりするかと思いますが、その点はどうかお許しを〜。
 ところで、見上げる位置にモニタがあったり、画面が必要以上に巨大だったりすると、ゲームが全然楽しめない体になってしまいました(笑)。く、首が………

 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:15651+14500くらい


07/15

お題目:亜生命戦争異聞#12
 バイオスフェアとは生命圏を表す言葉であり、バイオスフェア1とはすなわち地球の生命圏そのものを指す。
 その、生命圏という名を冠したバイオスフェア2は前世紀後半に作られた閉鎖型環境実験施設である。
 閉鎖環境下での様々な実験に供されたこの施設は、今はその役割を静止軌道上のバイオスフェア3、月面上のバイオスフェア4に譲り、歴史的建造物としてアリゾナの熱砂の中にその身を横たえている。
 そして、古池達が受け取った辞令には、出張先は『月軌道閉鎖型環境実験施設・バイオスフェア6』であると記されていた。
 バイオスフェア5ですら建設される計画すら無いというのに、なぜバイオスフェア6なのか。
 その秘密を解き明かすためには、鍵を握るダンツの帰国を待つしか無かった。
「ええい、あの爺ィ一体全体何を考えてるんだ。」
 例によって古池の研究室にやってきたロブは、書類を振り回して怒鳴り散らした。
 今朝は、いつもより一段とトーンが高い。
 帰国した後、更に数日苦しめられた酒の影響からようやく脱出した古池は、今度はロブの癇癪(かんしゃく)に頭を痛めている訳である。
「人の研究室で怒鳴るな。」
 頭を抱え、呻くような声で古池が言う。
 ロブは書類をかざして応える。
「古池(フル)、お前は変だと思わんのか?」
 古池は端末を意味もなく操作する。
「ダンツから受け取った書類なら、何かのいたずらかも知れんが、クラーク議長が直々に渡してくれた書類だぞ。議長としてのサインもある。正式な辞令だ。」
 ロブは声をとがらせた。
「じゃあ、俺たちは何処に行くってんだ、『アヴァロンに行ってこい』とでも言われるのか?」
「それはダンツに聞くしかあるまい。」
 怒りのやり場を失ってしまったロブは、何か言おうとして両腕を挙げ、かぶりを振って両腕を下ろした。
 ロブの怒りは、行き先を知ることのできない不安が形を変えたものだ。
 それは古池にも分かった。
 しかし、何故ロブが行き先に拘るのかは理解し難い。
 地球圏外への出張にしても、異例ではあるが、一度も無かった訳ではない。
 古池は数年前に月北極の赤外干渉天文台に出張した経験があるし、ロブもティコ山の遺伝子実験施設に一度ならず出向いている。ダンツに至ってはアヴァロン委員会の成立当初、MTFP(火星地球化計画)の為の調査隊に加わったことすらある。
 そもそも『出張先が分からない』といった程度の事でロブがここまで怒りを露にするのは、珍しい。今まで一度も無かったと言っても良い。
「らしくないぞ、ロブ。一体どうしたって言うんだ?」
「む…」
 ロブはうつむき、押し黙った。
「すまなかったな。」
 そう言い残し、ロブは研究室を出ていった。
 楊がロブの為に出したコーヒーカップを片づける。コーヒーは口もつけられていない。
「珍しいですね。ローレクト博士(せんせい)が、あんな風に怒るなんて。」
「ああ、全くだ。奴らしくないよ。」
 古池は自分のカップのコーヒーを飲み干し、気分を切り替える様に手をたたいた。
「さて、ロブの不機嫌は向うに置いておくとして。」
 端末に向かった古池は、いまいましい総会での発表以来引きずってきた問題に目を向けた。
 土壌と大気の改造のためのナノマシンに必要な動力源。アヴァロンの大気中であっても、地中であっても、安定した出力を持つものを探し出さなければならない。
 当初検討していた電磁波による電力供給では、地中や水中のナノロマシンが充分な性能を発揮できない。
 化学反応電池では容量が限られるし、原子力では反応後残留物が残ってしまうことになる。
 電池………
 古池はこの言葉に引っかかった。
 そう言えば、以前、誰かから電池の資料を貰ったような?
 検索をかけてみたが、端末内部のファイルの中にはそれらしきものは見つからない。
 となると、印刷資料だったか……
 ここで古池はハタと思い出した。そういえば、遅らせていた報告書を全部提出した後、研究室の大掃除をして資料その他を大々的に片づけてしまったではないか!
 ええい、何ということだ。
 何か貴重なヒントがあったかもしれないのに。
 ロブのこともあってか、いつもより堪(こた)える。何だか落ち込んでしまいそうだ。
「あの、古池博士(せんせい)…」
 楊(ヤン)は一束の書類を古池に渡そうとした。
「後で、構わないか?」
「…はい。」
 楊(ヤン)に細々とした事を任せると、研究室を出た。
 仕事一筋というわけではないが、何か特別な趣味を持っているわけではない古池は、こう言った気分(エモーション)の問題に弱い。
 そうした時、古池はとにかく歩く。
 歩いて、気分を変えようとする。
 古池は研究棟の広い敷地を抜け、町に出た。
 かつてここにあった大学がアヴァロン計画の研究施設となる前、元々は学生街だったこの商店街は、その頃どんな賑わいを見せていたのだろうか?
 そんな事を考えつつ、ぶらぶらと歩き続ける。
 春の盛りは終わり、初夏に近づいている。商店の軒下にツバメが巣を構え、雛の世話に余念がない。
 鉄道の陸橋を抜けると、狭い路地に入った。
 そこには区画整理や都市計画から忘れ去られたような狭い商店街が続いている。
 商店のほとんどは未だに木造で、入口近くの店の軒は手を伸ばせば届いてしまう程に低い。
 未だに升を使って大豆や小豆を量り売りする店や、乾物の店など、今ではここ以外ではほとんど見られなくなってしまったようなところも健在だ。
 百五十年以上の間、ほとんど変わっていないと言われているのだが、この商店街が文化財の指定を受けたとかという話は聞こえてこない。
 生活感に溢れた、言ってしまえば『小汚い』商店街は、何世紀続いたとしても貴重な文化財には成り得ないのだろう。
 昼前の賑わいの中を歩き、商店街の真ん中にある、いつ来ても開いているパン屋で餡パンを一つ買う。
 袋を開けて食べようかと思ったが、腹がまだ減っていないことに気がついた。
 餡パンをコートのポケットに突っ込み、さらに商店街の中を歩く。
 ここの立ち食いソバは、研究棟に配属された当時、よく食べに来たところだ。
 商店街の中にある三叉路の近くにある肉屋は、徹夜になると分かれば、すぐ夜食のコロッケを買いに行くなじみの店。
 一杯飲み屋は、飲みに行くより、焼き鳥を買いに入ったことの方が多い…
 やがて商店街の端に近づき、遮断機と道路が見えてくる。古池は、そこから見える小高い丘に向かおうかと思案した。
 研究棟の自分の研究室からもよく見る風景の一部だが、あの丘の上の風力発電塔の並ぶ公園には、一度も行ったことが無い。
 もう、ここに来て十数年も経つのに、である。
 少し考え、結局古池は、公園へ行くのは止めた。
 仕事中にサボってしまっているのに、そんな悠長なこともしていられないし、この程度の気分転換に手間取るようでは研究室に残って仕事している助手らに申し訳も立たない。
 少し急ぎ足で今来た商店街に戻る。
 通り抜ける途中の小さな洋菓子店で、少し多めにケーキを買う事にした。
 お土産をもって、少し遅くなった足取りのおかげで、途中の本屋の店先に、クラーク議長の写真があるのに気がついた。週刊誌の表紙を飾っている。
 『異星への望郷』。
 アヴァロン委員会議長を紹介するのにはぴったりの言葉だ。
 見出しに引かれて、一冊買っていこうかと考えたが、中を見てガッカリするのも嫌なのでやめておく事にした。
 こう言うのに騙されて損した気分になったのは、一度や二度ではない。
 週刊誌の代わりに、前から買う予定だった科学雑誌を手に入れると帰りを急ぐ。
 ロブの一件は頭の中で整理が付いたが、一番厄介な問題。電池はどうしようもなかった。


 すんません、更新ペース落ちてます。暑い。
 コミケと雑誌掲載記事用の色々を準備していたら、HDDが吹っ飛びかけたり色々あって(一部未保存メールが全滅したりしましたが(笑))えらく遅れてしまいました。暑い。


 金曜日の銀河帝国書院では、今回は以下のラインナップで出撃予定でありまする。暑い。
 んな訳で、出品予定ラインナップGO!暑い〜。
  • 『gShot〜銀河皇帝怪進撃』(MacOS用シューティングゲーム)《夏コミ新作》
  • 『亜生命戦争異聞』(仮題)《夏コミ新刊》
  • 『平野まさのりの本』(仮題)《夏コミ新刊》
  • 『十二音序曲・暫定版』(メルクリウス・プリティ本)
  • “きっと愛のせいね!”THE MEGA Dictionary POLTERN(残部僅少)
  • "Saturn's wake"THE MEGA Dictionary BRAVO!(残部僅少)
  • Reference of THE HYBLID FRONT(在庫の束が発見できれば(^^;)

    その他、MacOS用の他のいろいろとか、何か別のものとか色々あるかもしれませぬ。

 そんなこんなで、夏コミまであと四週間ほど。どこまで出きるか分かりませんが、ぼちぼちとやっていく所存でありますので、何となく乞うご期待。暑い。

 では、次回の更新をお楽しみに。暑い。

Number of hit:15388+14500くらい


07/06

お題目:微妙に………
 最近、更新記録とは言っても、亜生命戦争異聞ばっかしだなー、とか思いつつ。


 随分長い間引っ掛かっていた仕事が、ようやっと動き始めそうなので、今度こそ!とか思いつつ詳細が公開できる様になったら、再度本ページにて告知いたしまする。うう、長かったなぁ………今度こそ、何とかなって欲しいなぁ(汗)
 その次は、oh!Xの方なのですが、これも動き始めた(正しくは私が出遅れた?!)模様で、慌てて原稿とプログラムを開始したりしています。
 oh!Xの方は、例によってMacOSで何かやると思いますが、CarbonCacaoか、何にせよOS X絡みになると思います……何をやるかは決まっているのですが、まだどっちでやるかは決めかねていたりします(笑)。


 何にせよ、急遽忙しくなってきたので、今後の更新が遅滞したり、夏コミ新刊の予定が変更されたりするかも知れませんが、なんとかやっていこうと考えたりしておりまする。
 しかし、何と言うか、ここって更新記録というより、単なる近況報告だよなー(笑)。あ、そーいえば、『gShot』がMac関連誌で取り上げて頂ける事になったようです(予定)、これも確認できたら本ページ上で告知しますので、待っててくださいませませ〜。


 容量上の問題から、一時的に『三号CGルーム』を閉鎖しました。新しいプロバイダ、もしくはサーバーサービスへの移行が完了した時点で復活しますので、それまではご容赦下さい。

 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:14970+14500くらい


07/04

お題目:亜生命戦争異聞#11
 クラーク議長に引き回された時のことは、古池もロブも、思い出したくないのが半分、思い出せないのが半分、といった状況だった。  おそらくは、マキネンにとっても同様だったに違いない。
 あの日、委員会本部から出た後、まずクラークらに連れていかれたのは、さも高級そうなレストランだった。
 古池はメニューに値段が書いていないのを確認した時点で、この状況からどうやって脱出しようかと考えを巡らせたが、食前酒のアルコールで正常な思考が麻痺させられていくのにさほど時間はかからなかった。
 何年モノだか分からないが、古池の月収に匹敵するであろう高価なワインや、何々風だとか何々仕上げだとかいう聞いたことも無い長い接頭辞をもつ料理を楽しんだ後(もちろん三人には、それがなぜ高級で高価なのか実感することはできても理解することができなかった)、さらに下町の酒場に引っ張られ、そこで、ロブに言わせれば『阿鼻叫喚の惨劇』に付き合わされるハメになった。
 議長が二軒目に選んだ店は商店の二階にあり、こじんまりとした作りで、赤提灯ほどに喧しくも、バーほどにお高く止まってもいない、好感の持てるところだ。
 古いつきあいなのだろう、店のマスターはクラークを見るなり、何もいわずにジョッキを人数分、次々と差し出してウィンクした。
 クラークは店のコーナーに席を取ると、ジョッキを皆に回し、乾杯の音頭を取った。
「ま、ダンツとナラヤナスワミには、一年ぶりの再開を祝して。君等には、出会いを祝して。そしてアヴァロン計画の成功を祈念して!」
 一杯一リットルは入ろうかという巨大ジョッキになみなみと注がれたビールは、最初の一杯こそホップの苦みも嬉しく、スムーズに腹に収まってくれた。
 が、その後が凄かった。
 ダンツが年齢不相応に酒に強いのは知っていたが、クラーク議長はそれを遥かに上回る酒豪だったのは全く知るよしも無かった。
 が、その飲みっぷりは古池らの議長に対するイメージを一蹴してしまった…既にバケツとかザルとかと表現できるようなレベルのシロモノではなかったのだ。
 ナラヤナスワミ、ダンツ、クラーク議長の三人は、再開を祝して何杯かのジョッキを空にすると、今度はウィスキーをストレートであおり始めた。
「俺たちは、委員会の妖怪だからなぁ」
 委員会がまだ設立準備段階だったころからの付き合いになるクラークらには、積もる話もあるのだろう。古池達のことはすっかり忘れて盛り上がっている。
 やがてクラーク議長はウィスキーの、味というよりむしろアルコール度数に不満を漏らすと、メニューの上の方に太字で書かれたジンを注文した。
 二杯目のビールの味に飽きてきた古池もつられて注文したが、凍りついたグラスの中に、粘性の高い液体がたっぷりと注がれて運ばれて来たのを見て、己の失敗を悟った。
 そのジンは、水なら凍りつく温度に冷やされていた為にさほどのアルコール感は無かった。
 が、それが胃袋と血液を経由し、脳に達したところで古池の意識は途切れた。

 次の日、古池はどこか深い沼から引き上げられる様に眠りから覚めた。耳の奥で何か鳴っている。
 チェックアウトを知らせるチャイムだ。
 そのことに気がついた途端に猛烈な頭痛と吐き気に襲われた。
 慌ててユニットバスに駆け込み、洗面台に胃の内容物を吐き出した。だが、出てきたのは胃液だけ。鏡を見ながら呆然とする。
 やがて綿が詰まったような頭がようやく働きだした。
 ここが宿舎となっているホテルだ。
 確か、昨晩クラーク委員らに散々飲まされた後………
 今何時だ?
 慌ててユニットバスを飛び出し、ルームヴァレエ(室内サービス)にわめき散らす。
「い、いま、何時だ!」
 だが、ルームヴァレエ(室内サービス)の音声認識システムに古池の酷い英語を理解させるまで、三回も深呼吸する必要があった。
「ただいま午前10時35分です。」
 頭がスッキリしたわけではないが、ハンマーでひっぱたかれた位のインパクトはあった。
 昨日予約した便に乗るためには、今すぐにでもチェックアウトしなければ!
 慌ててスーツケースを確かめ、テーブルの上の書類を引っかき集めてバッグに詰めこむ。
 来たまま寝てしまったコート類はどうしようもないが、顔だけでも、と洗っていると、ルームヴァレエ(室内サービス)が来客を知らせてきた。
「おい、古池!まだ寝てるのか!」
 ロバートだ。が、昨日の酒が残っているのか、咽が潰れてしまったようなひどい声だ。
「今行く!」
 そう応えた古池は、自分の声もまたひどいだみ声になっている事に気がついた。
 ルームヴァレエ(室内サービス)が理解できないわけだ。
 備えつけのタオルで簡単に顔をふき、バッグを肩に掛けた。
 ずっしりした重さが、胃の不快感を爽やかに倍増してくれる。
 スーツケースを引っ張ると、頭痛でガンガンする頭を刺激しないようにゆっくりと外に出た。
「おはようさん」
「何がおはようだ。時間がないぞ。」
 ロブは古池が出てきたのを確かめると、そのままエレベーターホールに向かう。
 古池も、ずるずると付いて行くが、胃の不快感と、頭の中に綿を詰めたような感覚が抜けない。
 ロビーでチェックアウトの手続きをし、吐き気を抑えつつ急ぎ足で空港直行のバスに飛び乗っる。
 席に付くと、ロブがサンドイッチを差し出してくれた。
「腹に入れとけ。空きっ腹じゃ辛いぞ。」
 古池はロブの意外な心配りに驚いた。
「随分準備がいいな。何かあったのか?」
「ダンツの差し金」
 ロブはそう言って苦笑した。ロブ自身も二日酔いが辛いらしい。
「あの爺ィ共は化けモンか?朝にこれ貰ったときピンピンしてたぜ。」
「まったくだ、信じられないよ。」
 貰ったサンドイッチを、コーヒーで流し込むように食べる。
 本来なら、窓の外を流れる景色を楽しむところだが、二日酔いの頭の方がそれを許してくれない。
 古池はバッグを開けて、中を見た。何かして気を紛らわせた方が良い。
 メッセージパッドを取り出してメールを調べると、楊からのメールが何通か届いていた。
 『急ぎの連絡』を求めるものだったが、昨日メールチェックしてからもうこんなにメールを送ってきたとは思わなかった。
 最後の一通にだけ添付ファイルが付いている。
 開いてみると………
「古池博士(せんせい)!ちゃんと連絡入れてください!」
 パッドのスピーカーが楊(やん)の声で怒鳴り散らした。
「うわ!」驚いてパッドを落としそうになる。
 隣の席でロブが蒼い顔をして笑う。
「ば、馬鹿野郎。頭痛いんだから笑わせるな。」
「すまん。」
 鼓動の度にズキズキと痛む頭を抑えながら、形ばかりの返信を送る。
 直通バスはのどかな田園風景を抜け、ビルのそびえる都会の中へ滑り込んでいた。
 旅券と身分照明カードを出しておかないと………
 古池がバッグのなかに手を入れたところに、何か封筒が入っていた。
 取り出すと、大きく名前が書かれている。
 昨日、クラーク議長から貰ったものだ。
 あの時は『開けるな』と釘を刺されていたが、一体何なんだろう。
 古風な封緘を開けると、中には何種類かの書類が入っていた。
 一番表紙側になる一枚を取り出す。
 古池は見て凍りついた。二日酔いも何もすっかり覚めた。
 バスは空港に到着し、皆が降車をはじめても古池は席を立とうとしない。
 ほぼ全員が降り、ロブが古池をつつく。
「おい、着いたぞ。まだ寝てるのか?」
「いや…」
 書類を封筒に戻し、バッグを抱える。酔いは醒めたが、足元はふらついている。
 先にバスを降りたロブは、古池の分のスーツケースも受け取っていてくれたが、古池はそれに礼を言う事も忘れていた。
 空港に入り、登場手続き窓口でロブに声をかけた。
「おい、ロブ」
「ん?何だ?空港(ここ)で飯を喰う時間はないぞ。」
「出張だ。」古池は虚ろなままだ。
「何だまたか。今度はどこだ?南極か?」
 古池は何を表現しようとしたのか、数回手を振り、応えた。
「宇宙。」

 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:14825+14500くらい