KACounter



06/13
お題目:ま、まだです

熟睡 結局まだ状況の改善は見られていません。多分、月末までこんな調子ではないかと。


 前回に書いたとおり、コミケに見事落選して。創作意欲減退でしょぼぼんな上に、仕事の納期がぴーひゃらら(笑)。
 しかし、なんとか抜けたい金欠状態………(切実)。


「ペンローズのツイスター理論ってのがあるな。」
「うん、今ある世界を明在系とすると、世界の実体は、暗在系であるツイスタースペースにあるって説だね。」
「あのツイスター理論は、要するに世界のはツイスタースペースの影に過ぎないって事になってる訳だな。」
「その理解で間違いないと思うな。」
「うむ、で、考えたのだが。」
「うん。」
「昔、ザ・カゲスターってヒーローが居たよな。」
「………うん。」
「あいつも影のヒーローだったよな。」
「……知らない。」
「影が本体と言うか、影そのものがヒーローというか、そんな奴だった訳だ。」
「うん」
「要するに、ザ・カゲスターって、ツイスター理論の先駆けだったわけだな。」
「ないない、関係ない。」

[注]ザ・カゲスター:主人公とヒロインが事故か何かで高圧電線に触れ、その電撃ショックで二人の影が正義のヒーローに化けたという設定の特撮番組。「悪人であっても敵を殺さない」というポリシーのようなものがあったらしいが、それ以上に、とにかく内容が変だったらしい。


 そんなこんなで正気を失いつつ、へろへろとなんとか環境の改善を目指したい気分です。はい。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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06/01
お題目:コミケ落選

スク水むすめ 滅んでます、もうちょっと。


 そんなこんなでコミックマーケット66、見事に落選いたしました。パワー激減。さらに倍(爆)。



 んなわけで、相変わらずな状況。復旧まで、もうしばらく時間がかかりそうです\。もけけー。
 6/20に開催されるサンシャインクリエイション24に委託参加する予定なので、それまでに何とか復旧したい気分です。というか、何とかなって欲しい…

 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:63520+14500くらい


05/24
お題目:半死半生

なんか見て描いたキャラ まだなんとか………生きてます。


 あまり無事じゃ無い状況で、約8年近い長きに渡って、連日の酷使に耐えてくれたキーボードが昇天しました………合掌。

 最初Macを手にしたときは(ちなみに2ci、その前は、PC-9801FAでした)、キーボードがなかったおかげで、半年ばかり机の上の肥やしになっていたり、対応するモニタがなくて、借りたVGAモニタで表示を行うためにコネクタを自作したり、ようやく手に入れたキーボードはメンブレン型で、その『ベコベコ』感が嫌で、大枚はたいて、今回壊れたキーボードを買ったりと、色々思い起こされます。
 で、いまメインで使っているマシン(未だにPowerMacintosh9500)も、今年でなんと9年目。アクセラレーターやハードディスク、グラフィックボードのの装換やメモリの増設などで、このGhzオーバーが一般的となってしまった時代を生き抜いてきましたが、もうそうろそろ交代の時期なのかも。とか思ってみたり。

 どっちにしろ\、次もMacOS 9.x起動可能なMacを購入することになると思うのですが、もし買うとしても、MacOS 9が動くマシンを買うのは最後になりそうです。


 いずれにせよ、最近の機種ではADBが装備されていなかったり、SCSIを使うためには拡張ボードが必要だったりします。そのため、タブレットなど一部の周辺機器を買い直したりしなけりゃならかったりする等、出費がかさむのが目に見えており、実際に環境の更新ができるかどうかは異常に怪しい状況です(笑)。しかし、実際問題として古いマシンは対応する周辺機器が確実に減ってきているので、ここらへんで何とかしておかないと、更に予算が肥大することは確実。なんとかしなきゃなぁ………

 念のために、現在プログラム等の仕事では、自作PC上でWindows2Kを使っています。絵や文章の方は、まだMacがメインですがどう考えてもPCの方が安価で高速なマシンを構築できるので、場合によっては環境を移行させる必要があるのかも………

 で、現況で、キータッチは一番良いのですが、ファンクションのない予備のキーボードで作業を継続中です。


 そんな感じで、悲惨なまでに作業が進んでいません\。非常に危険です。
 状況が落ち着くまでは、また更新が滞ると思われますが、適当に待ってやってくださいませませ。ごめんよー(涙)。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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05/08
お題目:生存報告(2)

なぜ〜ッ!? うー。生きてます。
 なんか、更新どころか、生存報告のみが積み重なっているような状態ですが、申し訳ない。


 前回に書いた、猫の怪我は無事治りました。結局エリザベスカラーを取ったのが、GW直前になってしまいましたが、なんとか無事な模様。
 レヴォの方は、とりあえず徹夜して行っただけみたいな状態でした\。しかし、規模が大きくなっているのか小さくなっているのか、今回のレヴォはよくわからない状態でした。開場してから並んでも、十一時前には入場できてしまったのもあるし、ビッグサイトの3ホール、全部埋まっていないような状況にも見えたし………
 その後、亜奇破薔薇(誤変換)に進撃し、知り合いと落ち合ったのですが、徹夜が祟って、発酵してました。つーか、記憶がない(笑)。今度の即売会は、徹夜せずに済ませたいなぁ………無理か(笑)。


 5/4には、先輩がディーラーとして参加した関係で、都産貿で開催されたドールショウplus2(即売無し、展示のみファンイベント)を見物してきました。と言いたいところなのですが、実際は、顔を出しただけ。前日の夜に、仕事用のマシンにWindows Updateを適用したところ、見事に爆沈(ぎゃー)。ドライブをフォーマットの上、全てを再インストールするハメになり、当日の昼過ぎまでひたすらインストール作業を行ってました(涙)。会場に到着したときには既に午後三時。展示も半分終わっているような状態で、ただ呆然としていました(笑)。


 そんな感じで、仕事やら何やら\が山積し、一方的に煮詰まった状態で更新が遅滞して申し訳ない限りです。しかし、気が向いたらのペースでぼちぼち更新していきますので、長い目で見てやってくだされ〜。\

 では、次回の更新をお楽しみに。

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04/03
お題目:生存報告

義理よ。義理 もう、なんつーか、絵の方、見事に時期を逸してるしー(笑)。
 エイプリルフール用の仕込みも、今年はできなかったなぁ………しょぼぼん………


 つーわけで、生きてます。なんとか。バタバタするような状況じゃなかったはずなのですが、色々起こって色々大変でした。ばふー。
 で、飼っている猫がいるのですが、こいつが春恒例の縄張り争いで、ちょっとした傷を作ってきました。で、消毒だけはしたのですが、中で化膿したらしく、見事に膨れてきました。このまま放置しておくと、色々大変なことになりそうなので、嫌がるのを抱えて病院に………
 行ったら、一発で『入院&手術』と相成りました………金が………
 で、これが現況(笑)
 ねこ

 すげー凶悪(笑)。


 なんか、こんなにバタバタするような状態でもないハズなんですが、何故かバタバタしてます。おかしいなぁ。
 最近は、マリカンとかプレイして、自分の中のロボ属性を再認識させられて死にそうですが、みなさん如何お過ごしでしょう。拙者はかなり大変です……

 うがー(発作)。


 そんなこんなで意外に煮詰まり気味ですが、レヴォには委託参加の予定です。御用と御急ぎの無い方は、よって頂けたらうれしいです………レヴォ前には、もう一回くらい更新したい気分………

 では、次回の更新をお楽しみに。

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02/11
お題目:亜生命戦争異聞#34

お兄ちゃんの匂いがする… 亜生命戦争異聞の34回目です。
 うごー、後少しー。今回、短めですが、勘弁してくだされー。
 ………何だか突如忙しいし………この後、更新滞るかも(逆の可能性もあり)。


 なんかここ数日、ヤマギワソフト館が火事になったり、いろいろ騒がしいようですが、こっちも忙しめです。もけー。
 こう言うときに限って、体調がアレなのですが、そこはそれかも。


 古池は、そのまま数分間は身動ぎすらせずに、その仮辞令を見つめていた。
 その後の何時間かは、立ったり座ったり、机の廻りをウロウロしたりして、無意味に時間を費やした。何もかも真っ白になっていた。
 どうにかこうにか正気を取り戻した時には、既に日は暮れ、研究室の中は真っ暗になっていた。
 耳から聞こえる音も、目に見えるものも、何か間に挟まっているような感覚がする。
 一応、端末に向かって、メールを確認しようとしたのだが、目に見えたものが頭に入ってこない。
 研究室の扉がノックされているのにも気がつかなかった。
 ふと気がつくと、机の隅にロブが腰掛けていた。
 その事に驚きもしない、自分に驚く。
 全てが虚ろに感じられた。
 ロブの顔は苦悩と憔悴で、まるで病人のように見える。
「古池(フル)………」
 疲れ果てた中から絞り出すような、呟くような声。
「なんだ?」
 まだ、感覚と心の間に詰まっている何かが取れてはいない。自分の声すら、遠くから聞こえてくるような気がする。
 ロブは懐から紙切れを取り出して、古池に差し出した。
 古池が貰ったものと同じ、仮辞令だった。
 しばらくの間、二人は何も言わず黙っていた。
 やがて、ロブが口を開いた。
「どう……するんだ?」
 沈黙に押し潰された様な声だった。
 古池はうつむいた。
 すぐ答えが出るはずもない。
 わからん。
 そう答えたつもりだった。
 だが、古池は口は開いていなかった。
 頭の中は、まだ白いままだ。
 ロブの方を見る。
 目は落ちくぼみ、隈ができている。
 一夜にして、ロブの中の何かが失われたように見える。
 それまで気がつきもしなかった白髪がやけに目立つ。
 古池は、視線を落す。
 ロブの憔悴した姿を見るのが辛かった。
 目を閉じた。
 大きくため息をつく。
 疲れていた。
 その事にようやく気がついた。
 ここ数日、あまりに多くの事があった。
 数年分の大事件が一時に全部やってきたようにも思える。
 体だけでなく、心の方にも疲れが澱(おり)のように積もっている。
「古池(フル)?」
 ロブの呼び声に驚く。
 僅かな間だが、眠ってしまったようだ。
 作り笑顔のでき損ないのような表情で、ロブの方を見る。
 疲れ果てているのは、古池だけではない。
 古池はたった一言、それも、やっと事で絞り出した。
「明日にしよう……」
 自分が言った言葉を、古池は呪文のように繰り返す。
 明日にしよう。
 明日にしよう。
 今日は、もう休むべきだ。
 休むべきだ。
 ロブの去った後、古池は、もう帰る気力も無くして、寝床になっているソファに倒れ込んだ。
 疲れは、睡魔となって全身を包み、一瞬にして古池を深い眠りへと突き落す。
 夢を見たことすら思い出せなかった。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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01/29
お題目:亜生命戦争異聞#33

起きぬけえるふ 亜生命戦争異聞の33回目です。
 うおー。もうちょっとー。
 うはははは(笑)。


 古池は、ダンツの見舞いの後、一つだけ間違いを犯した。
 ついうっかり、クラーク議長の前で、前回呑んだときの話をしてしまったのである。
 結局、クラーク議長に引き回され、夕方、研究棟の近くの焼鳥屋からはじまり、翌日の早朝、厚木飛行場のある大和に至る、遠大なハシゴに付き合わされるハメになった。
 サンバーグ部長は別件の打ち合わせがあるということで、この拷問から脱出し(サンバーグ部長もひどい目に遭ったことがあるらしい)、根っからの下戸だったコスナー部長はひたすらチーズとサラミなどのツマミを食べ続けていた。
 昼頃、国際空港のある大阪に向かう便に乗ったクラーク議長は、どこをどうみても朝まで浴びるように酒を飲んでいた様には見えなかったが、それを見送ったはずの古池には、その事もどうやって自宅に帰着したのかも、ほとんど記憶に残っていなかった。
 その翌日は古池は強烈な吐き気と頭痛に悩まされて布団から抜け出すこともできず、ようやく調子を取り戻したのは、現場検証も終わった三日目になってからだった。
 頭からメタノールを追い出すことには成功したものの、胃にこれ以上ない不快感が渦巻き、それを胃薬で無理やり抑え込んで研究室に向かう。
 研究室では、オーバルをはじめとしたいつもの面々が、数日ぶりに顔をそろえ、ダンツの容体を気遣ったり、事件に関する噂を交換したりしていた。
 しかし、胃の不快感の中で気がつかなかった事を、古池は昼になって気がついた。
 楊がいない。
 研究員たちに聞いてみても、楊からの連絡は無かったらしい。
 胃をさすりながら端末に向かい、メールを確認してみたが、楊からのメールはなかった。
 楊が連絡無しに休むのは、もしかしたら、この研究室に来てから初めてなのではないだろうか?
 連絡を入れて休みの理由を確認すべきか考えた古池だったが、ダンツの一件でかなりショックを受けていた様にも思え、今日はそのまま休ませる事にした。
 しかし、翌日になっても、楊からの連絡はなかった。
 常日頃、几帳面という言葉を額に入れて美術館に飾っているような楊としては、これは異常事態と言ってよかった。
 古池はとにかく楊の私用アドレスに連絡を入れる事にした。
 ところが、連絡を入れようとした端末の画面に現れていたのは思わぬ内容のメールだった。
 それによれば、楊はダンツの入院した病院に行った翌日、自分も倒れて救急車で病院に運ばれていたというのだ。
 メールは、病院内から書かれたものらしい。救急車で運ばれていくとき、メッセージパッドを持っていくほどの余裕も無かったのだろう。
 とにかく、研究室の実作業ほとんどを一人でこなしている楊の入院は、古池にとっても一大事だ。
 オーバルらに楊が入院したことと、その見舞いに行くことを伝えて、研究棟を出てすぐタクシーに乗った。
 楊が入院している病院は、楊の住んでいるところから程近い最近建て替えが行われたばかりの病院だった。
 受付で楊の事を訪ねると、驚いたことに楊はダンツ委員と同じように、個室に入院しているという。
 やる事はデカイが困窮窮まるアヴァロン委員会の、一研究室に勤める研究職員が、個室に入れるだけのサラリーを貰える訳がない。
 少なくとも古池のサラリーでは、入院したとしても、大部屋に詰め込まれるのが関の山だ。そうなると、楊の実家は、それ相応のところなのだろう。
 彼女が研究室に入ってもう何年になるか。そういえば、今まで研究室にいる以外の楊の姿は、想像したことも無い。
 そんな事を考えつつ、病室に入った。
 楊は、眠っていた。
 容体が良さそうには見えない。正直なところ、見舞いに行ってひどい目に遭ったダンツ委員よりも顔色が悪く見える。
 息は浅く、速かった。
 古池は病室を出て、ナースステーションに向かった。
 そこで捕まえた看護士に、楊の容体を訪ねる。
「楊さんのご親族の方ですか?」
 そう訪ねられた古池は、自分が楊の上司である事を伝えた。
 看護士は大きめのメッセージパッドを取り出し、それを見た。
 カルテ用のものらしく、病院の名前が書かれている。
「もうそろそろ先生の巡回がありますので、それまでお待ちいただけますか?」
 古池が同意すると、看護士はナースステーションの奥にある端末に向かった。
 程なく、医師らしき男が、助手を引き連れてやってきた。
 頭を下げた古池に、医師は前振り無しに話し始めた。
「彼女のご親族への連絡先をご存じですか?」
 古池は、驚いて聞き返した。
「誰も……来ていないのですか?」
 医師はメッセージパッドを操作して内容を確認した。
「まだ、誰もお見えになっていません……」
 古池は、研究室に残っていたオーバルと連絡を取り、人事課を通じて楊の実家への連絡先を確認するように伝えた。
 そういえば、オーバルが自分の下宿に帰るのは一週間に一回か二回くらいだ。
 いままで、そんな事を気にしたこともなかったのだが。
 やがてオーバルが伝えてきた連絡先を聞き、古池は驚いた。
 楊の緊急の連絡先として教えられたのは、オーストラリアの領事館だったのだ。
「私たちも驚きました。連絡先が連絡先なので、こちらもどうすればよいのか迷っていたのが正直なところです。それに……」
 医師はそこで口ごもった。
 古池には、詳しいことはまたよく理解できなかったが、少なくとも楊が個室に寝かされている理由だけは理解できた。
「何はともあれ、まず連絡することにしましょう。」
 助手と看護士にメッセージパッドを渡して、ナースステーションに向かった。
 領事館の対応は驚くほど素早かった。
 連絡を取った数時間後には、領事館の職員が病院に現れた。
 職員は、医師から楊の詳しい容体などの説明を受けるために、応接室に入っていった。
 古池は、その間、特に何もする事がなく、看護士の勧めもあって、楊の病室で待つことになった。
 女性の寝顔を拝み続けるというのは、なんとも気まずかったが、その浅く速い呼吸は、見守り続けなければ砕け散ってしまいそうな、危うげなものを感じさせた。
 結局、医師と領事館職員が再び病室に現れるまで、古池は楊のそばから離れられなかった。
 領事館職員は、古池にまず謝意を伝えてきた。
 連絡があと半日遅れたら、彼女は危険な状態になったという。
 四日酔いのおかげで、連絡が一日遅れたとは、とても言えない状況だ。
 次に職員は、彼女を一度領事館の近くの病院に移送する旨を伝えてきた。
 古池が理由を訪ねると、職員は、彼女の身元引受人が、オーストラリア領事館そのものであるためだと答えた。
 何か、分かったような分からないような理由だ。
 職員は、古池の同意を得るのもそこそこに、正式な確認は後ほど、と言って、医師と搬送のための詳細を話し始めた。
 古池は、こんどこそ居場所をなくして、まだ目を覚ましていない楊に一言挨拶すると、病院を後にした。
 戻ってみると、オーバルらは帰宅したか、飯でも食いに行ったか、バイトに行ったかで、どんな理由にせよ、研究室には誰一人残っては居なかった。
 部屋の隅を見ると、ごみ箱が捨てられた書類などで一杯になっている。
 楊がいたときは、ごみ箱がこんな状態になるなどという事は、ただの一度もなかったのだが。
 大きなゴミ袋を探し出し、ごみ箱のゴミを移したりしていると、誰かがドアをノックしていた。
 フレディだろうか、そう思ってドアを開けると、そこには、研究棟の女性職員が幾つも封筒を抱えて立っている。
 女性職員は、持ってきた封筒のその内の一つを、名前を確認してから古池に渡してくれた。
 古池がその封筒を見ると、委員会が正式な辞令を出す前によく送ってくる仮書類が入っているのが分かった。
 ダンツ委員を見舞いに行ったとき、コスナー部長が言っていた『辞令』に違いない。
 満杯になったゴミ袋を研究室の入口の脇に置いた古池は、自分の机に戻って封筒を見つめる。
 はてさて、どんな『重要な辞令』が入っているのやら。
 ここ数日で起きた、様々な出来事は、何もかも予想外のことばかりで、古池もいいかげん疲れ始めていた。
 まあ、これ以上何が起こっても驚かないさ。
 そう思って、封を切る。
 中に入っていたのは、いつも通りのプリントアウトされたペラ紙で、特に変わったところもない。
 重要な辞令というから、金縁でもついているのかと思ったのだが。
 取り出した紙を溜息混じりに読む古池。
「えーと、なになに?、仮辞令」
 大仰に声に出して読んでいた古池だったが、途中でその声が止まった。
 いつもと変わらぬペラの仮辞令には、こう書かれていた。

 アヴァロン・テラフォーミング計画現地派遣要員に任ずる。


 では、次回の更新をお楽しみに。

Number of hit:59204+14500くらい


01/28
お題目:亜生命戦争異聞#32

どろぼうねこ! 亜生命戦争異聞の32回目です。
 調子がいい間に書きためておきましょう。いいかげん、引きが長すぎて、みな引いてるし(笑)


 ダンツの手術が成功し、とりあえずの容体が安定したという知らせを受け、病院を出た三人は、はじめて深夜になっていたことを知った。
 楊は、とりあえずタクシーで自宅に帰ることになり、ロブもダンツの容体が気になるようだったが、フレディを呼んで車で帰ることにした。
 ひとり残った古池だったが、結局、そのまま病院で一夜を明かした。
 朝、集中治療室(ICU)の窓口でダンツの容体が変わっていないことを確認し、面会可能になった時点で連絡を貰えるように伝えた古池は、そのまま研究棟に向かった。
 研究棟の周囲には依然として関係者以外立入禁止の措置が取られていた。
 警察や消防などによる現場検証が終わるまでは、この措置が続けられるとのことだったが、研究棟の関係者は、ボディチェックや所持品検査などを受ければ入ることはできた。
 研究室には、オーバルをはじめとしていつもの面々が顔をそろえていたが、楊だけは今日は休む旨のメールを送ってきていた。
 新聞やニュース番組と言ったものをほとんど見ない古池だったが、今日は、テレビの画面を食い入るように見つめる。
 どの放送局も、研究棟で起こった爆発事故を取り上げ、アヴァロン計画への妨害を目的とした爆弾テロであると結論づけていた。
 しかも、爆発の規模などから考えて、ダンツ委員を直接狙ったものであることは、明白だとする解説者すらいた。
 だが、不思議なことに、公然とアヴァロン計画に反対の意を唱えているどの組織も、今回の爆発とは無関係であることを強調していた。
 今まで何度となく直接的な妨害工作を行ってきた、最も先鋭的な組織ですら、今回の事故を『アヴァロン計画への有効な一撃』としながらも、今回の事故と我が組織は無関係であると言い切っていた。
 警察と消防、そして委員会の調査班が現場検証を続けているため、現場となったダンツ委員の部屋に近づくことはできないが、消火や救助を手伝ったオーバルらは、爆発の規模はそれほど大きくなかったと言っている。
 せいぜいダンツ委員の部屋の窓が割れた程度で、後は委員の部屋の膨大な紙の書類が燃えたくらい。
 古池が聞いた限り、ダンツ委員の容体も、比較的広い範囲に火傷を負ったものの、あとは数カ所の打撲や骨折で済んでおり、オーバルらの言葉を裏づけていた。
 高齢ゆえに、医療用ナノマシンや移植した皮膚などが完全に定着するまで、まだ安心とは言い難いが、それでも危機的な状況ではなくなったと思って良いよいだろう。
 研究室自体は、現場検証が終わるまでは、まともな活動を行えるとも思えず、古池は現場検証が終わると言われている明後日まで休みにする事を決めた。
 いつもなら嬉しい臨時の休みだが、今回は事情が事情である。
 オーバルをはじめとした、いつもなら古池の目の前でも飛び上がって喜ぶ研究員たちも、少し重い表情で帰っていった。
 古池は今日休んでいた楊や他の研究員たちに、休みの件を書いたメールを送ると自分も研究室を出た。
 行くべきところも思い付かないままに、古池はロブの研究室の扉を叩いた。
 案の定、出てきたのはロブではなくフレディだったが、話を聞いてみるとロブはかなり参っているようだ。
 ただ、『なぜダンツ委員が』といった様な事を呟いたり、怒鳴ったりするだけで、部屋に篭ったっきり、フレディが呼んでも反応すらしないらしい。
 底抜けと言ってよいほどの明るさを見せるロブだが、ときどき、何かの拍子に、とてつもなく気難しくなるときがある。
 以前、出張先が分からないといって、苛立ちを隠さなかったときもそうだったし、量子電池にたどり着くまでの、人を近づけないような悩み方にしてもそうだ。
 そういった性格の持ち主であるロブが、こんな事件に直接ではないとは言え、巻き込まれてしまったのだ。
 フレディの言うような状態になってしまっても、それは仕方がないだろう。
 古池はそう思った。
『気負いすぎるな。それに、今回の事件でショックを受けたのはお前だけじゃない』
 そう伝えて欲しいとフレディに言付けを頼み、今度は本当に行くところがなくなって、仕方なしに家路に就いた。

 翌日、唐突にやってきた休みを扱い兼ねた古池は、あれこれ思案した挙げ句、結局ダンツの入院している病院へと向かった。
 早くも集中治療室(ICU)を出たダンツは、一般の患者の入るような大部屋ではなく、高層階の個室に入っていた。
 保険で差額ベッド代なんか出ないのが普通である。やはり委員会の重鎮ともなれば収入はそれ相応なのだろう。
 そんな事を考えてエレベーターから降りた古池を待っていたのは、コスナー部長よりも背の高い、腕っぷしも頭も選りすぐりだとすぐに分かる警官たちだった。
 彼らは制服の上に防弾チョッキを着用している上に、甲あて、脛あてなどを付けているせいで、ただでさえ筋肉質の身体の線が強調され、デフォルメされたマンガのキャラのようにも見える。
 警官の一人は、古池に柔らかな、しかし有無を言わせぬ口調で身分証明書の提示を求めた。
 古池は少し身を引くようにしてIDを差し出す。
 こんな時に無理に平穏を装えるような器用さを持ち合わせているほど、自分は肝っ玉が大きくはない。古池はその程度の事は自覚していた。
 IDにメッセージパッドをかざし、それが少なくともメッセージパッドで確認できるほど質の良くない偽造ではないことを確認した警官は、古池を病室の前まで案内した。
 途中、廊下の隅に幾つかの灰色の機器が置かれていた。
 特に特徴のないアイボリーで、三角錐や立方体の面取りをしたものを組み合わせたような、注意を払わなければ気がつかない様な、そんな何げないものだ。
 しかし、これがさまざまな危険物やバイオメトリクス(生体認証)を行う特殊な装置に違いないと、古池は直感的に感じ取った。
 はたして、それら装置は正常に動作したようで、廊下に突っ立っている警官に呼び止められることもなくダンツ委員に会うことができた。
 ダンツ委員のそばには、ロブとコスナー部長、ロブの上司のイングリッド・サンバーグ部長、そしてエイドリアン・C・クラーク議長がいた。
 とんでもない面々がそこにいたことに驚き、虚脱していた古池に最初に声をかけたのは、クラーク議長だった。
「やあ、古池君。こんなところで再会できるとは。」
 握手を求められて、古池は自動人形の様に応じた。
 その後、クラーク議長は以前の酒盛りの話をしていたようだが、緊張した古池は、ただただクラーク議長の顔を見て引き攣った笑みを浮かべるのが精一杯だった。
 だが、古池はやがて病室の中によどむ異様な空気に気がついた。
 その異様な空気の原因は、他ならぬロブだ。
 ロブは古池に何か助けを求めるような視線を送る。
 何が何だか分からない古池に、ベッドに横たわるダンツ委員が声をかけてきた。
「いや、こちらから連絡するつもりだったんだけどね。まさか、古池君が自分でこちらに来るとは思っていなかったよ。」
 身を起こしたダンツは、やはり苦しげだったが、予想していたほど容体が悪い様には見えなかった。
「こんな老人のために時間を裂いてもらわなきゃならないのは、ちょっと気が引けるんだけど。」
 ダンツはロブの方を見て続ける。
「でも、君がいた方が、ロバート君も落ち着いてくれるだろうし。」
 古池は驚いてロブを見る。
「古池(フル)……何とか言ってやってくれ。この御老人どもはアヴァロン計画をメチャクチャにするつもりだ。」
「なんだロブ、お前に議長の大役でも回ってきたってのか?」
 ロブの軽口に合わせたつもりの古池だったが、ロブは眉をひそめて応じた。
「当らずとも遠からずだ。御歴々、ここにお倒れ遊ばすダンツ委員の補佐を努めろと仰せだ。」
「………なに…何だって?」
 驚いてダンツの方を見ると、老委員はベッドの上で頷いた。
「その通りだよ、古池君。ロバート君が『ご老人』と言うとおり、私もいい加減、歳だ。」
 ダンツはベッドの上で包帯でぐるぐる巻きにされた右手を差し出した。
「今回の騒ぎで怪我をしたついでに、ナノマシンやさまざまな補綴装置を入れることになったんだが、その間私の代役を勤めて欲しいと、ロバート君に頼んでいるんだよ。」
 ロブはため息をつく。
「ダンツ委員、さっきも言いましたが、私にそんな大役を任すなんて、無茶苦茶です。私はまだそんな役を引き受けるほど、委員会で実績を挙げてはいないじゃないですか。」
 今まで黙っていたサンバーグ部長が、一歩前に出てきた。
 コスナー部長とは対照的な、背の低い、いつも緊張した雰囲気を漂わせている女性だ。
 楊から肩肘が張った部分だけを取り出して、三十から七十まで、何歳と言っても通じるようにすれば、彼女に近くなるだろうか。
「ローレクト教授、今、貴方は『自分は、委員会で実績を挙げていない』と仰いましたね。」
 ロブは自分の胸板くらいまでしかない上司の方を向いて答える。
「そうです。私はまだ、そんな大役を任せられるほどの実績は挙げていません。だからこそ、まだこの研究棟で研究を続けているんです。」
 サンバーグ部長は、小さな溜息を漏らした。
「教授。私は、あなたが昨年提出された擬細胞型オートマトン……貴方は『亜生命』と呼ぶことを提唱していらっしゃいましたが、それに関する研究レポートを読ませていただきました。」
 いきなり話題が変わったためか、ロブは気の抜けた顔でサンバーグ部長の顔を見ている。
「はい。」
「あのレポートの中で説明されている擬細胞型オートマトンを環境改善に用いた場合、最始期テラフォーミングのコストと期間はどれだけ変化すると思われますか?」
 ロブはわずかに首をかしげて考え込むような素振りを見せたが、ものの数秒もしない間に答えはじめた。
「レポートを提出したときの『亜生命』をベースに考えれば、コストはだいたい三割、期間では二割弱程度、減少するはずです。」
 サンバーグ部長は腕組みをして、きつい顔でロブを見つめた。
「ロバート・A・ローレクト教授。貴方が今答えてくれた概算の数は、委員会が数週間をかけて独自に行った試算と、ほぼ一致してます。」
 サンバーグ部長は、もう一度ため息をついた。どうも、息継ぎをせずに話し続けるので、苦しくなってくるらしい。
「レポート提出時での機能・性能を元にした試算で、すでにこれだけの時間とコストの節約が望めるのです。改良が加えられていけば、さらなるコストと期間の節約が期待できます。擬細胞型オートマトンは、委員会にとって、非常に魅力ある存在になりつつあるのです。これだけの結果を残して、まだ貴方はご自分が実績不足である事を主張されますか?」
「しかし、『亜生命』は、まだ研究途上です。試作の一つすらできていません。それには私がいないと………」
「擬細胞型オートマトンの研究は、全ての研究棟の生物化学部門で行う。」
 ロブの言葉にクラーク議長が割って入った。
「なんですって?」
 驚くロブに、クラーク議長が続けて言う。
「これは委員会理事の総意だ。航宙艦の建造は、多少遅れ気味だが、計画全体の遅延が許される状況ではない。様々なリスクを考えても、擬細胞型オートマトン、君らの言う『亜生命』の持つコストと期間の削減の可能性、そしてそこからもたらされる波及効果は、委員会として無視するわけには行かない。」
 ロブはクラーク議長に何かを言おうとしてか、口をわずかに動かし、手を握って開いたが、言葉は無かった。
「そして、もう一つ大切なことがある。どちらかと言えば、こちらの方が重要だろう。」
 クラーク議長は、窓の外を見る。今日は空気が澄んでいるようだ。南側に遠く富士山を望むことができる。
「委員会は、いま資金を集められるスターを求めているのだ。」
「え?」
 ロブだけでなく、古池も、クラーク議長の言葉に驚いた。
「知っての通り、委員会が調停会議やその他の各国から資金援助を受けられる期間は、後僅かだ。しかし、その資金援助すら既に滞りはじめている。頼みの綱の、企業や個人からの寄付金も、大きく減少している現状は知っていると思う。」
 議長はロブの方を向いた。
「今、委員会には、スターがいないのだ。人々の注目を集め、世論を動かす存在感を持つスターだ。」
「スター………まさか、私に、そのスターになれと?」
 ロブの言葉に、議長とダンツ委員がうなずく。
「その通りだ、ローレクト教授。」
「じょ、冗談じゃありません。私に、客寄せパンダになれと言うんですか?。」
「有り体に言って、そうだ。君の研究者としての才能はもちろん、常日頃の言動は、ダンツ委員からよく聞かされている……君に、問題がないわけではない。しかし、君のアヴァロン開拓への熱意は、本物だ。そして、アヴァロン開拓の為の、最後の切り札として、私は、君に賭けたいのだ。」
 ロブは視線を落してうつむいた。
「頼む。」
 議長の言葉が響く。
 しばらく黙っていたロブは、やがて一言だけ呟いた。
「……しばらく、考えさせてください。」
 そのまま、首をもたげることなく、ロブは部屋を辞していった。
 ロブが去った後しばらくは、誰も何も言わず、その場で突っ立っているままだった。
 やがて、クラーク議長は、ダンツ委員に向かって言った。
「やるだけのことは、やった。」
 ダンツ委員は、ベッドに寝ると、少し辛そうに深呼吸をする。
「鬼と出るか、蛇と出るか、ですな。」
「あとは、待つしかありません。」
 サンバーグ部長が腕を組んだまま、溜息混じりに言った。
 再び病室を沈黙が包んだが、ほどなくコスナー部長が古池に向かって話し始めた。
「ああ、古池君。君にも近い内に重要な辞令が行くと思う。できれば、受けて欲しい。」
「辞令って、何ですか?」
「まだ言うわけには行かないけど、ま、明日あたり届くから。」
 ダンツ委員が、ベッドに寝たまま答えた。
 古池は、そうですか、とだけ答えて、ロブが出ていった扉を見る。
 そこには、まだロブの苦悩の残滓が漂っていた。


 さて、01/25に行われたサンシャインクリエイション22に、毎度のごとく売り子として参加してきました。
 例のごとく、色々挨拶して回ったり、本を売ったりしてきましたが、今回は気がつかない間にかなり疲れがたまっていたようです。そのせいか、翌日、近所の電器屋に行った際、それまで興味を持ったことも無いマッサージチェアに座ってみたら、危うく魂を抜かれそうになりました(笑)。
 昔の、温泉や銭湯に置いてあった、椅子の脇に巨大なハンドルの付いた奴とは比べものになりません………最近のマッサージチェアは進化しているんですねぇ………(しみじみ)。


 そんなわけで、次回のサンクリにも、在庫持って委託させてもらう予定でし。今年は色々ありそうなので、今まで銀帝の本を買い逃していた方は、なるべく買っておいた方がいいのかも。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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01/16
お題目:亜生命戦争異聞#31

プレゼント ちょっと早めの更新でし。亜生命戦争異聞の31回目です。
 さて、今のところ好調ですが、一体いつまで続くでしょう(笑)。


 バスを待つ時間すらもどかしく、バスの停留所まで走った古池だったが、時刻表を一瞥するとメッセージパッドを使って無人タクシーを呼び出す。
 しかし、それを待つ時間すら惜しく、三浦海岸方面へと走り出した。
 長い登り坂を越え、下りに差しかかるところで、古池を迎えに来たタクシーがやってくる。
 飛び乗ると、時間最優先で川崎へ向かうよう指示する。
 タクシーは、古池の指示に従い、高速道路に乗って横浜方面へと急ぐ。
 再びメッセージパッドを使って、研究棟への最短帰着ルートを調べた古池は、タクシーの行き先を川崎から研究棟へと変更した。
 座席の中で、もぞもぞと身体を動かす。どうしても落ち着けない。
 自分を押さえつけるように腕組みをして遠くを見る。彼方の東京湾と、その向うの房総半島がハッキリ見て取れる。
 古池は、もう一度メッセージパッドを取り出し、今度は自分の研究室へ音声呼び出しをかけた。
 自分から電話をかければいいことに、ようやく気がついたのだ。
 しかし、どういうわけか、呼び出しは拒否された。メッセージパッドのディスプレイに表示された『接続不能』の文字。その下に、理由が表示されいる。
『当該アドレスの機器の電源が切られているか、電網(ネットワーク)の接続から外れています。』
 古池は首をひねった。
 研究室の端末や電脳は、基本的には、24時間365日常に稼働状態にある。
 幾つかの電脳が点検や交換作業のために電源を落されたり、電網から外されたりしていることはあるが、最低3台の電脳は稼働していなければならない。
 しかし、メッセージパッドが示した理由を見る限り、研究室のネットワーク全体が落ちている事になる。
 それなら、と、古池は今度は、ロブの研究室を呼び出した。
 だが、結果は同じだった。
 自分の研究室だけなら、何かの手違いだの可能性もある。しかし、ロブの研究室にも接続できないのは、どう考えてもおかしい。
 冷や汗が額から落ちる。
 今度はコスナー博士を呼び出してみた。
 事、ここに至って、ようやく上司のことを思い出した古池は、自分がいかに委員会の階層構造(ヒエラルキー)から外れたところにいる人間だと実感させられる。
 呼び出しはやはり拒絶された、が、今度は理由が異なっていた。
『当該アドレスへの接続要求が規定数を越えたために、接続が制限されています。』
 自分とロブの研究室のネットワークが、物理的に遮断され、コスナー博士への呼び出しが殺到している………
 古池は、ロブや楊の個人用アドレスで連絡が取れないか考えたが、いま持っているメッセージパッドは、いつもヤンに押しつけられる公用のもので、私的なアドレスは一切入っていない。
 さらに、自分の私用のメッセージパッドは、買ってこの方、研究室の机の引き出しから出したことがなかった。
 情報が足りない。
 頭の中には、『悪い予感』が渦巻いていたが、古池はそれを工学者の判断で頭から追い出そうとした。
 しかし………
 タクシーは、保土ヶ谷までくると、ここで川崎方面に伸びる自動車専用道路に乗り換える。
 チャイムが鳴って、自律制御と無人自動車制御センターの制御権限が切り替わった。
 タクシーはスピードを落してインターチェンジのカーブを通り過ぎ、深い切通しを抜ける。
 ため息をつく。
 今のところ、ロブや楊に連絡を取ることは難しい。
 しかし、ここまで来れば、研究棟まで一時間ほどだ。
 研究棟にたどり着けば、何もかも分かる。
 古池は、そう考えて、自分の気持ちを落ち着かせようとした。
 自動車専用道路は、やがて高架となり、周囲の風景がいくらか見通せるようになった。
 思い返してみれば、もし本当に重大な何かが起こったとしたら、ロブも楊も、もう一度くらい連絡を入れてくるに違いない。
 だからといって、不安と焦燥が消えるわけではないが、古池はそう考えることで、気分はいくらか楽になった。
 やがてタクシーは、研究棟最寄りのインターチェンジを降り、線路沿いの道路を北に向かう。
 が、タクシーは突然、ハザードランプを点滅させ、路肩に停止した。
 驚いた古池がタクシーの情報端末画面を見ると、道路規制のためここから先に進むことはできないという。
 カード決済を指示して、タクシーを降りた。
 研究棟に近づくにつれて、頭の中に澱のように沈んでいた『悪い予感』が浮かび上がってきた。
 道路は、奇妙な程に空いている。
 これは規制が行われて、ほとんどの車が引き返したり、コースを変更したりしているためだ。
 前から、救急車と消防車がやってくる。
 と、入れ違いに後ろから救急車が、研究棟の方に走っていく。
 研究棟の方を見ると、ヘリコプターが数機、上空を旋回している。
 古池は自分でも気がつかないうちに走り出していた。
 駅近くの商店街は、人にあふれていたが、それは買い物客ではなく、報道関係者ややじ馬たちだ。
 怒号や絶叫が飛び交う中、人垣をかき分け、少しづつ研究棟の方に近づく。
 やがて、信じられないものが視界に飛び込んできた。
 警察による非常線が張られ、立ち入りができなくなっている。
「誰か!、俺は委員会職員だ、研究棟に行きたいんだ!」
 声を張り上げる。
 警官の一人が走り寄ってきた。
「関係者の方ですか?、今は立ち入りは……」
 古池は、その警官の言葉を最後まで聞いているほどの余裕はなかった。
「何があった?、研究室とも連絡が取れないんだ。どうしたんだ一体?」
 その警官は、気圧されたように一歩後に引いて答える。
「その、何かが爆発した様で……詳しいことは、お答えできません。私も、いまここに応援に来たばかりなので。」
 古池はIDを警官の目の前に突き出して叫んだ。
「アヴァロン委員会日本支部研究所、KM研究棟所属、メカトロニクス研究部、ナノメカトロニクス主幹研究員の古池だ。ルドヴィン・フォン・ダンツ委員に緊急の連絡がある。本人でも、コスナー部長でもいいから、とにかく取り次いでくれ。」
 警官は、古池の地位より、その言葉に含まれていた単語。ダンツ委員の名前に驚いた。
「…あなたは、ダンツ委員のお知り合いの方ですか?」
「そうだ。」
「もう一度IDをご呈示願えますか?」
 そう言った警官は、腰のホルスターからメッセージパッドを取り出し、古池のIDにかざす。
 古池のIDが本物であることを確認した警官は、パッドを介して連絡を取り、古池を非常線の内側に入れる。
「こちらにどうぞ。」
 警官は古池をパトカーに載せると、自分が運転席に着いた。
 パトカーそのものは、自動運転モードで走り出し、古池がいま越えてきた非常線を抜けて、検問を通りすぎた。
「ダンツ委員は、先ほど研究棟で起きた爆発で、重傷を負われ、現在、病院に搬送されています。」
 古池の全身に噴き出していた汗が、一気に冷たくなった。
 その後の警官の事務的な説明は、ほとんど耳に入らなかった。
 なぜ爆発が起きたのか説明があったのかもしれないが、その事が耳に入ったのかどうかも分からなかった。
 どうして?、なんで?
 そういった訳の分からない疑問が、頭を走り抜けた。
 その後、パトカーがどこをどう走ったのか、古池は後になっても思い出すことができなかった。
 到着した病院で、廊下に寝かされた多くの怪我人を縫うように進み、ロブと楊の姿を見付け………足から力が抜け、そこにへたりこんだ。
 ロブは、古池の姿を見るなり、訳の分からない言葉で叫んだ。
 楊は、そばに駆け寄ってくると、自分も座り込んで古池にすがった。楊は泣いていた。
 そして三人は、ただ何時間も、そうしていただけだった。



 今回確かめて驚いたのですが………亜生命戦争異聞は、遂にテキスト量で、『時を継ぐもの〜アナザーファンタシースター3』を越えてしまいました。
 本にまとめる場合、上下巻という事になってしまいそうなんですが……その前に、なんとか完結させないと(汗)。


 買ったもの、『スカイターゲット』(SS)。
 前回買った『サクラ大戦』は、セーブしたデータをロードできなくなるという恐るべきバグが発生してやる気ゼロになりました(笑)。

 そういえば、毎度貼り付けているお絵描き掲示板の絵も、今回で在庫ぎれだし……古いの引っ張り出してくるしかないかなぁ。
 どうしたもんか、色々思うところがありますが、それはそれという事で。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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01/10
お題目:亜生命戦争異聞#30

3年半前の絵ですよ(汗) 二ヶ月ぶりになってしまいました(またかい)。亜生命戦争異聞の30回目です。
 おひょ!。


 古池は、翌日、横須賀線に乗り込み、久里浜へとむかった。
『核の日』以前は、全線が電化されていた横須賀線だったが、今は、多摩川以東の東京よりの路線が廃止され、ディーゼルの代わりの燃料電池機関車が客車を牽引する非電化区間に戻っている。
 しかし、機関車は結局電気で動いているわけで、電化区間とそう変わるものではない。
 違うところと言えば、列車が加減速するときの、もったりとした感覚と、周囲ののどかな風景くらいだ。
 関東北陸不可住区域帯(アネクメネ・ベルト)によって、国土を南北に分断された日本は、行政単位を首都と州都を兼ねる札幌を中心とした北日本州と、大阪を州都とする西日本州の二つに分けた。
 その結果、政府による宇宙開発への極端な傾倒などとともに、日本にもたらされたものの一つが、南東北と関東甲信越の過疎化である。
『核の日』以来、放射性物質に汚染された関東北陸不可住区域帯(アネクメネ・ベルト)の近隣に住むことは、自殺行為と同義と見なされ、多くの住民が去っていった。
 その上に、遷都や行政単位の南北分割といった要素が加わった結果、住民の流出は勢いを増し、『核の日』直前には、日本の総人口の約四割を擁していた関東甲信越・南東北の人口は一気に二百万人にまで落ち込んでしまった。
 残された街は、その多くが廃墟となった。
 川崎は、巨大なコンクリとアスファルトが、日々勢いを増す森林との戦いに敗退を繰り返す残骸となり、横浜は江戸末期のたたずまいを取り戻しつつある。
 富山や新潟は地球の寒冷化が進んだことも重なって、一年の半分を雪に閉ざされる事になり、さいたまや水戸は関東平野の中に残された寒村となった。
 鎌倉などの歴史ある街は、なんとかかつての雰囲気を保っていたが、そこに観光客の姿を見ることは難しい。
 そして、いま古池が降り立った久里浜駅は、百年前と何一つ変わってはいなかった。
 古池は、そこで三十分待ち、バスに乗って更に南へむかった。
 バスはかつてあった京浜急行線の線路跡を走り、さらに延長されたトンネルを抜け、油壷の近くで終点となった。
 バス停から、さらに一時間ほど歩く、途中で花とジュースと菓子、そしてパンを買って、ようやく目指す丘にたどり着く。
 そこは、城ヶ島を望む高台で、その頂上に『核の日』の犠牲となった人のための巨大な慰霊碑が建てられていた。
 古池は、その慰霊碑の脇を抜けると、その隣にある大きな霊園に入る。
 入口近くの水場で桶に水を組む。
 霊園の中の、ごく普通の小さな墓。
 その墓石には『睦月家』とだけ刻まれている。
 灰色の石に刻まれた『家』の文字に、小さな薄茶の点がある。
 見ると、トックリバチの巣だった。
 古池はその巣に水がかかりすぎないように気をつけながら墓を清めると、買ってきた花を飾って線香に火をつける。
 買ってきたジュースと菓子を墓に手向けた。
 それから、古池は、手を合わせるわけでもなく、祈るわけでもなく、ただ、墓の前で立ちつくした。
 彼女を失ってから流れた月日は、確かに短くはない。
 あれから古池のみに起きたことは、確かに少なくはない。
 だが、それがどうだというのだ。
 彼女を失ったという事実を変えることはできない………京子は、ここには居ないのだ。
 あまりに現実感の乏しい現実。
 この墓を前にすると、彼女を失った事への悲しみすら、まるで絵空事のように感じる。
 その気になれば、半日かければ来ることのできる、この墓にほとんど足を向けたことがないのは、そうした、ある種の虚無感の様なものが理由だった。
 古池の実家は、墓を持っていなかった。京子が亡くなったとき、初めて墓を作る必要に迫られたが、古池はそれを拒否し、彼女の実家、つまり睦月家の墓に遺骨を収めてもらった。
 その後、古池は親類縁者との接触を断った上に、連絡もなしに転居・転職を繰り返したこともあって、今は実家がどうなっているのか知る方法もない。
 彼女の実家とも、この墓が手入れされていることと、新しい碑が刻まれていないことから、まだ彼女の家族が健在であることが分かるだけで、それ以外なんの接触もない。
 自分は、世捨て人ではないだろうか。古池は、ふと、そう思った。
 太陽が夏の厚い雲に隠され、僅かな涼と共に風が走る。
 海と空と太陽が、強烈な青と白のコントラストを作り出す。
 気がつかないうちに、止めていた息を吐き出す。
「お前は、嬉しいのかな?」
 意味のないことと知りながら、古池は墓に向かって呟いた。
 この墓を訪れるのは、何年ぶりになるだろうか。
 作業艦で、ロブに言われてから、ここを訪れるまで、半年以上かかったのは、彼女の死がまだ受け入れられない証拠だ。古池は、そう思っている。
 彼女と過ごした日々の、ゆうに五倍もの時を、古池は一人で過ごしていた。
 しかし、彼女の抜けた穴は、未だ大きく虚ろに、古池の心に残り続けている。
 大きく息をつく。
 心地よい日影を作り出していた雲が走り去り、古池と墓は、再び突き刺さるような夏の太陽にさらされる。
 一気にわき出す汗をタオルでふきつつ、それでも古池は、墓の前に立っていた。
 古池はポケットに手を突っ込むと、さっき買ったパンをちぎって口に運ぶ。
 味が感じられない。
 缶コーヒーも、苦いだけだった。
 飲み干した缶を、無造作にポケットに突っ込み、桶に柄杓を居れる。
 立ち去るつもりだった。
 が、足は動かない。
『俺に、何を言いたいんだ?、いや、俺は何を言いたいんだ?』
 そう考えた途端、大きなベル音が鳴り響いた。
 驚いて、メッセージパッドを取り出すと、音声通信モードになっている。とどのつまりは、電話での呼び出しだ。
 皆にはここに来ることは伝えてあるし、今日は公休日だし、数日分の休みは取っている。
 こうした形で連絡を求められるのは珍しい。
 受信を指示すると、スピーカーは、ロブの声でがなり立てた。
 かなり動揺しているようで、日本語とドイツ語とフランス語のチャンポンで怒鳴っている。英語も混じって、何を言っているのかさっぱり分からない。
 それに、何故、楊(ヤン)ではなく、ロブなのだろう?
 古池は、メッセージパッドのマイクで、ロブに負けない大声で怒鳴る。
「おちつけロブ!、ロバート!、一体何があったんだ?、事故か?」
 ロブは、でたらめな活用のドイツ語でひとしきり叫んだ後、日本語と英語の無茶な混合体を吐き出す。
「フル!、アクシデントだ!、ガ!って事だ!、ああ。」
 何かが起こったのだ。
 ロブが、ここまで自分を失う、大変な事が。
 暑い夏の陽射しに照らされているにも関わらず、古池の全身から冷たい汗が噴き出す。
 その後も要領の得ない、言葉のやり取りが続き、最後に楊(ヤン)の声がした。
「あの、先生!、戻ってきて!、ダンツさんが!、ダンツ委員が!」
 僅かな間。
 悪寒。
 次の瞬間、古池は、桶を持ったまま走り出していた。



 遂に第三十回となってしまった亜生命戦争異聞。前回、『なるべくはやいうちに』とか言っておきながら、もう二ヶ月………次回は、気長に待っててくだされ(汗)。


 買ったもの。
『サクラ大戦』(SS)、『ヴァンパイアセイバー(4M-RAM同梱版)』(SS)。うわー、すごいよ4M-RAM。Noel3がロード無しでガスガス動くよ(そっちかい)。セイバーの方は、対戦格闘はさっぱりなので、コテンパンに殴られっぱなしですが(笑)。
 来月末あたりに、PS2/XB/GCのどれか一つを買うつもり。

 では、次回の更新をお楽しみに。

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01/04
お題目:冬コミ顛末記

はつゆき まずは、旧年は多くの方に本当にお世話になりっぱなしでした。こんな感じのサークル&サイトですが、愛想をつかさずに、なんとか、今年も宜しくお願いいたしますー。


 毎年最初の更新として恒例になりつつある、冬コミ顛末記ですよ。
(間抜けなミスを一部修正&加筆(Jan/05))

  • 12/27
     コミケ前日。世間は、クリスマスから一瞬にして新年ムードに切り替わている。
     来年最初の仕事用の原稿のケリがついたのが、n日前だったため、作業に費やせる時間がm日(恐くて書けない)となってしまった。
     そのおかげで、前々日からほぼ徹夜で作業。何故か愛用しているDTPソフトから画像ボックス付きのドキュメントが印刷できなくなるなど、幾つかのトラブルがありつつも、午後3〜4時頃には出力完了(いろいろなければ、あと2時間は早く終わったのになぁ)。さっそく例のコピーセンターへ。
     へいどんは、先に例のコピーセンターで自分の分のコピーを終わらせており、近所のスーパーマーケット内にあったスナックコーナーで時間を潰していた。
     現地に到着し、へいどんと合流。コピーセンターは大掃除の真っ最中だった。
     へいどんが作業していたときには、コピーをしていた人が多かったらしいが、到着したときには二人だけ。やっぱり同人誌を印刷していたが、コピーしてた内容から考えると、三国志?なのかな?
     で、自分の新刊の『偽’機械主義者』(ニセ’メカニスト)と某再版(コミケでは新刊だけど)をコピー。合計2000枚という過去数年では最高の枚数をコピー。
     あんまり多いもんで、コピーセンターの中で一部折帳を開始。
     450枚くらい折ったところで、コピー完了。一旦帰還。

     7時半頃に家に到着、その後、ラーメン屋で夕飯を食べた後(いや、自宅でスパゲティだったか?)、折帳開始。
     ………折っても折っても折っても終わらない(笑)
     いつも使っていたコピーセンターは、折帳機があったのだが、今回使ったコピーセンターは折帳機の調子が悪く、あまりあてにならなかったために、自分で折ることにしたのだが、これがまた辛い。
     途中で休みを挟んだり、自分の新刊の製本が終わったへいどんに手伝ってもらったりして、折帳が終わったのが、11時頃。
     その後、気力を振り絞り、二人して帳合い&製本。
     終わったのが午前三時(だったと思う)。倒れるようにして寝る。

  • 12/28
     前日に風呂に入ろうとして果てていたため、シャワーでも浴びれればと思ったが、時間的余裕がないのと、一応二日前に風呂に入っていたので、とりあえず良しとしておく。
     また、今回は、前回2回の冬コミで、重い風邪(インフルエンザ?)の反省から、常にマスクを着用し、ビタミンCのサプリメントを常用するという悪の習慣を敢行。そのおかげで、咽の調子は良くはないが悪くない。
     お湯を沸かしてポットに入れ、五時半に家を出る。
     天気の方は、前回の夏コミと打って変わって、というより前回が特別だったのだが、晴れ。
     気温は、コミケに参加した日の中では最も低く、出発するとき足元に霜柱が立っていた。
     適当に暖気して出発。コンビニで昼御飯用の弁当を買い求め、例の牛丼屋で朝飯を食らう。
     その後、例によって例のごとく保土ヶ谷バイパス〜湾岸線〜十三号地というルートで会場へ。道路は、混雑してもいないし、空いてもいない。土曜日から休みに入ったところが多いためか、トラックより乗用車の目立つ状態。
     会場へ進撃途中でうるにゃん氏から今回は欠席する旨の連絡が入る。仕事で弱っているところに風邪を食らったとの事。今回は、この後もエラい目に遭う人が多数出て悲惨な事になるのだが、その前兆だったのかも。
     会場着は、午後7時半頃。まず、へいどんと荷物を投下し、いつも使っている駐車場へ。
     サークル入口の近くでカタログを買う。前日までに、挨拶回りするサークルはチェックしておきたかったが、モロに失敗(笑)。しかし、カタログは、厚くて高い。仕方ないんだけど。
     会場に入ると、再版した本が到着していることを確認して、ブースの準備に入る。
     ここ数回、即売会に参加するたびにコピー誌を出しているせいなのだが、ブースがともかく狭い。今回、委託も含めると、コミケでの新刊が三冊で、ブースに置いた本は8種類にもなってしまっている。立体的に配置しても、既に限界。何とかしないとなぁ。在庫の確認とかも大変だし。
     カタログチェックができない事とかあって、『グランダー九鬼』さん(尾崎社長の相方(笑))のところだけ挨拶。新刊の『帰ってきた凡骨デッキ』………うくくくく、ダメだ。社長とくじらさんのダメっぷり炸裂(褒め言葉)。

     んでもって、開場。
     シャッターが開くと、どうしようもないくらい寒い。マフラーと皮ジャンで完全防寒装備のつもりだったが、身体の右半身と左半身で体温が違ってきた(笑)
     配置的には、セガ研究会ヴァフィヨーン団の並びの通路を挟んで反対側だったわけだが、今回、人の流れは、まったりして緩やか。本の売れゆきも、オフセットの新刊が無いこともあってか緩やか(笑)。
     しかし、「メガディクは厚いのが出たら買います」という人が多かったのが印象的。でも、どう計算しても2500円にはなってしまう本を、どれだけの人が買ってくれるのか、ちょっと不安にもなる。それが、厚い本を出す決断をできない原因でも有るのだが。
     で、「差分版はどれですか」とか「亜生命戦争はまだですか」とか(中略)言われて、ひたすら謝る。すんません、全然メドが立ってません。
     他にも何の新刊か分からない『偽’機械主義者』は銀帝の新刊であることを説明したり。
     今回の『偽’機械主義者』は、内容を随分と切り詰めたサブセット版なもんで、次回夏コミには、全部詰めたオフセット版を出さなきゃ、とか考えてるのだが、宿題がこれ以上多くなるのは、もしかしたら、問題かも。いや完全に問題だ。
     午後12時頃からいろいろな方が来訪。いつも買ってくれるお客さんとか、顔は分かるんだけど、名前は知らない方とか(ごめんよー、いつも来てくださる方は、分かっているんですけど、なかなかご挨拶できないんですよー)。

    • 『まんが同好会』の、我等がまるとの姐御からは、差し入れの新刊と(手作り?)パウンドケーキを頂いてしまう。総督御用達のケーキ職人たる姐御の作品のせいか、ヤケに美味しかったです。
    • イースタール自警団胃痛スポーツの方から、例によって新刊を頂いてしまう。がんばってくだされー。
    • 栗林殿と、ちょっとお話。今年は、良い年にしましょう。
    • あと、マンガを積極的に描くようになってはじめて、何人かの方に『おもしろい』と言われる様になって嬉しかったり。

     夏に比べると、まったりムードたっぷりだったために、画材屋の直販コーナーで変なトーンをあさってみたり、イロイロしてみる。
     例によって、Sヤ来訪、トンでもねえモンを見せて『要りますか?』。『断固いりません』と即答(笑)。そのかわり、取り置きしてもらっていた漫画誌を貰う……なんか見たような人が何人も………(汗)。
     午後になって、人の流れは変わるもののまったりムードは相変わらず。
     三時半頃になって、周囲のサークルが撤収し始めたので、おもむろに在庫整理(迷惑(笑))を始めたら、翌日にサークル参加する人がやってきてびっくり。そうかー。女性は、用意も撤収も早いんだなぁ。
     そんなこんなで閉会。
     翌日二日目に『機械主義者(メカニスト)』さんのところに委託する『偽’機械主義者』の受け渡し方法でちょっと迷う。
     新刊を作ることだけに注力していたため、そのあたりの事をさっぱり考えていなかったためで、皇帝に携帯で聞いてみたりするが、本を箱に詰めてサークルのところに置いておく、という方法は問題があることが分かって困る。
     仕方なく、もう一度携帯で連絡を入れたら、『機械主義者』の人が来ていることが分かる。そこで、周囲が落ち着くのを待って、西館に移動。
     『機械主義者』の人に委託する分の本を渡したり、身内分を配ったり売ったり。例によって、へいどんに待機してもらって、駐車場に車を取りに行く。途中でへいどんと合流し、帰還ルートへ。が、疲れが窮まっていたおかげか、東京港トンネルを往復するなどの大ボケをかまし、結局、環状7号〜246ルートで帰還へ。
     途中で食事したのか、帰着してから食事したのか憶えていない(笑)。たしか、もよりの弁当屋で弁当を買って喰ったような気がする。もしかしたら、前日と入れ替わっている可能性もあるけど。
     挨拶や欲望のためのサークルチェックをしたりして、何のかんので寝たのは午前3時頃だった。

  • 12/29
     二日目。『偽’機械主義者』を委託してもらう日。
     正午頃起床。1時頃出発。
     保土ヶ谷バイパス〜首都高湾岸で会場近くまで行き、いつものam/pmでご飯サンドを食べる。これが、朝食兼昼食になった。
     夏コミのとき、午後に入場しようとしたら、駐車場がヤケに混んでいた事もあり、警戒していたのだが、スムーズに入庫できた。
     一息ついたところで、ゆりかもめに乗って、会場へ。
     会場は既に入場フリーとなっており、早速西館へむかってスタッフに挨拶。
     だいたいこの頃、うるにゃん氏から携帯に連絡が入り「明日は参加可能」という連絡が入る。恐ろしいことに、一般入場するという。「頼むから止めてくれ」と懇願する。しかし、次の日、うるにゃん氏は男らしく始発で会場近くに到着し、そのまま歩き回ってたらしい。うーむ。

    • 我等がソウルフルな社長のラヴなサークル、『笑止千万』では、まず前回買い逃した本を入手。んでもって、自分の分の『帰ってきた凡骨デッキ』も入手………昨日も見たんだけど……うくくくく、だ、ダメだ。やっぱりすげえぜ社長!
    • いつも本を買う『つく突く法師』の、こが殿のところで、ちょっと話し込んでみたり。しかし、わしって、そんなに年齢不詳ですか!?(笑)
    • んでもって、bolze.さんところでもちょっとだけ。しかし、コミケスタッフ辞めて、もう6年かー。一緒にスタッフやっていた皇帝は、もうスタッフ歴13年。先輩に至っては、20年………それで未だに単なる館内担当なんだよね………
    • 『機械主義者(メカニスト)』では、『偽’機械主義者』の売れゆきを確認してみたり。なんか予想外に好調なんですけど(笑)。いや、多分、『機械主義者(メカニスト)』の純正の新刊だと思って買って行ってしまった方も多いんだろうなぁ、とか考えつつ。

     そのまんま、東館をうろうろしつつ、閉会。西館に進撃。
     サークル参加しているわけじゃないので、身内とちょこっと話した後、会場を後にする。この日は、秋葉原で何やら物色したのだが、なんとなく心の琴線に触れるものがなく、そのまま帰還。夕食は、どこで何を食べたのか、ちょっと分からないというていたらく。近所の弁当屋で唐揚げ弁当を買って食べたのは、この日だったか、前日だったか?。いつ帰着したのかも不明(笑)。
     とにかく、風呂を沸かして入ったことだけは間違いない。
     ケーブルテレビで、トータルリコールが放送されていたので、思わず見てしまう。寝たのは三時頃。

  • 12/30
     三日目。へいどん『Black Dwarf』が参加する日。
     初日に『銀帝』、二日目は挨拶回り、三日目に『へれいめ』って形が、だんだんとできつつあるような?
     例によって五時起床。色々準備しつつ五時半頃出発。コンビニで昼飯用の弁当を入手。いつものルートで会場へ進撃。なんか微妙に混んでいる。やはり帰省ラッシュの影響だろうか?
     三日目の朝食は、近所で取らず、会場近くのam/pmで取るのが習慣になりつつあるもんで、今回もそれにならう。am/pmの弁当は、レンジで温めるタイプのものなので、塩気が少ないのが良い。量は少なめなもんで、それが不満と言えば、不満。
     食べる物を食べたら、今日搬入する本を整理。
     そうこうしていると、うるにゃん氏から連絡が入る。会場周辺で歩き回っているらしい。結局うるにゃん氏は、朝も早よから会場周辺を何十キロも歩くなどの無茶をかましてくれた模様。あうあう(涙)。
     会場近辺でへいどんと荷物を投下。うるにゃん氏はへいどんと合流し、会場入り。
     いつもとは違う駐車場に車を突っ込み、ゆりかもめで会場へ。
     へいどんを先に降ろす関係から、サークルの設営は、いつもへいどん任せになってしまう。仕方ないとはいえ、なんとかならないかなぁ。
     入場すると、うるにゃん氏とへいどんが既に設営を終えていた。今回は、うるにゃん氏の方は、スタークルーザーの原稿を仕上げていたのだが、編集を受け持っているこちらの方が、仕事のスケジュールが後ろに押せ押せになってしまった事から、麻痺状態になり、何もできなかったのだ。これは、申し訳ないとしか言い様がない。
     さて、開場前にうるにゃん氏とともにStudio夢魂邪琅殿にご挨拶。新刊はなし。邪琅さん自身は、ここ数回で、最も顔色が悪かった(汗)。
     んでもって、開場。
     イロイロとあるのだが、例によって、センチネルの団体(c.f.マトリクス・レヴォリューション)さんが、ミフネ船長ならぬスタッフに襲いかかって切り刻んでいた模様(笑)。
     開場直前に開いたシャッターのおかげで、体感温度が一気に下がったが、初日ほど寒くはなかったために、大きなダメージを受けることはなかった。
     しかし、人が動かない。全くと言っていいほど。流れとしては、夏コミのそれに近い。
     それでも、ボチボチと本は売れてくれる。
     適当な時間を見計らって、森見明日閣下のとことか、こた田中殿のとこに、ご挨拶。
     BiTmap Publishingsugichi殿、わざわざ御来訪、あるがとうございまするー。PS2買ってあのゲームで遊ぶことは、最早定められた宿命なのですね………
     『ずるずるすっぽん党』党首、もんりーまさ(比例代表・小選挙区重複立候補)は、夏コミの騒ぎのおかげで、参加申し込みすらしなかった模様。指の骨折れてたんだから、しかたないよなぁ。

     しかし、思うのだが、こうして色々な方にサークルに御来訪頂いたり、挨拶して回ったりしているとき、なんとなく心にモヤモヤとしたものが残るときがある。どのサークルの方も凄いところばかり。新刊とは言え、コピーの本を持っていくのは、失礼じゃないだろか?、あるいは、好意に便乗しているだけではないか、とか考えたりしてしまう。あるいは、自分のやっていることは、単なる売名行為なのではないだろうか?、とも思う。
     そういった事を考えなくても済むように、自分自身をレベルアップさせる以外に解決方法はないのに気がつくのには、時間が掛かったが、かといってチチンプイでスキルが上がるわけではない。しばらく、こういった煩悶とした状態が続くのだろう。

     欲望廻りで驚いたのは、それまで全然話したこともないサークルさんの方が、こちらの存在を知っていた事。
     教訓:「悪行は控え目に」(笑)
     しかし、売り子が欲しいー。
     午後遅くなって、やかぜどん来訪。結構調子よさそう。
     閉会までうろうろしつつ、変な本やイカス本を購入して回る。
     無事閉会。
     新刊は、だいたい完売。レヴォやサンクリで出した本の再版はまあまあ、メガディクの方はさっぱりだった(笑)。周囲が少しすくまで適当に時間を潰して、荷物その他を持って西館に移動。
     スタッフと話したりしつつ、時間を潰し、バスで駐車場近隣へ。前回夏コミの混み具合が嘘のように、駐車場から出るのもスムーズ。一度西館に戻ると、うるにゃん氏、やかぜどんが帰還。打ち上げの件をつめて、会場から出発。
     待ち合わせ場所のファミレスに移動している最中、うるにゃん氏から連絡が入る。どうやら、会場周辺で迷子になったらしい………どうすればいいんですか、旦那(汗)(うるにゃん氏は、この後も宇宙意思(パシャール)に誘拐される(汗笑)などの怪現象を喰らったらしい)。
     打ち上げは、15号線沿いのファミレスで、集まる時間がバラバラだったため、それぞれ注文して喰う形に。
     滅多に話すことのないスタッフと話して、意外な事実に驚いたり。
     打ち上げ後は、各自散開。へいどんとO大尉を自宅まで送る。
     帰着は1時半。2時頃寝る。


 例によって、この顛末記に書いた以外にも、様々な方にお会いしたりお話ししたりしたのですが、全部書ききれていません、ですが、ちゃんと憶えていますんで、ご安心を。
 この後、大晦日には、恒例の年越しソバ大会やら、他のいろいろやらがたくさんあったのですが、とりあえずここまで。しかし、身体の調子をシャレにならないレベルで崩す人が多いコミケでもありました。閲覧者の皆様も、健康には気をつけてください。休むに越したことはないですよ。

 何やら致命的な間違いなどを確認されましたら、掲示板とかで突っ込みを入れてくださいませませ。


 そういえば、今月25日に開催されるサンシャインクリエイション22に委託参加させて頂けることになったので、そちらの方も、宜しくお願いいたしまするー(平伏)。

 では、本年も宜しくお願い申し上げます。

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